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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年11月号

ほんの森

地域生活を支援する社会生活力プログラム・マニュアル
―精神障害のある人のために―

奥野英子・野中猛編著

評者 板山賢治

中央法規
〒151―0053 渋谷区代々木2―27―4
定価(本体3,000円+税)
TEL03―3379―3861
FAX03―5358―3719

1986年に国際リハビリテーション協会(RI)によって、「社会リハビリテーションとは社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。社会生活力とは自分のニーズを満たし、豊かな社会参加を実現する力(ちから)である」と定義されたことにより、医学・教育・職業などの分野と並ぶリハビリテーションの専門分野としての位置づけがなされた。

わが国でも、平成8(1996)年度厚生科学研究として「障害者の社会生活訓練プログラムの体系化と総合マニュアルの策定に関する研究」(主任研究者:板山賢治)が取り組まれ、同研究を基にして、身体障害者を主対象とする『社会生活力プログラム・マニュアル―障害者の地域生活と社会参加を支援するために―』(SFA1)が1999年に開発された。以来毎年、日本リハビリテーション連携科学学会社会リハビリテーション研究会によって、その実施方法を示し、実践報告をするための公開研究会・研修会が開催されてきた。

2006年には『自立を支援する社会生活力プログラム・マニュアル―知的障害・発達障害・高次脳機能障害等のある人のために―』(SFA2)が発行され、これらの2つのプログラムが全国の障害者関係施設や学校において取り組まれている実践状況をまとめた『実践から学ぶ「社会生活力」支援―自立と社会参加のために―』も2007年に発行されている。

この度、精神障害のある人々が病院から地域生活に移行するための準備プログラムとして、また、地域で生活をしている人々が地域の中で、自分の病気を管理しながら充実した生活、楽しい生活、QOLの高い生活を送れるようになるために「社会生活力を高めるプログラム」が必要であるとの強い要望に応えるために、本書が開発・発行された。

本書は、1序論:精神障害の理解、2総論:社会生活力プログラム(SFA3)、3実践編(5部門25モジュール)によって構成され、精神障害のある人々が「精神科医療」「健康管理」「食生活」「セルフケア」「生活リズム」「自分と病気・障害の理解」「家族関係」「友人関係」など、地域生活上の具体的な課題を理解し、問題解決の具体的な方法を探り、できることを増やし、家族との調整や専門領域のチームで取り組み、自信をもって地域生活できるようになることをめざした実践的なプログラムである。

本プログラムが「障害者自立支援法」における生活訓練や地域活動支援センターなどにおいて、当事者、家族及び支援スタッフの皆様に広く活用されることを期待するものである。

(いたやまけんじ 「万葉の里」理事長)