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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年7月号

厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会に参加して

鈴木孝幸

私が「厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会」の委員として参加するようになって4年が経っている。このわずか4年の間でも、審議会の中身とりわけメンバーの構成や審議の方法などは充実してきたと言える。この変化については、担当者が変わったためなのか、それともいろいろな場を経て変化してきたものかについては定かではないが、それぞれの立場をきちんと発言できるメンバーが出席しているので公平な審議が行われていると思う。

雇用分科会は、障害者の雇用をどのように進めるか、雇用率や雇用制度、そして雇用継続や就労に関してさまざまなことを審議し、答申していくことを目的に行われている会議である。この雇用分科会の委員名簿(平成21年4月27日現在)を見ると、全員で20人が出席している。この中には、公益代表として、大学教授等の関係者が6人入っている。経済・福祉・医療・心理など各方面でのスペシャリストが名を連ねている。とかく、いろいろな審議会などの委員として出席している大学関係者は「名前だけ」と思われている節があるが、このメンバーは、非常に積極的に発言をされる方々であることは間違いない。それもそれぞれの専門的な立場から障害者のことを真剣に考え、就労に対する意見を述べる方々である。

労働者側代表として5人のメンバーが入っている。この中には教職員関係者、自治体関係者、製造に関わる労働組合などのメンバーが入り、労働者側の立場で職場における障害者の問題や現場での状況など、職場の同僚としての意見を発言している。

使用者代表としては5人、大企業をはじめ中小企業、特例子会社などから選ばれている。ここでは使用者としての立場で苦しい経営や雇用の状況、障害者の現実、使う場合の苦労などが発言される。特に最近、中小企業の代表からは、経済不況のあおりを受けて経営が非常に厳しいことなどが赤裸々に話される。ニュースで知っているというものの現実を突きつけられると、こちらの矛先も鈍りがちになるのも仕方がないような気もしなくもない。

障害者代表としては、精神障害者、知的障害者、身体障害者、視覚障害者関係から4人の委員が入っている。このように、当事者を入れて会議が開催されることは重要なことだと考えている。障害者の委員からは、全国の状況や当事者や、その家族としての意見が出されることが多い。社会の仕組み等を考える時、当事者も含めた形で意見が述べられることは大変重要なことだと考えているので、委員会における当事者参加の効果は大きいと考えている。

しかし、国の関係している委員会がすべてこのように当事者を入れて開催しているとは限らない。同じ国の委員会なのに、担当が違うと委員の構成に差ができるのは担当者の意向なのだろうか…。

当事者が入って行われる会議は、活発な意見が多く出されるため時間が足りない感じがする。障害者代表として参加している私も、非常に重い責任を感じながら出席している。特に最終決定を行い、諮問に関する答申の時には「本当にこれでよいのか?」「障害者のために少しでも改善されたのか?」など、ただ出席して席を温めていたのではないと思いながら手を上げることもしばしばである。自分が発言したことで、全国の障害者の雇用に大きな影響を与えるものだと考え、委員として、現状をできるだけ把握することは重要な仕事であると肝に銘じているところである。

この4年の間でいろいろなことが変わった。まず、その一つは、事前の説明を行ってくれるようになったことである。当日出席し、資料が渡されて審議することは、資料を自由に読むことができない私にとって非常に疎外感を持っていた。しかし、事前に説明に来るようになってからは、質問や意見を推敲して出席できるので審議しやすい。そして、資料も点字で事前に渡され、この点字資料を基に当日も読み上げられるので追っていくことが容易である。また、事前にデータももらえるようになったので、パソコンを使用して会議に臨むことも多くなった。お陰で、委員会の報告書が容易に作成できるようになった。

しかし、少し困ることがある。それは、会議中「何ページの部分ですが」といって、すぐに飛んだページを読み始めたりすることである。資料は点字やデータでもらっているものの、飛ばれてしまうと探せないことが多い。そういった場合は、事前の説明の記憶をたどり資料を探すことになる。説明だけではなく、他の委員が意見を述べる時もページを指定されると、なかなか見つけられない。反対に私が発言する時には点字のページでしか分からないので、他の委員も同様のしんどい作業を行ってもらうことになる。点字資料と墨字資料のページを合わせて記載する工夫があると、もう少しどちらも楽になるのではないかと考える。このように、ページを探すことがどの委員にもしんどい作業であることが案外理解されていない。

いずれにしても当事者が審議会に参加することで現場の意見や情報を伝えることができ、より良い内容になるものと考えている。これに加えて、障害当事者と同じ席にいることで障害のない人に無言のうちに理解をしてもらうことができる。たとえば、エレベーターや廊下などで声をかけ誘導してもらうなど、ある意味、障害理解の機会としても重要であると考えている。最後に、審議会の委員の人選についても、名前で選ぶのではなく、実質的な審議ができるメンバーを選んでもらいたいと考えている。

(すずきたかゆき 社会福祉法人日本盲人会連合)