音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

資料
障害者制度改革の推進のための第二次意見

障がい者制度改革推進会議(平成22年12月17日(金))

はじめに

――省略――

1 障害者基本法の改正について

1 障害者基本法改正の趣旨・目的

障害者は、古今東西いかなる社会であれ、普遍的に存在している。社会には、子ども、青年、壮年、高齢者が存在するように、障害者も社会の普遍的な構成員として存在する。

しかし、障害者が社会の対等な一員として地域社会で暮らすには、いまだに大きな社会的障壁が待ち構えている。たとえば、交通機関、建築物等における物理的な障壁、欠格条項をはじめとする法律制度の障壁、点字、文字情報、手話通訳等による情報保障の欠如における文化・情報面の障壁、障害者を庇護されるべき存在としてとらえたり、障害者を外見だけで判断するなどの意識上の障壁等である。

日本の障害者施策は、特に戦後から本格的に講じられるようになり、その結果、大きな発展を遂げてきたともいえる。ところが、これまでの障害者施策は、障害者をいわゆる健常者と対比して、心身の機能に障害をかかえ、能力的に劣っているものと把握し、障害者が遭遇する様々な困難の原因を個人の心身の状態に求める考え方を起点として、体系化されてきたものである。障害者が受ける制限の原因を障害の存在に求めている現行基本法の障害者の定義ひとつをとってもそれは明らかなところである。

しかし、人類社会はしだいに社会との関係において障害を考察するようになり、ついには、障害が個人の機能障害と社会参加を妨げる社会的障壁との相互作用によって発生するものであるとの認識に達した。そしてこうした認識の変化は、障害者を保護の客体として扱ってきたこれまでの社会の対応に反省を促して、自己責任・家族依存を前提とする政策から社会的支援としての地域社会での生活支援を拡大するとともに、障害に基づく差別を撤廃し、障害者を権利の主体者として扱うべきであるとする根拠をもたらした。

現行基本法は、先に述べた経緯をたどり、国際社会の影響や国内の状況を反映し発展してきたものであり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めるものとなっている。

しかしながら、いまだ多くの障害者が施設や精神科病院での暮らしを余儀なくされ、地域社会における生活も多くの困難を抱えるだけでなく差別や虐待も後を絶たない現状にあり、国際障害者年(昭和56(1981)年)以来叫ばれてきたノーマライゼーションや完全参加と平等は、いまだ遠い夢でしかない。

かような状況において、基本法が単に既存の施策のリストに終わることなく、真に障害者施策をリードしていくためには、いくつかの条件が必要である。

すなわちそれは、第一には、障害に基づく差異を否定的な評価の対象としてではなく人間の多様性の一つとして尊重し、相互に分け隔てられることなく個性と人格を認め合うインクルーシブな社会の構築を基本法の目的に組み込むことであり、第二には、基本法が依って立つ障害概念を転換したうえで、差別禁止も含め、障害者に認められるべき基本的な人権を確認し、各種施策が人権確保のために国や地方公共団体の責務を定めるものであるとの位置付けを与えることであり、第三には、障害者に関連する政策決定過程に障害者が参画する重要性にかんがみて、障害者に関する施策の実施状況を監視する権能を担う機関を創設することである。

以上の改正の趣旨・目的を踏まえ、改正基本法には前文を規定すべきである。

推進会議は、かかる観点から、基本法の抜本改正に向けて精力的な議論を重ね、ここにその成果を第二次意見として示す。

本意見を受け、今後政府においては、基本法の改正に向けた検討・調整がなされていくものであるが、その内容が最大限に踏まえられたものとなるよう期待するものである。

2 総則関係

1)目的

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が、障害のない人と等しく、基本的人権の享有主体であることを確認し、そのことを前提として障害者基本法の目的を改正すること。

○障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するために、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて必要な施策を推進する旨を障害者基本法の目的に加えること。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

2)定義

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害の定義は、「社会モデル」の考え方を踏まえたものとするとともに、周期的又は継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける場合も含まれるような包括的で幅広いものとすること。

3)基本理念

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○すべて障害者は障害のない人と等しく基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。

○障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を有することを確認すること。

○すべて障害者は必要とする支援を受けながら、自らの下した決定に基づき、社会を構成する一員として様々な分野の活動に参加する権利を有することを確認すること。

○手話等の非音声言語が言語であることを確認し、障害者が、必要な言語を使用し、必要なコミュニケーション手段を利用するという障害者権利条約における「表現及び意見の自由についての権利」を有することを確認すること。

