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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年3月号

平成23年度障害保健福祉部関係予算案

厚生労働省障害保健福祉部企画課

障害保健福祉部関係予算については、平成23年度予算案において、対前年度5.5%増の1兆1,815億円を計上しており、障害があっても当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる社会を実現するため、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施、精神障害者や発達障害者等への支援施策の推進等を図ります。

また、平成22年12月10日に公布された障害者自立支援法等の1部改正法(議員立法)のうち、「平成24年4月1日までの政令で定める日」の施行については、以下のとおりです。

◇グループホーム・ケアホーム利用の際の助成 → 平成23年10月1日施行

(利用者一人につき月1万円を上限(市町村民税課税世帯を除く))

◇同行援護(重度視覚障害者の移動支援) → 平成23年10月1日施行

◇その他の事項 → 平成24年4月1日施行

さらに、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討とします。

1 障害者の地域移行・地域生活支援のための緊急体制整備事業【特別枠】 100億円

(1)地域移行のための安心生活支援(新規) 10億円

市町村で、障害者が地域で安心して暮らすための地域支援策を盛り込んだプランを作成し、夜間も含めた緊急対応や緊急一時的な宿泊等の事業を面的に一体的に行う体制を整備するとともに、移動支援やコミュニケーション支援等、地域での活動支援を更に必要とする場合には、その経費を重点的に支援します。(100か所)※地域生活支援事業に計上

(2)精神障害者アウトリーチ(訪問支援)推進事業(新規) 7億円

障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療者、治療を中断している重症の患者などへ、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、多職種チームによる訪問活動やこれらに従事する者への研修等を実施します。(25か所(定額補助))

(3)地域で暮らす場の整備促進 83億円

障害者の地域移行支援の核となる、グループホーム・ケアホーム(都道府県の障害福祉計画の目標8.3万人を達成)等の地域で暮らす「住まいの場」の整備、生活介護、自立訓練、就労移行支援等の「日中活動の場」の整備を推進します。

2 障害福祉サービスの確保、地域生活支援、精神障害者施策などの障害者支援の推進 1兆1,791億円(1兆1,176億円)

障害福祉サービスの確保、地域生活支援等

(1)良質な障害福祉サービス等の確保 6,787億円

1.障害福祉サービス 6,342億円

障害者等が地域で暮らすために必要なホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援等の障害福祉サービスを計画的に確保します。

2.地域生活支援事業(一部特別枠) 445億円

「障害者の地域移行・地域生活支援のための緊急体制整備事業(特別枠)」の「地域移行のための安心生活支援」と併せて、地域生活支援事業について、市町村等における事業の着実な実施や定着を図ります。

なお、重度の視覚障害者の移動支援は、「同行援護」として障害福祉サービスにおいて実施します。(平成23年10月施行)

(2)障害者に対する良質かつ適切な医療の提供 1,991億円

心身の障害の状態の軽減を図る自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供します。

(3)障害福祉サービス提供体制の整備(一部再掲) 108億円

障害者の地域移行支援の核となる、グループホーム・ケアホーム等の地域で暮らす「住まいの場」の整備、生活介護、自立訓練、就労移行支援等の「日中活動の場」の整備を推進します。

また、重症心身障害児等の児童福祉施設等の基盤整備を推進します。

(参考)平成22年度補正予算

○障害者自立支援対策臨時特例基金への積み増し 39億円

施設サービスの昼夜分離や就労支援の充実等の新体系サービスへの移行に必要となる施設改修や設備の充実の推進等のため、基金への積み増しを行います。

(4)全国障害児・者実態調査の実施 3.2億円

制度の谷間のない「障害者総合福祉法」(仮称)の検討にも資する基礎資料とするため、障害児・者等(これまでの法制度では支援の対象とならない者を含む。)の生活の実態等を把握するための調査を実施します。

(5)障害者の社会参加の促進 31億円

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、障害者スポーツや芸術文化活動の振興等を支援し、障害者の社会参加の促進を図ります。

○総合国際競技大会への派遣及び指定強化事業の実施 5.1億円

パラリンピック等の国際大会への日本選手団の派遣や強化合宿等の実施、障害者スポーツの世界大会でのメダル獲得に向けたトップレベルの競技者に対する特別強化プランを実施するとともに、普及啓発等の取組を行うことにより、障害者スポーツの振興を図ります。

(6)障害者自立支援機器等開発の促進 3.6億円

障害者の自立や社会参加を支援する支援機器や技術開発の促進を図るため、マーケットが小さく事業につながらない等ビジネスモデルの確立が困難な機器に対する実用的製品化において、障害者によるモニター評価等を義務付けた取組への助成を行います。

