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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
制度改革には十分な予算が必要

妻屋明
社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長

鳩山政権は、12月8日の障害者の日に障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため、内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置した。

この推進本部は、今後5年間を障害者の制度改革の集中期間として、基本的な方針案の作成と法令における「障害」の標記のあり方に関する検討を行うとしている。

また、推進本部には障害当事者の意見を反映させるため、障害者、福祉関係者、学識経験者で構成する「障がい者制度改革推進会議」が設置される。

政権交代で、いよいよ障害者が国の総合的な障害者施策全体の改革に参加できるという新しい時代を迎えた。

私たちには今、国連障害者の権利条約の批准をはじめとして、障害者差別禁止法の制定、障害者基本法の改正、そして障害者自立支援法の見直しなどの大きな課題を抱えている。

これらは、いずれも現状の制度や法律を根本的に変えなければならないほど大きな課題であるだけに、障害者団体の役割と責任はより一層大きくなることが予想される。

さて、私たち全脊連のビジョンは、「どんなに重い障がいがあっても、それぞれの地域で差別されることなく普通に暮らせる社会」であるが、事業を推進していく上で、すべてこのビジョンに基づいて活動方針を決めている。

これに対して、民主党政権の障がい者施策の基本理念は、「障がい者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活することができる社会を目指し、障がい当事者の自己決定・自己選択の原則が保障される制度設計を考える」とされている。

全脊連は、特に長時間介護の支給決定の現状について改善するよう強く求めている。

長時間の重度訪問介護の支給決定は、給付額の25%を負担する市町村財政にとって重荷となるため、必要とする時間数をなかなか決定しない事例が全国的に生じている。

地域主権の時代だからといって、また、予算がないからといって、福祉サービスに地域間格差があっても仕方がない、では当たり前に地域で暮らすこともできないし、地域で普通に暮らすこともできない。

障害者が国の総合的な障害者施策全体の改革に参加できるようになり、その意見が制度改革に反映されるとはいうものの、そのために必要な予算が十分でなければ、絵に描いた餅になりかねない。

(つまやあきら)