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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年1月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を! 10.30全国大フォーラムの報告
今こそ障害のある私たちの人権を勝ちとろう

家平悟

天下の悪法と評された障害者自立支援法(以下・自立支援法)がスタートして3年半が過ぎました。旧自公政権の下で実施された二度にわたる特別措置、緊急措置は、この悪法がもたらした応益負担等の問題を根本的に解決するものではありませんでした。

こうした状況を一刻も早く見直しさせるため、全国各地で自立支援法『反対』の共同集会が幾度となく繰り返され、また、政府・国会に対しては、日本障害者協議会、障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会、全日本ろうあ連盟の3者が実行委員会をつくり、2006年「出直してよ!」、2007年「今こそ変えよう!」、2008年「もうやめようよ!」をスローガンに、全国大フォーラムを開催してきました。

私たちの運動をはじめ、反貧困運動などの広がりは、旧政権が推し進めてきた格差や貧困を増大させる政策、弱者を切り捨てる構造改革に「NO」を突き付け、先の総選挙で歴史的な政権交代を実現する力となりました。

国民の選択によって誕生した連立政権は、これらの運動を野党時代に後押ししてきたことから、今度は与党の立場でどういう政策を打ち出していくのかが注目されています。

私たちの主張がついに前進!

こうした歴史的な政治情勢がある中、一刻も早く悪法を廃止させることを目的に、昨年10月30日に「さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を!」と題した5度目の全国大フォーラムを開催しました。当日、会場となった日比谷野外音楽堂、厚生労働省前など日比谷公園一帯には、会場にあふれる1万人が参加しました。

今回の大フォーラム開催前には、9月に新政権が発足し、新しく厚生労働大臣となった長妻昭氏が自立支援法の「廃止」を明言し、また、鳩山新首相が所信演説で、「早期の廃止に向け検討を進める」ことを表明したことから、旧政権下の方針であった改正によって法を継続しようとする立場から、大きく方向転換がなされ、悪法を一旦廃止して新法づくりに道を開くことが打ち出される状況となりました。

このように、運動が切り開いてきた状況を確実なものとするためにも、今年の大フォーラムは大きな意味がありました。

集会の冒頭、あいさつに立った全日本ろうあ連盟の石野理事長は、「4年前から毎年この場で開いてきた。延べ4万人近くが日比谷公園に結集し、怒りの声を一つにがんばってきた。自立支援法によって応益負担が導入され、支援サービスが次々に削られてきた。1.福祉サービスの低下、2.応益負担の導入、3.困難にあえぐ事業者、4.福祉従事者の減少・負担の増大、5.将来像が見えない、このことは自立支援法の5悪と言える。長妻厚生労働大臣が今日この場に参加することは、歴史の1ページを開くことになるだろう。皆さんの声をしっかりと届けたい。地域の中で必要な支援が受けられるよう、新しい流れを確かなものにし、当事者参加による新法を一刻も早く実現しよう。さよなら障害者自立支援法、つくろう私たちの新法をというテーマのとおり、仲間とともに力を合わせて、国民に訴えていこう!私たちのパワーを国民に示そう!!」と訴えました。

長妻厚労大臣のあいさつ

今回、私たちの声を真摯に受け止めていただくために、実行委員会では、長妻新厚労大臣に参加を要請しました。この呼びかけに応え、私たちの集会に現職の大臣が初めて参加し、長妻大臣は、以下のように語りました。

「政権交代が起こりましたけれども、政策が変わります。私どもといたしましては、この応益負担という、本当に皆さまに重い負担と苦しみ、尊厳を傷つける、この自立支援法を廃止する、このことを決断しているところであります。

これは、私ども民主党だけではございません。国民新党、社会民主党との連立3党の合意文書の中でも盛り込まれているものでございます。

これから私どもといたしましては、4年間の政権の一期の中で、応益負担から応能負担に変える、新しい制度を創設していく、ただしその際には、本当に皆さま方お一人お一人のご意見をできる限り拝聴して、みんなで一緒に良い制度をつくってまいりたい、このように考えてございますので、ぜひ皆さま方、皆さまのご家族、地域の皆さま、専門家の方々だけではなくて、広く利用される方の声も、謙虚に耳を傾けて、新しい制度をつくっていきたい」と述べ、法の廃止を1万人の前で約束しました。

共同運動のさらなる発展を!

続いて、今回の集会のもう一つの特徴として、社会保障全体を引き上げていこうという立場での共同・連帯のあいさつがあったことです。

一昨年末に、派遣村等の活動を展開してきた反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長が、「人が生きていける国をつくっていこう、そのために政策や予算の優先順位を組み替えていこう、私はそれを実現するために内閣の参与となった」と報告し、「垣根を越えて、さまざまな活動と運動を広げていきたい!」と、語りました。

そして、私自身も自立支援法訴訟の原告の1人として、自立支援法を違憲として訴訟に立ち上がった思いやこの訴訟や運動を通して、障害がある人も障害がない人も、だれもが安心して暮らしていける社会の実現をめざしていくことを訴えました。

その後、政党シンポジウムが開かれ、障害者団体代表の4人に加え、民主党/石毛えい子氏、社民党/阿部友子氏、共産党/高橋千鶴子氏が参加。シンポジウムでは、(1)自立支援法の評価、(2)新しい法律の内容、(3)新しい法律をどのようにつくるか、の3点について議論が行われ、新法づくりへの視点が明らかとなりました。なお、自民・公明は、「さよなら自立支援法というテーマはあまりにも重過ぎる」と、欠席しました。

集会後、参加者は、国会・東京駅方面の2グループに分かれ、盛大なデモ行進を行い、社会に向けたアピールを行いました。

自立支援法の廃止を現実のものに!

今回のフォーラムでは、長妻厚労大臣の参加により、法の廃止と当事者参画の下での新法づくりを、改めて私たち障害者、家族、関係者の前で約束したことは、重要であり、障害者運動の歴史に残る一日となりました。

しかし、新政権は年末に来て、当事者参画の第一歩である「障がい者制度改革推進本部」は立ち上げたものの、来年度予算における事項要求となっている「暫定的な利用者負担の軽減等の実施」を先送りするような動きもあります。

このことは悪法の廃止に向けた第一歩であり、新政権が「生活第一」「コンクリートから人へ」というのであれば、まずは、最優先する政策(公約)の一つとして実行されるべきです。

今年も大きな政治的課題が山積する中、今回の10.30全国大フォーラムの成果を活かし、今こそ障害者の人権を勝ちとるために、今年もさらなら運動の輪を広げて、がんばっていきましょう。

(いえひらさとる 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局次長)