(7)障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進 4.1億円

1.障害者虐待防止対策支援事業の推進 4.0億円

障害者虐待防止の取組を支援するため、地域の関係機関の協力体制や支援体制の強化を図る「障害者虐待防止対策支援事業」を推進します。(実施主体を都道府県から市町村にも拡大)

2.障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 3百万円

国において、障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施します。

(8)介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修事業の実施(新規) 3.1億円

各都道府県において、居宅介護事業所等の介護職員等に対し、たんの吸引や経管栄養を適切に行うための研修を実施します。

※本研修については、各都道府県の実情等に応じて、地域活性化交付金(住民生活に光をそそぐ交付金)や障害者自立支援対策臨時特例交付金(福祉・介護人材の緊急的な確保を図る措置分)等の活用により実施することも可能です。

(参考)平成22年度補正予算

○介護職員等がたんの吸引等を行う体制の整備 0.9億円

在宅等において、医師・看護職員との連携・協力の下にたんの吸引等を行うことができる介護職員等の研修を行うための体制を整備します。(約235か所)

障害児支援

(9)障害児施設に係る給付費等の確保 712億円

障害のある児童に対して、知的障害児施設等の障害児施設において行う保護・訓練に係る経費を確保します。

(10)重症心身障害児(者)に対する支援の推進 35億円

在宅で暮らす重症心身障害児(者)への支援の充実を図るため、日常生活動作、運動機能等に係る訓練・指導等を行う重症心身障害児(者)通園事業の実施か所数の増を図ります。

また、巡回による訓練・指導を拡大することにより、より身近な地域で訓練・指導を受けられるようにするとともに、B型(既存施設利用型)利用者の送迎を支援します。

【実施か所数】 (平成22年度) (平成23年度予算案)
A型[標準利用人員15名、併設型] 64か所 → 64か所(+0か所)
B型[標準利用人員5名、既存施設利用型] 236か所 → 251か所(+15か所)

手当

(11)特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,404億円

特別児童扶養手当(1,017億円)、特別障害者手当(377億円)等に必要な経費を確保します。

精神障害者施策の推進

(12)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(訪問による支援)体制の確立(再掲・新規) 7億円

障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療者、治療を中断している重症の患者などへ、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、多職種チームによる訪問活動やこれらに従事する者への研修等を実施します。(25か所(定額補助))

(13)精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進 6.7億円

「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づき、都道府県等において、精神科病院の入院患者に対する退院促進に向けた啓発活動や対象者が退院に向けて行う準備への支援などを行う地域移行推進員の配置などにより、精神障害者の退院促進及び地域定着に向けた事業を実施します。

(14)認知行動療法の普及の推進 98百万円

うつ病の治療において有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を拡充します。

※認知行動療法:うつ病になりやすい考え方の偏りを、面接を通じて修正していく療法。

(参考)平成22年度補正予算

○うつ病に対する医療等の支援体制の強化 7.6億円

地域におけるうつ病に対する医療等の支援体制の充実のため、地域自殺対策緊急強化基金への積み増し等により、精神科医療に携わる医師、看護師、薬剤師等に対する研修や、かかりつけ医と精神科医の連携体制を強化する等の取組を促進します。

(15)精神科救急医療体制の整備 18億円

精神疾患をもった救急患者が地域で適切に救急医療を受けられるよう体制の充実に取り組むとともに、精神科救急医療施設における空床確保を進めることにより、精神科救急医療体制の整備を推進します。

(16)認知症医療体制の整備 3.7億円

地域で認知症の専門的医療を提供する認知症疾患医療センターにおいて、鑑別診断、専門医療相談、合併症対応、診療情報提供、介護との連携等を行うほか、認知症の周辺症状や身体合併症に対する双方の医療を担う中核的機能の整備等を推進します。

(17)地域における薬物等の依存症対策の推進 70百万円

薬物・アルコール依存症対策を推進するため、都道府県等が「依存症対策推進計画」を策定し、その計画に基づいた依存症対策事業を実施するとともに、依存症者の社会復帰支援を強化するため、関係者の資質向上を図ります。

心神喪失者等医療観察法関係

(18)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 207億円

1.医療観察法の医療提供体制の充実・強化 206億円

指定入院医療機関の整備に向けて、都道府県等による整備を促進するための取組みを推進するとともに、対象者の地域における継続的な医療の提供と社会復帰の促進を図ります。

2.円滑な社会復帰に重点を置いた医療観察法制度の適正な運用 20百万円

医療観察法に基づく対象者に対する質の高い医療的ケアを行い、円滑な社会復帰を促進するため、医療観察法医療の質を評価・検証するとともに、公平な審判に資するよう、精神鑑定の判定事例にかかる考察等を行います。

3.司法精神医療に携わる医療及び福祉職種の人材養成等 86百万円

増加する精神鑑定業務への対応と医療観察法に基づく対象者に対する質の高い医療的ケアを行うため、精神保健判定医や指定医療機関従事者、地域保健福祉職員等に対し、司法精神医学の教育、医療観察法に基づく鑑定ならびに医療処遇に関する各種の演習等を適切に実施することで、関係職種の育成と資質能力の向上を図ります。

