音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年3月号

平成22年度障害保健福祉関係予算案

厚生労働省障害保健福祉部企画課

障害保健福祉関係予算については、平成22年度予算において、対前年度12.7%増の1兆1,202億円を計上しており、障害者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる社会を実現するため、障がい者制度改革推進本部等における各種の制度改革の一環として、障害者福祉制度を制度の谷間がなく、利用者の応能負担を基本とする制度に抜本的に見直していくこととあわせて、新たな制度ができるまでの間においても、障害福祉サービス等の利用者負担について更なる軽減を図ります。

また、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施等を図るとともに、精神保健医療福祉や発達障害者等支援を推進します。

なお、平成22年度より身体障害者の範囲を拡大し、障害者自立支援医療等の対象に肝機能障害を加えます。

1 利用者負担の軽減(新規)107億円

※障害者自立支援給付者負担金及び児童保護者等負担金の内数

新たな総合的な制度ができるまでの間、低所得(市町村民税非課税)の障害者等につき、福祉サービス及び補装具に係る利用者負担を無料とします。※平成22年度実施

(参考)現行の低所得の障害者に係る利用者負担

福祉サービス(居宅)…最大 3,000円
福祉サービス(通所)…最大 1,500円
福祉サービス(入所、グループホーム等)…最大 24,600円
補装具…最大 24,600円

2 障害福祉サービス等による障害者支援の推進

障害者の自立した地域生活を支援するため、良質な障害福祉サービスを確保するとともに、障害者に対する良質かつ適切な医療を提供します。さらに、障害者の地域生活等を支援するために、必要な事業を実施します。

(1)良質な障害福祉サービスの確保 5,719億円

ホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援事業等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づく各市町村における取組の推進を図ります。

(2)地域生活支援事業の着実な実施 440億円

障害者のニーズを踏まえ、移動支援や地域活動支援センター機能強化など障害者の地域生活を支援する事業について、市町村等における事業の着実な実施及び定着を図るとともに、事業の実施が遅れている地域の支援や実施水準に格差が見られる事業の充実を図ります。

(3)障害者に対する良質かつ適切な医療の提供 1,954億円

心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療(精神通院医療、身体障害者向けの更生医療、身体障害児向けの育成医療)を提供します。

(4)障害福祉サービス提供体制の整備 124億円

○社会福祉施設整備費(保護施設分を含む。) 100億円

障害者の就労支援や地域移行支援の充実を図るため、就労移行支援、生活介護、自立訓練等の障害者の日中活動に係る事業所やグループホーム等の整備を促進します。

〔補助対象の追加〕

  • グループホーム・ケアホームの身体障害者の受入れに係るエレベーター等設置整備(1共同生活住居当たり2,000千円以内(事業費ベース))
  • 児童デイサービス事業所
  • 短期入所事業所
  • 療養介護事業所
  • 宿泊型自立訓練事業所(宿泊部分)

〔補助基準単価の改定〕

  • 社会福祉施設整備費の補助基準単価について、資材費及び労務費の動向を踏まえ1.8%引き上げます。

○障害者就労訓練設備等整備事業 24億円

既存の障害者施設や小規模作業所等が就労移行支援等の新体系事業への移行に際して必要となる就労訓練設備の購入やグループホーム等を行うための賃貸物件の改修に対し補助を行います。

〔補助対象の追加〕

  • グループホーム・ケアホームの身体障害者の受入れに係るエレベーター等設置整備(1共同生活住居当たり2,000千円以内(事業費ベース))

(5)障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進(新規) 4.7億円

1.障害者虐待防止対策支援事業の推進 4.6億円

障害者虐待の防止や虐待を受けた者に対する支援等を行うため、地域における連携体制の整備や支援体制の強化を行う事業に要する費用を都道府県に対して補助する統合補助金を創設します。

〔主な事業内容〕

  • 家庭訪問の実施や相談窓口の体制強化
  • 虐待の防止等の支援に関する専門的な研修
  • 医師、弁護士等との連携による専門性の強化
  • 精神科医等によるカウンセリングの実施

