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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年2月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●身体に合わせた環境づくり、他●

提案者:杉山健太郎 イラスト:はんだみちこ

杉山健太郎(すぎやまけんたろう)さん

脳性マヒのある私は電動車いすを使い、24時間介助を利用し生活をしています。学校(特別支援学校)を卒業するまでは自宅で両親の介助を受けていました。両親が歳をとるにつれて介助が大変になってきたのを見て自立を決意。若いうちに家を出た方がいいと判断し、2006年4月から念願の一人暮らしをスタート。現在はヒューマンケア協会で、これから自立生活を始めようとする人たちにアドバイスやピア・カウンセリングの仕事をして充実した毎日を送っています。


身体に合わせた環境づくり

私は、常に身体に緊張が入っているため、何かしようとするとすぐに大量の汗をかいてしまいます。それと体温調節の機能がほかの人に比べ上手く働いていないこともあり、夏場は特に身体に負担がかかってしまいがちです。

普段の生活や職場で介助者に「指示」をするときも、それ以外の場面でほかの人と「喋る」だけでも大量の汗をかいてしまい、体力を消耗してしまいます。

現在働いている職場には、いろいろな障害の人がいるので、冬になると私の身体にとっては暖房が効きすぎる環境になります。それを少しでも解消するために、私のデスクには専用のミニ扇風機があり、仕事をするときに活用しています。

また、夏場は特に汗を大量にかくので、意識的に水分と糖分を摂取して体調管理をしています。

以前、真夏のものすごく暑い中を1時間くらい歩いて目的地に到着したら、気分が悪くなり熱射病と日射病になっていたという経験がありました。


手・足が動かなくても…、顎で操作する車いす

私は自分の意思で両手・両足を動かすことができません。でも、中2の頃から自分で電動車いすを操作して移動したいという気持ちが出始めました。

最初、身体のあちこちにクッションを詰めて何とか左手で運転を試みたのですが、操作を始めて30~40分経つと、クッションがずれて、操作を続けることができませんでした。両親や病院の理学療法士と相談を重ねた結果、顎で車いすを操作しようという結論に至りました。

現在では、顎で操作するユーザーを見かけることは増えてきましたが、当時は見かけることは少なく、クッションを一切使わないで座位を保つことができる車いすの業者もありませんでした。

私はネットを使ったり知人に尋ねたりして業者を探していたところ、知人からどんな障害をもっている人でも操作しやすい電動車いすを作っている業者があるという情報を得ました。

作り始めてから半年くらいで、私の身体にフィットして、顎で操作できる電動車いすが完成しました。今までは「車いす」に「身体」を合わせるという形でしたが、新しい電動車いすは「身体」に「車いす」を合わせるというものです。

以前は長時間の移動をすると腰に痛みが出てしまうことがありましたが、私の身体に合った電動車いすになってからは腰の痛みもなくなり、行きたいところに行ける喜びを感じています。


負担を掛けずにコミュニケーション

私は介助者(ヘルパー)への指示は、基本的に口頭で行うようにしています。しかし、風邪をひいたときなどは細かい所まで指示を出すのが困難になってしまいます。そういった場合を想定し、私は家のキッチンにホワイトボードを設置しています。

使い方には2種類あります。まず、緊急時を想定し「体調が悪いので寝ています」や「燃えるごみをまとめておいてください」といったように、介助者に伝えておきたいことを書いています。もう一つは、冷蔵庫の食材や調味料等の消耗品が少なくなってきた場合に、あらかじめ介助者に記入してもらうようにしています。このように、直接私の目が届かない部分の情報をホワイトボードで得ています。

なぜホワイトボードを取り入れたかと言うと、以前は風邪をひいているときも無理をして介助者に口頭で指示をだしていましたが、それで体力を使ってしまい、なかなか体調が戻らず逆に悪化してしまうことが多々ありました。こういった経験から、体調が崩れた場合は身体に負担が掛からないようにして、QOLの向上を図っています。