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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年5月号

みんなでつくる地域自立支援協議会
~西宮市地域自立支援協議会の現状と課題

玉木幸則

2006年より施行された障害者自立支援法では、障害者基本法の基本理念に則り、「障害のある人が普通に暮らせる地域づくり」を目指すための仕組みとしての「地域自立支援協議会」を市町村に設置することになっている。この「地域自立支援協議会」を私なりに解釈すると「障害のある人も、どうすれば、地域で暮らし続けられるか、ということをいろいろな立場の人が集まって、真剣に論議していく場であり、そこで出てきた課題について、どう解決していくかを模索していく仕組みである」と考えている。そう考えると、西宮市においても早急に地域自立支援協議会を作ることにより、障害者の地域における自立生活を進める大きなきっかけになると信じたのである。

西宮市では、2000年より市内の障害当事者やその家族、障害福祉施設、事業所、学校、関係団体、学識経験者等の多様な人々が集まった「西宮のしょうがい福祉をすすめるネットワーク」を結成し、西宮市の障害福祉の推進を目指す目的で情報や意見の交換を重ねていく中で、西宮市に対する施策提言などを行っていた。そういった取り組みもあり、支援費制度が始まる半年前から「西宮市障害者あんしん相談窓口連絡会」という相談支援事業者と行政との連絡会を持つことにより、地域生活支援の仕組みを構築してきたという実績があった。もちろん、自立生活センターであるメインストリーム協会も、当時の市町村障害者生活支援事業を西宮市より委託されていたので、この連絡会へ積極的に参加をしていた。

また、障害者自立支援法第77条では、相談支援事業の機能のひとつに「地域自立支援協議会の運営」が位置づけられたということもあり、この連絡会が中心となり「西宮市地域自立支援協議会」の設置に向けて論議を始めていった。そして、とりあえず小さな規模のものから設置して論議を進め、大きく育てていこうということで、2007年4月に「西宮市地域自立支援協議会準備会」を立ち上げ、07年8月には、「西宮市地域自立支援協議会」を設置することができた。

設置当初は、運営委員会をベースに「こども部会」「くらし部会」「しごと部会」という3つの部会を中心に進めていくことにした。それぞれの部会の運営事務局は、8か所あった障害者あんしん相談窓口が受け持つ形とし、部会の運営事務局を受け持たなかった私ともう1か所の相談支援事業所で、運営委員会の委員長と副委員長、そして協議会の会長・副会長を兼務することになった。結果としてではあるが、地域自立支援協議会の会長に障害当事者がなることも、まだ全国的には珍しいことではないだろうか。

西宮市地域自立支援協議会システム図
西宮市地域自立支援協議会システム図拡大図・テキスト

次に、運営の状況を少し説明したい。まず運営委員会は、隔月1回で、あんしん相談窓口、各部会長、行政の担当課である障害福祉課、健康増進課、健康福祉計画課が参加している。事務局会議は、会長、副会長、そして行政の担当課で構成しており、月1回開催している。各部会もそれぞれ月1回の部会と事務局会議を行っており、地域自立支援協議会に関係する会議だけでもかなりの回数を開催していることになる。

また、部会に参加している人もこれまで市が開催してきた委員会とは違って、障害福祉関係者だけにとどまることなく、いろいろな立場の人たちにも関わっていただけるようになってきた。たとえば、こども部会であれば、特別支援学校や保育所の先生や小児科の先生。くらし部会であれば、民生委員や宅建協会、市の住宅管理課。しごと部会であれば、ハローワークや商工会議所、青年会議所の人など少しずつであるが、参加者の幅も広がりつつある。

それ以外でも3つの部会だけでは、参加する人も限られているので、障害福祉施策推進懇談会を開催することにより、障害当事者や関係者などの意見も広く集められる仕組みを作っている。また、地域自立支援協議会の協議内容を西宮市の施策に反映させていくために、昨年度から西宮市に対しての報告会を行っており、その内容についても市のホームページで公開されている。それに併せて、昨年度は障害福祉計画の策定委員として地域自立支援協議会からも参画することができた。その結果、今年度からの計画には、「地域自立支援協議会において、地域の課題に対して具体的な協議・検討を進め、今後の施策に反映していきます」という文言も書き足されたのである。

地域自立支援協議会が設置されて、ようやく3年目を迎えようとしているが、まだまだ多くの課題も抱えている。特に、権利擁護に関する検討ができていないので、今年度から「権利擁護委員会」を置き論議を始めていこうとしていることや、本当に障害当事者の思いが反映していくように形だけの当事者参画にならない仕組みを考えていくことなど、たくさんの課題が山積みとなっている。いずれにしても、根気よく一歩ずついろいろな人と共に「障害者が地域で暮らしていける」仕組みを考えていきたいと思っている。

(たまきゆきのり 西宮市地域自立支援協議会会長、メインストリーム協会副代表)