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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年1月号

ブックガイド

点字制定120年と文字としての点字を意識したおすすめの本

和田勉

「現代日本語を書き表すための文字は5種類ある。それは、漢字、ひらがな、カタカナ、英数字(ローマ字)、そして点字である…」。缶ビールの蓋やエレベーターのボタンなど、点字を日常的に見る機会が増えているとは言え、こう書くと違和感を覚える人があるかもしれません。しかし、郵便は点字で宛名を書いても配達してくれますし、投票所においては点字の投票が認められています。2010年には、点字だけで書かれた訴状が裁判所に認められました。これらはすべて点字が「文字」として通用している例です。

6つの点しかないので不自由と思われがちですが、点字はURLアドレスや数式、楽譜に至るまで表記できる万能な文字です。そもそもフランスのルイ・ブライユという少年が考案した形状が、ほぼそのまま世界中で使われていることからも分かるのですが、割り当てる言語の体系を変えることで、多様な表記ができるユニークな文字なのです。日本語の場合、明治23年に盲学校教諭であった石川倉次が考案した方式が採用され、今日に至っています。2010年はその制定から120年という記念すべき年でした。この年は文字としての点字を意識した好著が発行されましたのでご紹介します。

点字の市民権』(愼英弘/生活書院/1890円)は、文字としての点字の公共性にこだわった論考です。日本は、世界で初めて点字による投票を認めた国です(それは婦人参政権より前のことでした)。しかし、それがあくまで「見なし」規定であると喝破して、視覚障害者の権利の回復や拡大のためには、点字がもっと文字として認められる必要性がある(これを同書では「点字の市民権」と呼んでいます)ことを実感させてくれる本です。

一方、点字の持つさまざまな可能性を「点字力」と名付けて、多くの話題を提供してくれるのが『万人のための点字力入門』(広瀬浩二郎 編著/生活書院/2310円)です。この本は、点字の考案者ルイ・ブライユの生誕200年を記念して2009年に行われたシンポジウムの記録集でもありますが、点字という一つのキーワードから、これだけ幅広い分野からのメッセージを集めた本はほかに例がないでしょう。

最後に紹介するのは『点字サインJIS規格の普及を求めて』(日本盲人社会福祉施設協議会/1300円)。街なかに増えた点字ですが、専門的知識のない建設業者などが施工することにより、多くの問題が指摘されています。その解決策として、発行されたJIS規格を紹介するとともに、利用者がどのように評価しているかについての調査の概要を伝えてくれる本です。

(わだつとむ 日本点字図書館点字製作課)