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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

ほんの森

みんなちがってみんな一緒!
障害者権利条約

日本障害フォーラム(JDF)編

評者 北野誠一

問い合わせ先:
日本障害フォーラム
TEL 03―5292―7628(直)
FAX 03―5292―7630
頒価:500円

2006年暮れに国連総会で採択された「障害者権利条約」は、2007年にわが国も署名し、2008年5月に効力を持つ国際条約となった。

このテキストは、わが国で、この条約の推進母体となったJDF(日本障害フォーラム)の編集による、分かりやすくて読みやすい、市民の学習用のテキストである。ただし、その中身はよく工夫されており、一定の水準を保っている。最初から最後まで、国連の条約の条文に忠実に書かれており、余計な解釈はほとんどないが、分かりやすい例示は示されている。

わが国は、この条約に批准するために、国内法を、この条約に照らして整備しなければならない。そして、これこそがわが国の障害者問題への国民的理解を促すチャンス到来ではないのか?

節足に適当に批准するのではなく、このような標準的なテキストを使って、さまざまな地域での活動や集会において、それも一見障害者問題とは関係なさそうな市民祭りの集会・環境問題の会・まちおこしの会・高齢者や子どもの集会等で、国民的議論を巻き起こす必要がある。

これまで、障害者問題は、一部の医療・福祉関係者と本人・家族の問題に矮小化されてきた。「国連障害者権利条約」が求めているのは、一部の障害者の使う排他的な医療・福祉施策やサービスなんかではまったくない。それが求めているのは、第9条にあるような、すべての市民的生活に参加できるようなアクセシビリティであり、19条にあるような、地域社会のなかで、普通の市民生活が営めるようなインクルージョンであり、そのために必要なユニバーサルデザインと合理的配慮なのである。

さて、ここまで書いてきてつくづく駄目だと思うのは、私の日本語の分かりにくさである。Plain-languageを「平易な言葉」と訳す問題以上に、多くの人に少しでも「分かりやすいことば」が求められているように思われる。そのことは、知的障害者や認知症の人たちを含めて、多くの市民になじみやすい、共通言語にしていかなければ、「障害者権利条約」の目的を達成できないからである。

自分とお金にしか関心がないように見えても、流行には敏感な国民である。

今やエゴではなくエコの時代なのだ。

「みんなちがって、みんな一緒!」

インクルの時代もまんざら夢ではあるまい。

(きたのせいいち 東洋大学)

(視覚障害その他の理由で活字のままのご利用ができない方の場合、営利目的の場合を除き「録音図書」「点字図書」「拡大写本」等を作成することを認めています。ご希望の方はJDFまでご連絡ください。)