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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

障害者制度改革の実現に向けた抱負

内閣府特命担当大臣 岡崎トミ子

新年明けましておめでとうございます。

今年が、皆様にとって素晴らしい1年となりますよう、お祈り申し上げます。

障害者制度改革についても、今年は大変重要な年です。

1年半前の政権交代以来、国民の生活を第一に様々な改革が実現してきましたが、私が担当している障害者施策についても、いよいよ今年は、改革を実現するための最初の法律改正に取り組みます。

皆様御承知のとおり、わが国は、平成19年に障害者権利条約に署名しましたが、その締結に向けた取り組みが次の課題となっています。こうした状況の下、障害者施策を総合的かつ効果的に推進するため、一昨年12月には、内閣総理大臣をトップとし、すべての閣僚で構成される「障がい者制度改革推進本部」が新たに設けられました。この本部の下で、当面、平成26年末までの間を制度改革の集中期間として、法律を始めとする様々な国内制度を改革していくこととしています。

こうした改革の推進に当たり、障害者施策に関する様々な議論を行うため、障害当事者の方が構成員の過半数を占める「障がい者制度改革推進会議」を開催しています。この推進会議において昨年6月に取りまとめていただいた「第一次意見」には、障害者制度改革を進めるに当たっての基本的な考え方が示されており、この意見を最大限尊重した形で、改革の工程表が閣議決定されました。

具体的には、分野横断的な課題として、1.平成23年の通常国会に障害者基本法の改正案を提出すること、2.平成24年の通常国会に「障害者総合福祉法案」(仮称)を提出すること、3.平成25年の通常国会に障害を理由とする差別の禁止に関する法律案を提出することを定めています。

また、雇用、教育等の十一の個別分野についても、期限を定めて担当府省が制度改正に取り組んでいくこととしています。こうした個別分野についても、推進会議においては、検討の進捗状況を把握し、必要な働きかけなどを行っていくこととなります。

私自身、国際連合における障害者権利条約の草案作成に際して、特別委員会での審議に国会議員として参加し、関係者とも意見交換をさせていただきました。このため、現在、条約の締結に向けた国内制度の改革を担当していることには、感慨深いものがあります。

これから、皆様の思いをしっかりと受け止めて、政府として、障害者基本法の改正作業に入ります。

障害者基本法の改正は、これからの障害者制度改革の要です。この障害者基本法の改正でしっかりとした土台を築き、その後の障害者総合福祉法(仮称)の制定や障害を理由とする差別を禁止する法律の制定に向けて、良い流れを作っていきたいと思います。

障害者基本法改正の具体的な内容については、これからさらに詰める必要がありますが、障害者権利条約の理念を踏まえて、すべての障害者が基本的人権の享有主体であることを確認するとともに、「障害者を保護の客体から権利の主体へ」という考え方の転換を示すことができればと考えています。

また、障害者施策に関して、これまでは、ともすると、精神的・身体的な機能の障害があることによって、様々な社会参加の機会が制約されても仕方がないとの「医学モデル」の考え方が社会に浸透していました。しかし、障害者権利条約に謳われているように、こうした考え方は変えていかなければなりません。障害者の社会参加の制限や制約の原因を障害者個人に求めるのではなく、こうした制約は社会との関係によって生じるものであると捉える「社会モデル」への考え方の転換も求められています。

私は、すべての障害者が、合理的配慮や必要な支援を受けることを通じて、障害のない人と共に生活することが確保された「インクルーシブな社会」こそ、わが国の目指すべき社会であると考えています。それは、障害の有無にかかわらず、互いに個性の差異や多様性を尊重し、人格を認め合う「共生社会」でもあります。

そして、このような社会は、単に障害の有無ということにとどまらず、性別、年齢にかかわらず、だれにとっても住みやすい社会となるものです。私は、障害者基本法等の改正を通じて、こうした社会を作り上げたいとの思いを国民の皆様に訴えかけていきたいと考えています。

障害者制度の改革は始まったばかりです。

改革を着実に実現していくために、皆様の御理解と御支援をいただきますよう、お願いいたします。

(平成23年1月)