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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年5月号

秩父方式自立支援協議会の取り組み

秩父市健康福祉部社会福祉課

秩父地域の現状

秩父地域自立支援協議会は、秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町の1市4町の秩父広域圏(秩父地域・約11万4千人)で設置しています。

秩父地域は、都心から約60~80km圏、埼玉県の北西部に位置し、周囲を山々に囲まれた自然豊かな地域です。しかし、その山々が障がいとなり、障がい福祉サービスの利用において、秩父地域以外の事業所を利用することが非常に困難な状況となっています。このような地域であるため、相談支援事業所や障がい福祉サービス事業所など、秩父地域という限られた資源の中で自然とお互いに協力し合うことが当然のように今まで行われてきました。

行政においては、埼玉県秩父福祉保健総合センターを交え、各市町の障がい担当が定期的に会議を実施し、共通した認識や地域で差が生じないような調整や事業の実施に努めてきました。また、秩父地域には相談支援事業所が3か所あり、身体、知的、精神の三障がいそれぞれ専門の事業所が設置されています。この相談支援事業においても定期的に支援会議を実施し、情報の共有を行っています。

地域自立支援協議会設立への疑問

秩父地域においても、障害者自立支援法の施行に伴い、1市4町で地域自立支援協議会の設置に向けて準備を進め、後は時期が決まれば設立できるという段階まできていました。しかし、各市町の担当者や相談支援事業所の支援員から「このまま設立して本当に機能するのだろうか。障がい福祉のシステムづくりに関し、中核的役割が果たせるのだろうか。ただ設置するのでは意味がない」など、さまざまな意見によって設立を見送り、「地域自立支援協議会を機能させるためにはどうしたらいいのか。設置はしたものの何をして何を話し合えばいいのかよくわからないということがないように、もう一度よく考えよう」との意見で振り出しに戻りました。

秩父方式の地域自立支援協議会

通常であれば協議会の立ち上げについては、全体会を設立した後に専門部会を設置しますが、秩父地域は実質的に機能する協議会を目指し、通常とは逆となる専門部会から設置することとなりました。次に、どのような専門部会を設置すればよいのかを検討するため、埼玉県秩父福祉保健総合センターと各市町障がい福祉担当者、相談支援事業所支援員で集まり、アドバイザーの助言をいただきながら、まずは障がい児(者)及びその家族等から、どのような相談があり現状がどうなのか、それによる地域の課題は何かなどについて、さまざまな目線からそれぞれが把握している内容を一つ一つ紙に書き出し、それを大きな枠にカテゴリー分けしていきました。その結果、4つのカテゴリーに分類でき、4つの専門部会を設置しました。「サービス=くらす部会」「就労=はたらく部会」「育児・家族・発達支援=そだてる部会」「行政・連携=ささえる部会」です。

秩父地域自立支援協議会 相関図拡大図・テキスト

次の作業としては、各専門部会の構成メンバーの選定ですが、さまざまな分野から基本となる構成メンバーの方を各専門部会10人程度お願いしました。しかし、秩父地域自立支援協議会が正式に設立しておりませんので、準備会として依頼しなければなりませんでしたが、それぞれの専門分野のみで会議をしてきた方々が他の分野の方々と共通した目標に向け協働することを前向きに考えていただき、快く承諾してくださいました。構成メンバー決定後、専門部会ごとに部会を開催し、現状を把握した上で地域の課題について専門部会ごとにテーマと目標を設定し、調査研究を行いました。その後、各専門部会の正副部会長と相談支援専門員、行政担当者で運営会議を設置し、改めて秩父地域自立支援協議会の設立に向けて準備を進め、当初から2年を経過して設立することができました。

地域性を生かした設立と今後の運営

障害者自立支援法施行以前から、山々に囲まれ限られた資源で協力し合ってきた地域であるからこそ、保健、医療、福祉、教育、就労等のさまざまな分野の方々による支援のネットワークづくりを強く望み、地域自立支援協議会の大切さをスムーズに受け入れられたのだと思います。秩父地域自立支援協議会の立ち上げに2年という期間を要したことについても、障がい児(者)及びその家族に対し、より良い相談支援を一体的に行いたいという関係者や支援者の思いが、形だけの地域自立支援協議会とならないよう大事に育てて(準備して)きた結果だと思います。設立したばかりでまだまだネットワークの構築や課題解決には時間がかかりますが、機能する秩父地域自立支援協議会として、障がい児(者)及びその家族等が抱える課題を地域全体が自らの課題として受け止め、相談支援の充実とすべての方が生活しやすい地域づくりを図るために、今まで以上に地域で協力していきたいと考えています。