音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年2月号

知り隊おしえ隊

車いすで安心して楽しめる福博の街

新開俊光

1988年8月、私は3年余にわたる総合せき損センターでの闘病生活から離脱し、車いす常用の障害を負って社会復帰しました。社会資本(インフラ)や生活環境(住宅)が重度の障害をもっている者にとっては障壁(バリア)となり、また、障害をもった者の存在やその生活方法について、障害の身になる前はあえて知る必要がなかったように、一般の人たちはあまり知らないということを身を持って経験しました。上位胸椎部硬膜内髄外腫瘍及び頚椎部脊髄空洞症による両上下肢機能障害、一種一級。これが、私の身体状況です。詳しくは私のホームページ「車いすが見た社会」(私の身体的背景)に記しております。

さて、家に引きこもっていては、私のこれからの人生は暗く寂しいもので終わってしまいます。外へ出よう!楽しまなくちゃ。しかし、一歩外へ出てみて、車いすの身になるまで何も不自由と感じなかった社会には、さまざまな「障壁」が立ちはだかりました。しかし、これも最近10年ほどの当事者によるさまざまな活動で理解、認識が深まり、徐々に取り除かれてきました。今回は表題に掲げた「車いすで安心して楽しめる福博の街」をご紹介します。

博多駅界隈「博多デイトス」

まずは福岡のいや、九州の表玄関、博多駅では、2011年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開通に向け、新駅ビルの建設工事が進んでいます。筑紫口の商業施設「博多デイトス」が約半年の全面改装工事を終え、昨年10月23日に新装オープン。この施設は「生まれ変わる博多駅」の第一弾で、関係者の期待も高いようです。

オープンした当日にバリアフリー探検を行いました。フロアは平坦、すべての店舗が車いすで出入りが可能です。市内にはバリアフリーを謳っている施設はたくさんありますが、「聞くと見る」とでは大違い、落胆させられることが多々あります。酒が好きな私は、すでに情報を得ていた「ほろよい通り」の居酒屋群を目指しました。8店舗すべてが利用可能で、1F・B1に車いす対応トイレが設置されているので安心して楽しめます。その他に、地元有名店が軒を連ねるなど、テーマごとに135店舗。暑さ寒さ、雨に弱い車いすには持って来いのスポットです。軍資金があれば、毎晩でも「ほろよい気分」になってみたいですね。外出の目的(楽しみ)が増えました。2Fの「博多めん街道」には博多ラーメンの名店も新規にオープンしました。

福岡に来たのに美味しい「博多ラーメン」を食べに行く時間が無かったという話はよく聞きます。これからは新幹線の待ち時間にちょっと寄れます。駅ビルが全面開店すれば新しい博多のスポットになることでしょう。車いすにとっても。博多に遊びにきんしゃい!

櫛田神社(※1参照)

地下鉄の博多駅から天神方向へ1駅の「祇園」で下車、エレベーターで地上へ。ここから程近いところ(徒歩6分)に、この場所に行かずしては山笠を語れないと言われる博多の総鎮守、「櫛田神社」があります。車いすで神社に? 心配ないですよ。正面は階段となっていますが、右手から入れます。入ってすぐ左側に車いすトイレがあり、安心してお参りができます。初孫はここで「初参り」を済ませました。博多に来たらぜひここにも立ち寄ってください。博多の歴史に触れることができます(※2参照)。

ここから少し車いすを転がして「川端商店街」へ。博多川沿いに北西から南東におよそ400メートルのアーケード内に約100軒の店舗が両側に並び、山笠の期間中(7月1日~15日)には飾り山笠が鎮座しています。車いすで利用できる食堂などもあります。周囲にはオフィスビルが立ち並ぶ福岡市の繁華街、天神と呉服町の中間に位置し、また博多川を挟んだ西側は「中洲」です。

北側には「博多リバレイン」(イニミニマニモ、博多座)、トイレなども完備しており車いすで自由に楽しめます。商店街にはトイレがないのでここで済ませるとよいでしょう。アトリウムガーデンから博多川の景色をのぞむ木製展望テラスや、風のステージなどがあり、癒し効果満点の博多リバレインです(図1)。

図1 地図
図1 地図拡大図・テキスト

商店街の南側にやや離れて「キャナルシティ博多」、ここは「都市の中のもう一つの都市」をテーマにしたテーマパーク型複合施設です。ホテル「グランド・ハイアット・福岡」や劇団四季の常設劇場「福岡シティ劇場」、映画館「AMCキャナルシティ13」、アウトドアグッズ専門店やマルチメディアショップなどがあり、遊ぶ・食べる・買う・泊まるがここ1か所でOK! ラーメン好きの方はラーメンスタジアムへ。

おっと、忘れるところでした。博多市民のお祭り「博多どんたく」は、今から830年前の治承3年(1179年)に始まったと『筑前国続風土記』(貝原益軒著)に記されている「松ばやし」をその起源としています。

