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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

1000字提言

心育てる芸術活動

熊田芳江

今年の「こころんまつり」はこれまでと違った趣で開催されました。地域の中にはコーラス、よさこい、太鼓等たくさんの芸能グループが存在し、秋になると各地でたくさんの祭りが盛んに行われています。

6回目となる今年の「こころんまつり」は、「もっとこころんらしいお祭りをしたい」という希望があり、障害をもつ当事者が中心となって計画し、スタッフはあくまでもサポーターに徹した手作り感のあるお祭りでした。

「こころん」では、設立当初より「食」を大切にし、活動の中にお習字、茶道、書道、カラーセラピーなどの芸術活動を取り入れています。

今年の「こころんまつり」の中で、茶道やバンドの演奏などに積極的に参加していためぐみさん。彼女は小学校の低学年から言葉を発することができなくなってしまったのですが、その理由は謎です。それでもそれなりにコミュニケーションを取り、活動に参加していました。そのめぐみさんが本人の希望で「夢の発表」に参加すると言い、さすがに(大勢の前で恥をかいたらかわいそう)と心配になったので、何回か練習を重ねた結果、かすかな声で何とか聞き取れる程度で当日を迎えました。

彼女の番になると息をのむ思いで見守っていましたが、私の不安な気持ちをよそに、何と彼女は堂々と美しい声で「私の夢」を発表したのです。当然「夢大賞」のグランプリを獲得しました。彼女を知らない人には何も感じなかったかもしれませんが、彼女を知る人々は涙が止まらないほどの感動でした。それだけでこのお祭りは大成功でした。

最近の脳科学の分野では、音楽は人類が言葉を持たなくとも通じる共通言語であり、適応的な意味があるらしいと言われています。

さまざまな芸術的活動が、生活を豊かにし人々の心に潤いを与え、芸の上達とともに人間性の発達にも大きく影響しているのです。大変多忙な現代社会においては、風流に習い事などしている余裕もなくだれもが忙しく生活し、他人のことに関わることも面倒になってきて、どこにいてもストレスを抱え心の病が蔓延しています。

自分らしさを表現し、絵や音楽で心を癒していく。そういう視点で芸術活動を見直してはどうでしょう。

(くまだよしえ NPO法人こころん施設長)