音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

こう変わるべき障害者施策
入院中心から地域生活へ移行の実態

川崎洋子
特定非営利活動法人全国精神保健福祉会連合会理事長

国は精神医療を入院中心から地域生活へと転換することを掲げた。また、退院可能な長期在院者を削減する退院促進事業も実施されている。しかし、いまだに長期在院者は減っていないのが現実である。

一言で言えば、受け入れ条件が整っていないのである。長期にわたり入院生活をしている人にとっては、地域で生活する上での課題は多く、社会資源の拡充が必要である。

◇精神障がい者の自立に必要な施策の充実

所得保障…精神障がい者は、その発症の特性から無年金者が多く、また、医療とは一生関わらなくてはならなく、経済的負担は大きい。所得がないがために、医療中断となることは、絶対に避けなくてはならないことである。

就労支援…就労は所得の大きな柱となるものであるが、精神障がい者の就労は厳しい。企業側が精神障がい者を正しく理解し、必要な支援策があれば、就労は可能であると言われている。企業等への啓発が必要と考える。

住む場の確保…在宅精神障がい者の多くは家族の支援のもとで生活している。高齢化した家族が、365日24時間体制で経済的にも精神的にも当事者を支えているのが現状で、憂えることである。家族から自立して暮らせる障がい者の住む場づくりのさらなる充実を願う。

家族支援…精神障がいの特性から引きこもりの人が多く、家族だけで支援しており、外からの情報も得られずに孤立化している。このような家族にこそ支援が必要で、現状では家族は無支援状態にある。往診や訪問型の相談支援など、家族が必要としている家族支援を制度化してほしい。

◇医療と福祉の連携

精神障がい者は医療とのつながりは切れないものがある。また、障がいから生活のしづらさを抱えており、多様な福祉サービスを必要とする。この医療と福祉のサービスが連携され、当事者のニーズに沿ったサービスが提供され、地域で安心して暮らせることが求められている。病気と障害をもっていても社会の支援で、当たり前の生活ができるようにすることが障害者施策である。国が掲げている「共生社会」に向けて、障害者施策が進められることを期待する。

(かわさきようこ)