4)差別の禁止

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者権利条約における直接または間接的な差別や合理的配慮の定義を踏まえ、障害に基づく差別に係る規定を見直すこと。

○国は、障害に基づく差別の実態を明らかにし、その防止に関する普及啓発を図るため、差別及びその防止に関する事例の収集、整理及び提供を行うものとすること。

5)障害のある女性

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○複合的な困難を経験している障害のある女性が置かれている状況に十分に配慮しつつ、その権利を擁護するために必要な施策を講ずること。

6)障害のある子ども

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害のある子どもが障害のない子どもと等しく児童の権利条約等で認められている「意見表明権」を含む人権が認められ、一人の子どもとして尊重され、地域社会において必要な支援が提供されるとともに、その保護者等に対しても必要な支援が提供されるための施策を講ずること。

7)国及び地方公共団体の責務

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を保障し、地域生活と社会参加に必要な支援を講ずるとともに、容易に合理的配慮を提供できるための支援を含め障害に基づく差別を防止する責務を有すること。

○障害の種別や程度に基づく不合理な制度的な格差を無くす責務を有すること。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

8)国民の理解・責務

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害のない人と等しく有する障害者の権利に関する国民の理解を深めるために必要な施策を講ずること。

○国民は、障害の有無にかかわらず、相互に権利を尊重しなければならないこと。

○障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。

○事業者等は、障害者が障害のない人と共に同じ社会の一員であることを踏まえ、合理的配慮等により、その事業活動が障害者にも等しく及ぶことを認識し、障害者の権利の実現とその地位の向上に寄与するよう努めるものとすること。

9)国際的協調

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者に関する施策は、障害者の尊厳の尊重及び権利の確保に資する観点から、国際的協調の下に行われなければならないこと。

10)障害者週間

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者の社会参加を促進する観点から障害者週間を位置づけ、障害者の団体を始めとする民間団体等の参画を得るとともに、障害者は庇護される対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。

11)施策の基本方針

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から行うものとし、障害者の性別、年齢、障害の状態に配慮するとともに、それぞれの障害者の選択した生活形態や環境を含む生活の実態やその困難さに基づいて必要な支援の提供が計画、実施されなければならないこと。

○障害者への必要な支援等、障害者権利条約における「地域社会で生活する平等の権利」を踏まえ必要な施策が講じられなければならないこと。

○障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者及び関係者の意見を聴き、当該意見が可能な限り尊重されなければならないこと。

○障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現は用いないこと。

12)その他

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者及び関係者の参画を得て、障害者のための施策に関する基本的な計画(国にあっては障害者基本計画、地方公共団体にあっては都道府県又は市町村障害者計画)を策定すること。

○国は、障害者基本法の目的を達成するために、差別禁止法制を含む必要な法制上及び財政上の措置を講ずること。

○国は、障害者の状況及び障害者のために講じた施策等の概況に関する報告書を毎年国会に提出すること。

3 基本的施策関係

1)地域生活

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が地域社会において生活する権利を実現する上で必要とする支援が制度の谷間なく、かつ障害者の様々な日常生活や活動において、自らの必要に応じて提供されるよう、多様な選択肢の確保を含む必要な施策を講ずるとともに、障害者の地域移行を計画的に推進すること。

その際、家族に対する支援も含め、専ら家族に依存することがないようにするための必要な措置を講ずること。

○利用者負担に関して、仮に負担が求められる場合でも、定率負担とすることなく、また本人の所得を基礎とすること。

2)労働及び雇用

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○労働施策と福祉施策を一体的に展開し、働くことを希望するすべての障害者が合理的配慮及び必要な支援を受けることにより、障害のない人と平等に労働者としての権利が守られ、生計を立て得る収入が得られるとともに、働く機会が確保されるよう、必要な施策を講ずること。

○障害者が障害のない人と平等に生計を立てる機会を安定的に確保できるよう、自営も含め多様な就業の場を創出するとともに、仕事等の確保も含む必要な施策を講ずること。

○障害者雇用義務の対象を身体障害、知的障害から、他のあらゆる種別の障害に拡大するとともに、職業上の困難さに着目した障害認定を行うために必要な措置を講ずること。

3)教育

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害のある子どもは、他の子どもと等しく教育を受ける権利を有し、その権利を実現するためにインクルーシブな教育制度を構築すること。

