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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

障害者権利条約の批准に向けて

ジュディ・ヒューマン

私はジュディ・ヒューマンです。アメリカ合衆国国務省で国際障害者人権特別顧問をしています。

今日は皆さんにお話しできる機会をいただき感謝しています。直接皆さんにお会いできず大変残念ですが、近い将来日本を訪れ、直接話し合う機会を作れればと考えています。

私は日本の多くの皆さんとともに、幸いにも長年にわたって活動してきましたが、皆さんを最も親しい友人と思っています。

日本の障害者は、世界の中で長い間誇るべきリーダーシップを発揮され、とりわけ、自立生活や人権の分野で、世界の障害者に多くの知識と専門性を伝えてきました。皆さんのリーダーシップによって、今や数多くの障害者が力を得ています。

アジア太平洋地域の障害者に対し、自立生活とは何か、また障害者のエンパワメントにおけるその重要性について伝える活動を行ってきたことは、称賛すべきです。皆さんが連携して行ってきた活動は、障害者の権利に関する運動がますます進展してきたことや、自立生活センターの創設などに、実を結んでいます。

私はタイやパキスタンにおける成果を直接拝見し、それについてたびたびお話ししているところです。皆さんの連携と活動によって、障害者は地域の対等なメンバーとして見なされるようになり、社会で主体的な役割を果たすようになっています。その進歩はゆっくりですが、確実に起きているのです。

日本の障害者のリーダーシップは、障害者権利条約の起草や実施に関する活動でも、同じく発揮されています。私は、札幌で開かれた第6回DPI世界会議*に参加した際、皆さんが世界の仲間を温かく迎えてくれたことを今も覚えています。ここでは障害者権利条約の策定を支持する札幌宣言が採択され、その精神は権利条約の実施に向けた現在の活動にも引き継がれています。

皆さんは、日本での権利条約の批准に向けた活動に、変わらぬ熱意を注いでいらっしゃいます。JDFが結成され、多くの障害者団体が共に活動していることは印象的で、2007年9月に日本が条約に署名したことは、その成果の一つと言えます。私たちは、米国においても同じような活動に取り組み、2009年7月に条約の署名を行ったところです。皆さんと同じように、私たちの大統領は、この条約に関する責務を大変真剣に受けとめています。皆さんが条約の批准を必ず実現することを信じており、その日をお祝いできるのを楽しみにしています。

私は今後とも障害のある仲間たちと共に活動し、米国で今行っている取り組みについてお話しできることを楽しみにしています。

最後に、世界中の障害者の地位を向上させるために、皆さんと共に活動できることを楽しみにしています。条約を世界中で効果的に実施することで、私たちすべてにとってよりよい世界を作ることができるでしょう。

*訳注 第6回DPI世界会議:「アジア太平洋障害者の十年」最終年である2002年に、最終年記念事業の一環として札幌で開かれた。なお最終年記念事業を組織するため国内の幅広い障害者団体・関係団体が連携したことが、JDF設立のきっかけとなった。

※本文は、2010年12月8日(水)に開かれた日本障害フォーラム(JDF)セミナー「権利条約の批准に向けて ~今何を!~」(東京・中野サンプラザ)に寄せられたビデオメッセージを翻訳したものです。なお、ジュディさんは本年2月に来日の予定です。

プロフィール

30年以上にわたり、障害者の人権を獲得するために、世界中の障害者団体や行政と共に最前線で国際的に活動し、障害者インターナショナル(DPI)、国際リハビリテーション協会(RI)、世界中の自立生活センターとも積極的に関わっている。バークレー自立生活センターと世界障害研究所(WID)の創設者の一人でもある。

また、社会的に不利益を被る人たちのための市民活動家として、国際的に知られている。現在、アメリカ合衆国国務省の国際障害者人権特別顧問として活躍している。前職は、ワシントンDCの障害サービス部門のディレクターであり、発達障害とリハビリテーションサービス行政に関する統括責任者。

2002年6月から2006年まで、障害と開発に関する世界銀行初代特別顧問として勤務。1993年から2001年まで、クリントン政権下において、教育省次官として特殊教育およびリハビリテーションサービス局にて尽力した。

公衆衛生に関する修士号、人文学に関する名誉博士号、行政学に関する名誉博士号、公共サービスに関する名誉博士号を有している。障害者の生活の質の向上などの努力が評価され、Henry B. Betts賞、JFGH S. Robert Cohen賞、Medtronic National Courage賞など、数多くの賞を受けている。