「どんたく」の名称は、明治時代に一時禁止されていた「松ばやし」を復活させる際に使われ始めたもので、オランダ語のZondag(休日)がその語源であると言われています。戦後の昭和21年5月、「松ばやし」と「どんたく」が8年ぶりに復活、翌年22年には福岡商工会議所が中心となって、戦後初めてのどんたくを開催しました。毎年、200万人を超える観光客が全国から訪れます。

大濠(おおほり)公園・舞鶴公園・西公園

地下鉄「大濠公園駅」下車、西へ3分。福岡市の中心部にあり、気軽に出かけられる市民のオアシス的存在で、浮見堂からの眺めが最高です。外周は約2km、能楽堂や美術館、日本庭園があり、池を囲む遊歩道は、ジョギングやサイクリングができるよう整備されています。車いす用の公衆トイレは4か所ありますが汚くて、使う気になれません。能楽堂か、南側の美術館あるいはNHK福岡放送局で借りた方が無難です。大分国際車いすマラソンに挑戦した際、ここでトレーニングをしました。NHK福岡の東側には護国神社があり、正月には参拝客で賑わいます。本殿へはスロープが設けてあり、車いすでもお参り可能です。

桜の季節には公園の東側に「舞鶴公園」、北西へ少し行けば福岡市内一番の桜の名所でもある(日本桜百選に選ばれている)「西公園」があります。中央展望台付近に2台分の車いす用駐車スペースと身障者用トイレも。スロープで登れる展望台は駐車場のすぐ近くにあり博多湾を一望できます。地下鉄大濠公園駅から車いすで西公園へ登るときには、光雲神社下までの急坂が大変ですので、近くにいる人に介助をお願いしたほうがよいかもしれません。

百道浜(ももちはま)・地行浜(じぎょうはま)

次は博多湾を埋め立てた、「百道浜・地行浜」へ行ってみましょう。博多駅のバスセンターから系統番号306福岡タワー行きに乗車(所要時間24分・料金220円)。混雑した市内を避けて首都高速を行くので早いです。福岡タワーの北側に広がる海浜公園はスポーツやグルメなど1日遊べます。人工とは思えないほど真っ白な海浜は、360度の開放感が心地よく、夏は、海や砂浜を楽しむ人が多く訪れ、ビーチバレーやビーチサッカー、ジェットスキーなどビーチスポーツのメッカとして賑わっています。車いすでは砂浜で遊べない? 大丈夫、それは釣り! こんな都会のど真ん中でと思うでしょう。メイタ、チヌ、アジゴ、コノシロ、スズキ、カレイなどが釣れます。全国的にも珍しく、めったにない車いすで楽しめる釣りポイントです。日陰になっている遊歩道の松林内には車いすトイレもあります(※3参照)。

近くには福岡タワーをはじめ福岡市総合図書館、福岡市博物館、福岡ドームに隣接する「シーホーク ホテル&リゾート」やライヴハウス「Zeppu Fukuoka」、映画館「ユナイテッド・シネマ福岡」、ここから西新方面へ車いすを転がすと、サザエさん(長谷川町子原作)発案の地や元寇・防塁の跡などがあり、車いすで浜辺を端から端まで転がせて一日中車いすで楽しめるスポットです(※4参照)。

能古島・海ノ中道海浜公園、ちょっと郊外になりますが、太宰府天満宮・九州国立博物館や福岡の商業施設が集中している天神界隈の紹介は、紙面が足らないほどたくさんあるので省きました。岩田屋・三越・大丸・その他大型施設はほとんど車いすで利用できます。

(しんかいとしみつ 電車に乗るぞ障害者の会)


博多駅デイトス
http://www.deitos.co.jp/hakata/
福岡市交通局(※1)
http://subway.city.fukuoka.lg.jp/index.html
山笠写真集
http://wadaphoto.jp/maturi/hakata5.htm
博多リバレイン
http://www.em3.jp/index.html
川端商店街
http://www.hakata.or.jp/
キャナルシティ
http://www.canalcity.co.jp/index.php
ラーメンスタジアム
http://www.canalcity.co.jp/ra-sta2/index.php
福岡市民の祭り「博多どんたく港まつり」
http://www.hakatadontaku.jp/genesis/genesis.html
貝原益軒
http://www.lib.nakamura-u.ac.jp/kaibara/index.htm
大濠公園
http://ohorikouen.jp/index.php
西公園
http://www.yado.co.jp/tiiki/fukuoka/nisipark/nisipark.htm
舞鶴公園
http://www.yado.co.jp/tiiki/fukuoka/fukusiro/fukusiro.htm
山笠があるけん! 博多たい(※2
http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-chair/2005/yamakasa/index.htm
釣場案内(※3
http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-chair/ojisan/sakana.htm
地行浜・百道浜の車いすマップ(※4
http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-net/2006/momoti/index.htm
車いすが見た社会
http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-net/siten.htm
元寇・防塁の跡
http://inoues.net/ruins/genkoh.html
車いすのおっさん
http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-net/
グランド・ハイアット・福岡
http://www.grandhyattfukuoka.com/stay/index.html
ホテル日航福岡
http://www.hotelnikko-fukuoka.com/
ホテルセントラーザ博多
http://www.centraza.com/
九州国立博物館
http://www.kyuhaku.jp/