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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年5月号

時代を読む7

いま、特別支援教育
―養護学校教育義務制実施から30年―

平成19年度よりノーマライゼーションの理念に沿って、特別の教育の場で指導を行う「特殊教育」から、障害児の一人一人のニーズを把握し適切な教育的支援を行う「特別支援教育」へ転換が図られたが、これまでには、多くの紆余曲折があった。

戦後の教育改革により、1947(昭和22)年から、障害児を対象とする盲・聾・養護学校は義務教育となったが、戦前から制度的に確立していた盲・聾学校とは異なり、養護学校は未整備であったために、その義務制実施は、見送りとなった。このため、知的障害児、肢体不自由児、病弱児等の教育の場がほとんど整備されなかったため、1955(昭和30)年ころから養護学校を設置してほしいという保護者等による運動が展開された。その結果、1956(昭和31)年に、公立養護学校整備特別措置法が定められたことによって、ようやく養護学校整備が開始されたが、その進捗状況は緩慢であった。

こうした状況から、1971(昭和46)年、中央教育審議会が、養護学校教育義務制の早期実施を答申したことにより、文部省は、昭和47年度からの7か年計画を策定し、53年度末までに養護学校対象児童生徒すべてを就学させるために必要な学校を整備することにした。また、昭和48年11月には、養護学校教育の義務制開始を1979(昭和54)年4月1日とする政令が公布された。

ところが、養護学校整備が進められつつあった1977(昭和52)年から、「校区の学校で教育を保障せよ」と主張する障害者関係団体による養護学校義務制反対運動が開始された。これとともに、福祉の分野ではノーマライゼーションが唱えられるような状況でもあったので、養護学校の義務制は、それとは逆行しているかのような印象を与えた。このような状況にもかかわらず関係者の並々ならない苦労の末、養護学校教育義務制は実施に移され、反対運動は急速に沈静化した。

養護学校の義務制実施によって、養護学校数は飛躍的に増加し、その結果、どんな障害があっても教育の機会が保障され、重度・重複障害児に対しても教育機会が拡大されたのである。

(村田茂 日本肢体不自由教育研究会理事長)

養護学校数・在学者数の推移(抄)

年度 学校数 幼児児童生徒数
昭和46 255校 26,900人
昭和51 419校 43,522人
昭和54 654校 68,606人
昭和56 695校 74,941人

注)文部科学省「特別支援教育資料」