○障害のある子どもとない子どもが、同じ場で共に学ぶことができることを原則とするとともに、本人・保護者が望む場合に加えて、最も適切な言語やコミュニケーションを習得するために特別支援学校・学級を選択できるようにすること。

○就学先の決定に際し、本人・保護者の意に反して決定がなされないことを原則とすること。

○障害のある子どもの個別のニーズに的確にこたえるため、合理的配慮や必要な支援が提供されるために必要な施策を講ずること。

4)健康、医療

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者の人権を確保しつつ、必要な医療が提供されるために必要な施策を講ずること。

○障害者が地域社会で自立した生活を営むことができるよう、日常生活における可能な限り身近なところで必要な医療や支援サービスが提供されるために必要な施策を講ずること。

○障害の原因となる難病等の治療や症状の軽減に係る調査及び研究を推進すること。

5)障害原因の予防

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害に対する否定的な考え方を前提とする表現は用いないこと。

○障害の原因の予防のための施策は、公衆衛生又は医療に係る施策の一環として講ずること。

6)精神障害者に係る地域移行の促進と医療における適正手続の確保

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○精神障害者の社会的入院を解消し、強制的措置を可能な限り無くすため、精神病床数の削減その他地域移行に関する措置を計画的に推進し、家族に特別に加重された責任を負わせることなく、地域社会において必要な支援を受けながら自立した生活を送れるよう通院及び在宅医療のための体制整備を含め必要な施策を講ずること。

○障害者に対する非自発的な入院その他の本人の意思に基づかない隔離拘束を伴う例外的な医療の提供に際しては、基本的人権の尊重の観点に基づき、当該医療を受ける障害者に対して、障害のない人との平等を基礎とした実効性のある適正手続を保障する制度を整備すること。

7)相談等

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が必要なコミュニケーション手段の提供を受けながら身近な地域で相談することができるための施策を講ずること。

○障害者に対する人権侵害に関する事項を含む多様な相談が適切に行われるよう相談体制の整備を図り、障害者自身又は家族による相談やそれ以外の者による相談等、相談を行う者に対する必要な研修等を行い、制度に位置づけること。

8)住宅

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者の地域移行を促進し、地域社会における生活を実現するため、様々な障害者自らの必要に応じた住宅を確保するために必要な施策を講ずること。

9)ユニバーサルデザインと技術開発

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○ユニバーサルデザインの理念があらゆる施策に反映されるようにすること。

○障害者が自立した日常生活や社会参加を行うために必要な福祉用具等の研究開発や普及のために必要な施策を講ずること。

10)公共的施設のバリアフリー化と交通・移動の確保

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○切れ目のない交通・移動手段を確保する観点から、障害者のニーズを踏まえ、大都市部のみならず地方部においてもバリアフリー化を計画的に推進するとともに、適切な接遇や合理的配慮を確保するために必要な施策を実施すること。

11)情報アクセスと言語・コミュニケーション保障

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が様々な情報にアクセスし、また自ら必要とする言語を使用し、更に多様なコミュニケーション手段を利用することができるよう必要な施策を講ずること。

○災害情報の提供に当たっては、障害者の特性に配慮した伝達手段が提供されるよう必要な施策を講ずること。

12)文化・スポーツ

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が文化・スポーツ等の分野において様々な活動をすることができるようにするために必要な施策を講ずること。

○文化・スポーツ等の分野において、障害者は庇護の対象であるかのような誤解を招く表現は用いないこと。

13)所得保障

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者が地域社会において人としての尊厳にふさわしい自立した生活ができるよう、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講ずるとともに、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免、就労支援との連携等、その他必要な施策を講ずるなど障害者が障害のために追加的に要する経済的負担の軽減を図るために必要な施策を講ずること。

14)政治参加

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害者の選挙権及び被選挙権の機会の均等を図り、障害の種別や特性に応じた必要な施策を講ずること。

○選挙等の実施において、選挙等に係る情報の提供や投票等について障害の特性に配慮した施策を講ずること。

15)司法手続

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○司法手続及び刑事施設等の処遇において、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の確保等の必要な配慮がなされるとともに、関係職員に対して障害の理解等に関する研修を行うなどの必要な施策を講ずること。

16)国際協力

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見)

○障害分野における国際協力を推進するため、外国政府、国際機関又は障害者の団体を始めとする民間団体等との連携や協力を図るために必要な施策を講ずること。

○国際協力の取組の担い手及び受益者として障害者が参加できるように、障害に特化したものだけではなく、国際協力事業全般において合理的配慮の提供を確保するとともに、バリアフリー化の促進を図ること。

