音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●快適に顔を洗う工夫、他●

提案者:岸野有里 イラスト:はんだみちこ

岸野有里(きしのゆり)さん

埼玉県川口市生まれ。小中学校時代を鳩ヶ谷市で送る。21歳のころ『遠位型ミオパチ』と診断され23歳くらいから車いす生活になる。29歳のときにハワイへ語学留学し、障害者の権利について学ぶ。2003年より自立生活センター・立川に勤め、立川市にて自立生活を始める。


快適に顔を洗う工夫

私は全介助が必要なので優先順位を決めて時間を効率よく使っています。朝の支度には2時間ほどかかるので、いろいろな工夫をしています。

まず、洗面台ですが、一般家庭の洗面台よりも20センチ高くしてもらい、車いすに乗ったままで顔を洗えるようにしました。よく「顔を拭くだけ」ということも聞きますが、私は毎日メイクをしたいので顔を洗えるようにしました。

住んでいる家は築31年なので造りがとても古いです。洗面台の蛇口は水しか出ないので、お風呂場のホースを長くしてもらい洗面台まで持ってこれるようにしました。これで寒い冬もお湯で顔が洗えます。シャワーフックを洗面台の上に置き、シャワーヘッドをそこに掛けて使っています。お湯を出すと水圧でシャワーヘッドが不安定になるので、タオルを下にかまして安定させます。顔を洗うことによって目覚めがよく、とても快適です。


メイクの工夫

先ほど「メイクをしたい」と書きましたが、メイクをするときもまたいろいろな工夫をしています。

まず、私の車いすの高さに合わせてテーブルを作りました。それによって鏡を見ながらメイクすることができるようになり、私がしたいメイクを介助者に伝えることができるようになりました。

メイクは介助者によってアイシャドウやチークのつけ方が若干違うので、そのつどメイクが変わったような感じでおもしろいのですが、眉毛描きだけはとても難しく、なかなかきちんと伝えることができません。眉の形一つで顔つきが変わってしまうので、眉はアートメイクをしました。

アートメイクはタトゥーと同じことなので、最初はやることに対してすごく迷いましたが、一生介助者に眉毛を描いてもらうたびに納得いかずイライラしてしまうのであれば、思い切ってやってしまおう!と眉に墨を入れてみました。その結果、毎朝すごく楽になり、お弁当を作れる時間が取れるようになりました。


家電製品の活用で効率的に

一つ一つのことをするのに時間がかかる生活をしていると文明の利器に頼らざるをえなくなってきます。

家事全般について言えば、洗濯は干す時間がもったいないので、光熱費がかかりますが乾燥機付きの洗濯機を使っています。また、私は料理が好きなので調理器具にはこだわっています。たとえば鍋は無水鍋を使っています。料理の時間を短縮できるし、素材のおいしさを残して調理ができるので重宝しています。電磁調理器は火加減を気にせずほかのことができるし、フードプロセッサーは細かく刻むものやケーキ作りなどに重宝しています。週に一度、掃除と調理に充てていて、その日は宅配サービスを利用して一日で一週間の食事を作っています。

このような工夫をしながら24時間介助を受け仕事をし、「自分らしい」生活を愛犬「サスケ」とともに送っています。いくつかの工夫をご紹介しましたが、私にとって「サスケ」との生活が、一番で最高のエンジョイライフです。