「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年9月号
1000字提言
一緒に絵本を読みましょう 読みたい絵本・読める絵本
石井みどり
aさんと
aさんと絵本を読んでいた時のことです。右の隅に描かれた草むらの、2センチにも満たないバッタを見付けて指で押さえました。「バッタがいたね」と申しましたら「じゃん」と言います。aさんの否定の表現です。どう見てもバッタです。もしかしたら先週読んだカールさんの本を覚えているのかもしれません。「コオロギね」、aさんは満足そうに何度もバッタを指で押さえました。その時間は、絵本の中の「コオロギ」探しでおしまい。こんなふうな絵本の読み方も有りです。
bさんと
bさんは、図書館に来るなり「アンパンマン」と言います。毎回、「アンパンマン」をリクエストします。何とか違う本に目を向けてほしいと、あれこれ画策しておりましたが乗ってくれません。夏休み近くなって「アンパンマン」を読み終わった後、「アンパンマンの続きのお話のぐりとぐら」をしましたら拒否されませんでした。うまくいく日ばかりではありませんが、「アンパンマンの続きのお話の…」は効果が出てきました。
cさんと
cさんのために、ボランティアグループに長新太さんの「ごむあたまポンたろう」の39ポイントの拡大絵本をお願いしました。cさんは、途中までは夢中だったのですが、次第に、絵をうつろな眼差しで追っているだけになりました。この時、初めてcさんの色の見え方の特性に気が付きました。かなり鮮やかに描かれているのに、橙色の背景の中の赤い男は見えなかったのです。白いペンで輪郭を描きました。
教科書のマルチメディアデイジー版
新しい取り組みとして、こくご二年下(光村教育図書)のマルチメディアデイジー版の提供を受けました。使用したのはパソコン世代とも言える6年生2人です。国語の授業をゲーム感覚で楽しんでいます。日常使用している拡大読書機と違って、映像が安定していること、ページのめくりが簡単なこと等も気に入っています。自分で音声を消して文字を追ってじっくり読んだりもしています。
dさんと
子どもたちは多様な読書をします。dさんは点図付きの絵本を借りていきます。それはお母さんに絵本を読んでもらって、点図の説明をしてもらいたいからなのです。お母さんもその時間を楽しんでいます。子どもたちの特性にあった媒体の変換も大切です。そして、大人たちは子どもたちの「楽しい読書」の支援に心掛けたいものです。
(いしいみどり 横浜市立盲特別支援学校図書館)