「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年9月号
工夫いろいろエンジョイライフ
実用編●楽しく英語を学ぶ工夫、他●
提案者:吉田沙矢加 イラスト:はんだみちこ
吉田沙矢加(よしださやか)さん
大学で英語の通訳技法を学び、卒業後、視覚障害者の英語学習サポートをしている。また、盲ろう者(視聴覚二重障害者)のコミュニケーション支援、団体運営等のお手伝いをしている。趣味は、粘土細工、紙細工、落語鑑賞。
楽しく英語を学ぶ工夫
私には、楽しく英語を学ぶ場があります。一つは健常者と共に学ぶ英会話サークルです。そこでは、テキストとテープを使ってリスニング学習や会話練習をしています。私は、その場でテキストを読めないというハンディキャップがありますが、その分先生の言葉やテープの声に集中してリピート練習や訳出をしています。文字に頼らなくても耳からの情報を大切にすることで聞く力を伸ばし、表現の幅を広げたいと考え参加しています。
また、インターネットの無料電話(スカイプ)を使って視覚障害の仲間とも一緒に学習しています。英語でお互いの近況を話し合ったり、落語のストーリーや自分のエッセーを英語で表現しています。落語の「まんじゅう怖い」「七度狐」等、私にとって親しみのある話を英語で表現してみると、違った味わいになって面白いものです。
聞くことや表現することを重視する等、自分に合った工夫をすることで楽しく英語を学んでいます。
英語の触る絵本
私は、点字クラブの仲間と英語の触る絵本を作っています。英語学習のお手伝いをする中で、視覚障害のある子どもにも楽しめる絵本があると良いと思ったのがきっかけです。
私たちの絵本は、視覚障害者だけに向けたものではなく、だれもが楽しめるように作っています。本文は、大きく見やすい文字で作り、その上に同じ内容の点字を打ったシールを貼ります。布・紙・粘土等を使って触って分かる絵を作ります。触ることでストーリーのイメージが膨らむように、輪郭・凹凸・質感を出す工夫をしています。原本に忠実な色にすることも考えます。私は弱視の仲間と粘土で絵本に出てくる小物を作ります。特に粘土は、指先の感覚を頼りに思い思いに形作ることができるので、楽しく製作活動をしています。
視覚障害者や盲ろう者団体の行事では、全盲・弱視・晴眼者それぞれの感性で楽しんで頂いています。見ても触っても楽しい絵本です。
*触る絵本に関心がある方へ(吉田沙矢香 Email:eng-frontier@excite.co.jp)
“シャドーイング”で原稿発表
プレゼンで原稿を読む際、私はシャドーイングという方法を活用します。シャドーイングとは、外国語学習や通訳の訓練の一つです。放送を聴きながら追いかけるように数秒遅れで声に出して繰り返す方法です。
この方法にヒントを得た私流のプレゼンでは、画面読み上げソフトを入れたノートパソコンを使います。カーソルを一行ずつ動かし、画面読み上げソフトに原稿を読ませます。それをヘッドフォンで聴き、シャドーイングの要領で発表します。事前に、漢字の読み方や文の切れ目を直し、音声速度を調整する等の準備をしておきます。また、原稿をICレコーダーに録音し、それを再生しながら発表することもあります。ストラップで首にかければ、とても身軽です。
長い原稿を暗記する労力がいらず、耳から原稿の情報を得てスムーズにプレゼンを進めることができます。点字・墨字の原稿を素早く読み取れない私にとって心強い方法です。