2.障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成等の推進 3百万円

国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施し、関連する制度の周知等を行います。

(6)盲ろう者向け生活訓練等モデル事業(新規) 54百万円

盲ろう者の障害特性に対応した生活訓練等の確立を図るため、宿泊型の生活訓練等のモデル事業を実施します。

(7)障害者の社会参加の促進 28億円

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、障害者スポーツや芸術文化活動の振興等を支援し、障害者の社会参加の促進を図ります。

○総合国際競技大会への派遣及び指定強化事業の実施 2.6億円

パラリンピック等の国際大会への日本選手団の派遣や強化合宿等の実施、障害者スポーツの世界大会でのメダル獲得に向けたトップレベルの競技者に対する特別強化プランを実施するとともに、普及啓発等の取組を行うことにより、障害者スポーツの振興を図ります。

(8)障害者自立支援機器等開発の促進(新規) 4.3億円

障害者の自立や社会参加を支援する支援機器や技術開発の促進を図るため、マーケットが小さく事業につながらない等ビジネスモデルの確立が困難な機器に対する実用的製品化において、障害者によるモニター評価等を義務付けた取組の助成を行います。

(9)障害児施設に係る給付費等の確保 710億円

障害のある児童に対して、知的障害児施設等の障害児施設において行う保護・訓練に係る経費を確保します。

(10)重症心身障害児(者)に対する在宅支援の推進 31億円

在宅で暮らす重症心身障害児(者)への支援の充実を図るため、日常生活動作、運動機能等に係る訓練・指導、保護者等の家庭における療育技術の習得等を行う重症心身障害児(者)通園事業の実施か所数の拡充を図ります。

(実施か所数) (平成21年度) (平成22年度予算案)
A型 [利用人員15名、併設型] 62か所 → 64か所(+2か所)
B型 [利用人員 5名、既存施設利用型] 220か所 → 236か所(+16か所)

(11)障害者総合福祉推進事業の創設(新規) 5億円

障害者自立支援法廃止後の新たな総合的な制度の検討、制度施行のために具体的な検討が必要となる課題について、地域における実践的工夫や取組及び実態の把握を行うため、「障害者総合福祉推進事業」を創設します。

(参考)平成21年度第1次補正予算において、都道府県に対する交付金(障害者自立支援対策臨時特例交付金)により基金の積増し(1,425億円)を行い、以下の事業を実施します。(平成23年度まで)

○福祉・介護職員の処遇改善

福祉・介護職員の雇用環境を改善するため、福祉・介護職員の賃金の確実な引上げなど福祉・介護職員の処遇改善に取り組む事業者に対し、福祉・介護職員一人当たり月額平均1.5万円の賃金引上げに相当する額を助成します。

○事業者の新体系移行の促進

事業者の新体系移行を促進するため、移行した場合に従前の報酬水準を保障し事業運営の安定化を図るとともに、必要となる改修、増築等の基盤整備の促進を図ります。

3 障害者に対する就労支援の推進 18億円

(1)「工賃倍増5か年計画」の着実な推進 7.9億円

これまでの取組について、都道府県や事業所が行っている効果的な事業を更に促進するとともに、新たに、複数の事業所が協働して受注、品質管理等を行う事業を定額補助(10/10相当)で実施すること等により、工賃の引き上げに向けた取組の強化を図ります。

【既存事業 1/2(国1/2、都道府県1/2)】

  • 経営コンサルタントの派遣等による個別事業所の工賃引上げの促進
  • 事業所職員の人材育成に関する経費

【新規事業 定額(10/10相当)】

  • 複数の事業所が協働して受注、品質管理等を行う「共同受注窓口組織」を整備するための事業(8か所(ブロックごとに1か所))
  • 工賃引上げに積極的な事業所における好事例の紹介、説明会の実施
  • 事業者の経営意識の向上(未着手事業所への説明会)

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 9.6億円

障害者の就業面と生活面における一体的な支援を行う障害者就業・生活支援センターについて、設置か所数を拡充し、地域における障害者に対する就労支援体制の強化を図ります。

