「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年5月号
1000字提言
見たことないけど子どもたちは、絵本大好き
石井みどり
図書館にも本屋さんにも読める絵本が無い
町に出ると、書店には、綺麗な絵本が並んでいます。美しい絵、美しい自然が描かれています。思わず手にとって見たくなります。絵を見ているだけで楽しくなり、物語の世界が広がります。
どこの図書館にも、日本の絵本、外国の絵本、図鑑などの、わくわくする棚があります。それでは、見えない、見えにくい子どもたちの絵本との出会いはどうでしょうか。
手で読む絵本(布の絵本)
手で読む絵本は、点訳と同時に、絵の中から中心となる事物を取り出して、布などさまざまな素材を使って再現した絵本です。情景を思い浮かべる手掛かりとなります。まだ点字が読めなくても、周りの大人たちに話を読んでもらい、手指で触って、多くのことを説明してもらって、絵本を楽しみます。
点字付き絵本
この絵本は、透明のシートに点字を書いて、絵本に張り付けた絵本です。大阪の視覚障害の岩田さんが、お子さんと一緒に絵本を読みたいと工夫されました。今では全国に広がりました。点字と絵と文字がありますので、皆で一緒に楽しめる絵本です。
点図付き点訳絵本
絵や写真を言葉で説明するのには限界があります。この絵本は「点訳絵本」です。大・中・小の点の連続で絵を描きます。見たこともないものを、しかも平面に描かれた点を触って形を理解するのは大変なことです。しかし、触読の力が付いてくると、文章を読んで、たとえば、そこに描かれた人物の唇や目の形で表情を読みとったり、雨だれの大きさや方向で雨の様子が分かるようになります。もっと慣れてくると、立体の形や空間の広がりも分かるようになります。
点図ソフトの開発により、OCRで映像を取り込んで、かなり自由に点図を描けるようになりました。分かりやすい点図を描くには、大変な労力と経験と感性が必要です。点図を描けるボランティアグループも増えてきました。関係者、時には子どもを交えて、お互いに意見を出し合って作っています。
おわりに
手で読む絵カード、点線の迷路遊び、お子さんが利用している鉄道の点線で描いた路線図、近所の点字地図等々で遊ぶうちに、自然と手指から情報を得る力が培われてきます。そうすると、子どもたちは、絵本が大好きになります。大人も子育てを楽しむことができます。
周りの大人たちが「触読」について、どれだけ支援できるか、より質の高い、分かる触図作りが課題です。
(いしいみどり 横浜市立盲特別支援学校図書館)