4 推進体制

1)組織

2)所掌事務

(基本法改正に当たって政府に求める事項に関する意見) *1)組織 も含む(編集部注)。

○中央障害者施策推進協議会及び障がい者制度改革推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成し、障害当事者が過半数を占める新たな審議会組織を内閣府に置くこと。

○新たに国に置かれる審議会組織は、基本法の理念に基づき障害者基本計画及び障害者に関する基本的な政策に関する調査審議を行うとともに、施策の実施状況を監視し、必要に応じて応答義務を伴う勧告を行うことができるようにすること。

○国に置かれる審議会組織は、改革の集中期間において、制度改革の推進に関する事項についても調査審議を行うものとすること。

○国に置かれる審議会組織が任務を十全に果たせるようにするため、関係行政機関、関係団体等に対し必要な協力を求めることができるようにするとともに、必要な情報保障を含めた委員への適正な待遇の確保や必要な体制整備を行うこと。

○地方に置かれる審議会組織は、障害当事者が過半数を占める構成とし、現行の事務に加えて、新たに施策の実施状況に関する監視に関する事務(検証、評価等を含む。)を行うこと。

2 「障害」の表記

(推進会議の問題認識)

【作業チームの設置】

推進会議は、「障害」の表記に関する作業チームを設置し、「障害」のほか、「障碍」、「障がい」、「チャレンジド」等の様々な見解があることを踏まえ、それぞれの表記を採用している障害者団体、地方公共団体、企業、マスメディア、学識経験者等10名から、その考え方や運用状況等についてヒアリングを行うとともに、障害団体関係者も含む一般からの意見募集を実施した。同作業チームによる報告を受けた推進会議はその報告に基づき、現時点における考え方の整理と今後の課題について検討を行い、以下のことを確認した。

【表記問題に対する結論と課題】

「障害」の表記については、様々な主体がそれぞれの考えに基づき、様々な表記を用いており、法令等における「障害」の表記について、見解の一致をみなかった現時点において新たに特定の表記に決定することは困難であると判断せざるを得ない。

他方で、この度の様々な関係者、有識者からのヒアリング等を通じて、これまで明らかになっていなかった検討課題や論点も浮かび上がってきており、今後「障害」の表記に関する議論を進めるに当たっては、以下の観点が必要と考えられる。

  • 「障害(者)」の表記は、障害のある当事者(家族を含む。)のアイデンティティと密接な関係があるので、当事者がどのような呼称や表記を望んでいるかに配慮すること。
  • 「障害」の表記を社会モデルの観点から検討していくに当たっては、障害者権利条約における障害者(persons with disabilities)の考え方、ICF(国際生活機能分類)の障害概念、及び障害学における表記に関する議論等との整合性に配慮すること。

これらを踏まえ、法令等における「障害」の表記については、当面、現状の「障害」を用いることとし、今後、制度改革の集中期間内を目途に一定の結論を得ることを目指すべきである。

【今後の取組】

今後の取組として、具体的には、以下の取組が重要であるが、その際、障害は様々な社会的障壁との相互作用によって生ずるものであるという障害者権利条約の考え方を念頭に置きつつ、それぞれの表記に関する考え方を国民に広く紹介し、各界各層の議論を喚起するとともに、その動向やそれぞれの表記の普及状況等を注視しながら、今後、更に推進会議においても検討を進め、意見集約を図っていく必要がある。

なお、表現の多様性を確保する観点から自治体等が「障碍」という表記を使いやすくするべきとの意見もあり、「碍」を常用漢字に追加するよう提言することの適否について、併せて検討すべきである。

以上を踏まえて、次のことを行うべきである。

  • 各種シンポジウムや障害者週間等の啓発事業を通じて、「障害」のそれぞれの表記に関する議論を紹介するとともに、幅広く様々な主体における議論を喚起していくこと。
  • 「障害」のそれぞれの表記の普及状況について、定期的に調査を行うなど、その把握に努めること。
  • 近年、国会においても「障碍」や「障がい」等の表記を挙げて、「障害」の表記の在り方に関する議論が度々なされており、このような動向も注視しつつ検討を進めること。

*第29回障がい者制度改革推進会議(2010年12月17日開催)でとりまとめられた「第二次意見」の一部です。全文は、次の内閣府のHPよりご覧いただけます。http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/pdf/iken2-1-1.pdfhttp://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/pdf/iken2-1-2.pdf(編集部)