  (平成21年度) (平成22年度予算案)
◯設置か所数 265か所 → 282か所 (+17か所)
◯生活支援担当者 常勤1名 → 常勤1名+非常勤1名
(参考)
就業支援担当者
常勤2名 → 常勤2名

4 精神医療の質の向上や精神障害者の地域移行を支援する施策の推進 47億円

(1)精神科救急医療体制の充実・強化 23億円 

救急搬送において、地域において定めた救急搬送・受け入れに関するルールに基づき、身体合併症患者を積極的に受け入れる身体合併症対応施設(47か所)への医師等の配置による救急搬送受入体制を強化するとともに、空きベッドの確保の推進(空床確保料10,200円→12,400円)等により、精神・身体疾患を併せ持つ患者に対する精神科救急体制の強化を図ります。

(2)認知症医療体制の強化 5.8億円

地域で認知症の専門的医療を提供する認知症疾患医療センターにおいて、鑑別診断、専門医療相談、合併症対応、診療情報提供等を行うとともに、担当者の配置による介護との連携等を行うほか、新たに認知症の周辺症状や身体合併症に対する双方の医療を担う中核的機能の充実等を図ります。

また、国において認知症疾患医療センターの職員等に対する研修を行い、専門的医療の質の向上を図ります。

(3)精神障害者の地域移行・地域生活支援の推進 17億円

精神障害者の退院支援や地域生活支援を行う地域移行推進員の増員(2人→4人)や地域生活に必要な体制整備を促進する地域体制整備コーディネーターの活動の強化により、精神障害者の地域生活への移行をより一層推進するとともに、未治療・治療中断者に対する訪問等による医療的支援の提供、若年層における精神疾患の早期発見、早期治療のための取り組み等を通じた地域生活支援を推進します。

(4)依存症対策の推進 89百万円

地域における薬物・アルコール依存症対策を推進するため、「依存症対策推進計画」を策定し、その計画に基づいた依存症対策事業を実施するとともに、依存症者の社会復帰支援を強化するため、関係者の資質向上を図ります。

(5)精神障害に対する国民の正しい理解の促進 81百万円

精神疾患・精神障害に対する理解を深めるため、国民各層への取組の中で、特に若年層を中心とした普及啓発を推進します。

5 発達障害者等支援施策の更なる推進 7.5億円

(1)発達障害者の地域支援体制の確立 2.0億円

発達障害者の支援を実施する地域支援体制の確立を推進します。

○発達障害者支援センター運営事業の推進(地域生活支援事業(440億円)の内数)

各都道府県・指定都市に設置する発達障害者支援センターにおいて、発達障害者やその家族等に対して、相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供等を行います。

○発達障害者支援体制整備事業の推進 2.0億円

ライフステージに対応する一貫した支援を行うための支援関係機関のネットワークを構築するとともに、市町村における個別の支援計画の実施状況の調査及び評価や、適切な助言(巡回指導)等を行うことにより、支援体制の整備を行います。

さらに、ペアレントメンターの養成や、発達障害特有のアセスメントツールの導入を促進する研修会の実施等により、発達障害児(者)及びその家族に対する支援体制の一層の強化を図ります。

(2)発達障害者の支援手法の開発や普及啓発の着実な実施 5.4億円

発達障害者の支援手法を開発するとともに、専門家の育成や普及啓発について着実に実施します。

○青年期発達障害者の地域生活移行への就労支援に関するモデル事業の推進 39百万円

国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、青年期発達障害者の職業的自立を図るため、関係機関等と連携して就労支援モデル事業を実施します。

○発達障害者支援開発事業の推進 3.9億円

発達障害者一人一人のニーズに応じた一貫した支援ができるよう先駆的な取組みを通じて発達障害者への有効な支援手法を開発・確立します。

○発達障害情報センター機能の充実 54百万円

発達障害情報センターにおいて、発達障害に関する国内外の文献、研究成果等を集積し、全国の発達障害者支援機関等への発達障害に関する幅広い情報提供等を行うとともに、各自治体の発達障害に関する支援体制の好事例を集めたモデル事例集や、支援手法等を集めた支援マニュアルを策定します。

○発達障害者支援者実地研修事業の創設 23百万円

発達障害児(者)への専門的な支援を行う発達障害者支援センター職員等を対象とした中期の実地研修を実施し、地域において指導的な役割を担うことができる専門的な人材を育成します。

○「世界自閉症啓発デー」普及啓発事業の推進 15百万円

国連が制定した「世界自閉症啓発デー」(4月2日)の周知と、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るための普及啓発活動を実施します。

(3)高次脳機能障害者の支援体制の確立 12百万円

各都道府県が整備する支援拠点機関において、高次脳機能障害者やその家族に対する情報提供、相談業務等を行うとともに、ネットワークの強化により適切な診断、訓練、リハビリテーションが行えるよう体制の確立を図ります。

また、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、支援拠点機関の従事者等を対象とした研修を行い、適切な支援の普及及び支援サービスの質の均てん化を図ります。

6 自殺対策の推進 6.0億円

(参考)地域における自殺対策の強化

平成21年度第1次補正予算(100億円)による「地域自殺対策緊急強化基金」(内閣府所管)を活用して、地域の実情を踏まえて自主的に自殺対策に取り組む地方公共団体や民間団体への支援を行います。(平成23年度まで)

(1)地域での効果的な自殺対策の充実と民間団体の取組支援 3.5億円

地域における支援体制の整備を行うための「地域自殺予防情報センター」の機能を拡充するなどにより、うつ病対策、依存症対策等の精神保健的な観点に着目した地域の自殺対策の向上を図るとともに、自殺未遂者や自殺遺族等へのケアに当たる人材の研修や自殺対策に取り組む民間団体への支援を行います。

○地域自殺予防情報センターの充実・強化 1.3億円

「地域自殺予防情報センター」に専門相談員を配置し、自殺未遂者・自殺者親族等に対する相談機能の強化を図るとともに、関係機関のネットワークの強化等を引き続き推進します。

○自殺対策に取組む民間団体への支援 1.1億円

先進的かつ効果的な自殺の防止等に関する活動を行っている民間団体に対し、支援を行います。

(2)自殺予防に向けた相談体制の充実と人材育成等 91百万円

うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医、小児科医等のかかりつけ医に対するうつ病の診断・治療・医療連携に関する研修を実施するとともに、地域におけるメンタルヘルスを担う心理職等の従事者に対する精神保健等に関する研修を行うこと等により、地域における各種相談機関と精神保健医療体制との連携の強化を図ります。

(3)うつ病等の精神疾患に関する国民の正しい理解の促進 81百万円

自殺との関係が強いとされるうつ病等の精神疾患に関する国民の正しい理解のための普及啓発を実施します。

(4)自殺予防総合対策センターにおける情報提供・調査研究等の推進(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター運営費交付金の内数)

総合的な自殺対策を実施するため、自殺予防総合対策センターにおいて、国内外の情報収集、インターネットによる情報提供、関係団体等との連絡調整、自殺の実態を解明するための調査等を実施します。

7 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 235億円

(1)医療観察法の医療提供体制の充実・強化 233億円

指定入院医療機関の整備に向けて、都道府県等による整備を促進するための取組みを推進するとともに、対象者の地域における継続的な医療の提供と社会復帰の促進を図ります。

(2)円滑な社会復帰に重点を置いた医療観察法制度の適正な運用 1.8億円

※他局計上分を含む。

医療観察法に基づく対象者に対する質の高い医療的ケアを行い、円滑な社会復帰を促進するため、医療観察法医療の質を評価・検証するとともに、公平な審判に資するよう、精神鑑定の判定事例にかかる考察を行います。

(3)司法精神医療に携わる医療及び福祉職種の人材養成 66百万円

増加する精神鑑定業務への対応と医療観察法に基づく対象者に対する質の高い医療的ケアを行うため、精神保健判定医や指定医療機関従事者、地域保健福祉職員等に対し、司法精神医学の教育、医療観察法に基づく鑑定ならびに医療処遇に関する各種の演習等を適切に実施することで、関係職種の育成と資質能力の向上を図ります。

8 特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,367億円

特別児童扶養手当、特別障害者手当等に必要な経費を確保します。