3 発達障害者等支援施策の推進 7.8億円(7.5億円)

(1)発達障害者の地域支援体制の確立 2億円

自閉症や学習障害、注意欠陥多動性障害などの発達障害のある方や家族に、ライフステージを通じた一貫した支援体制の強化を図るため、都道府県、指定都市において、「ペアレントメンター」の養成とその活動をコーディネートする者の配置、「アセスメントツール」の導入を促進する研修会の実施等を行います。

※ペアレントメンター:発達障害者の子育て経験のある親であって、その経験を活かし、子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などへの相談にのったり、助言を行ったりする者。

※アセスメントツール:発達障害を早期発見し、その後の経過を評価するための確認票。

(2)発達障害者の支援手法の開発や普及啓発の着実な実施 3.9億円

発達障害者一人ひとりのニーズに対応する一貫した支援を行うことができるよう、先駆的な取組を通じて有効な支援手法を開発・確立するとともに、発達障害者支援に携わる専門的な人材の育成に取り組みます。

併せて、発達障害情報センターを設置する国立障害者リハビリテーションセンターの機能を活かし、発達障害に関する国内外の文献、研究成果等の情報を集積し発信するとともに、全国の発達障害者支援センターの中央拠点として、発達障害に対する理解の促進、発達障害者支援の普及・向上に関する総合的な支援を行います。

また、発達障害支援施策に関し、総合的かつ先駆的な取組を行う市町村を指定し、その内容をマニュアルやプログラムとしてとりまとめ情報発信することにより、全国的な取組の促進を図ります。

さらに、「世界自閉症啓発デー」(4月2日)を契機に、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るための普及啓発を行います。

(参考)平成22年度補正予算

○障害者自立支援対策臨時特例基金の積み増し 1.1億円

発達障害者に対する情報支援機器の普及を促進するため、基金の積み増しを行います。

(3)発達障害者等の支援のための巡回支援専門員の整備(新規) 1.6億円

発達障害等に関する知識を有する専門員が、保育所等の子どもやその親が集まる施設・場を巡回し、施設のスタッフや親に、障害の早期発見・早期対応のための助言を行う等の取組を実施する市町村(66か所)への支援を行います。

(4)高次脳機能障害者の支援体制の確立 26百万円

各都道府県が整備する支援拠点機関において、高次脳機能障害者やその家族に情報提供、相談業務等を行うとともに、ネットワークの強化により適切な診断、訓練、リハビリテーションが行えるよう体制の確立を図ります。

また、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、新たに「高次脳機能障害情報・支援センター」を設置し、全国連絡協議会、シンポジウム等の普及啓発活動や情報の収集・提供を行うとともに、都道府県の支援拠点機関に対する指導・助言を行うなど、中央拠点として総合的な支援を行います。

4 障害者に対する就労支援の推進 15億円(18億円)

(1)「工賃倍増5か年計画」の着実な推進 5億円

都道府県や事業所が行っている効果的な事業の促進及び複数の事業所による共同受注窓口組織の整備に対する補助を行います。

【国1/2、都道府県1/2】

  • 経営コンサルタントの派遣等による個別事業所の工賃引上げの促進
  • 事業所職員の人材育成に関する経費

【定額(10/10相当)】

  • 複数の事業所が協働して受注、品質管理等を行う「共同受注窓口組織」を整備するための事業(8か所(ブロックごとに1か所を想定))
  • 工賃引上げに積極的な事業所における好事例の紹介、説明会の実施
  • 事業者の経営意識の向上(未着手事業所への説明会)

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 10億円

障害者の就業面と生活面における一体的な支援を行う障害者就業・生活支援センターについて、設置か所数を拡充し、地域における障害者に対する就労支援体制の強化を図ります。

【設置か所数】

(平成22年度) (平成23年度予算案)
282か所 → 322か所(+40か所)

5 自殺・うつ病対策の推進13億円(5.2億円)

(1)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(訪問による支援)体制の確立(再掲・新規) 7億円

障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療者、治療を中断している重症の患者などへ、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、多職種チームによる訪問活動やこれらに従事する者への研修等を実施します。(25か所(定額補助))

(2)認知行動療法の普及の推進(再掲) 98百万円

うつ病の治療において有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を拡充します。

認知行動療法:うつ病になりやすい考え方の偏りを、面接を通じて修正していく療法。

(3)地域での効果的な自殺対策の推進と民間団体の取組支援、普及啓発の推進 4.0億円

都道府県・指定都市に設置されている「地域自殺予防情報センター」において、専門相談を実施するほか、関係機関のネットワーク化等によるうつ病対策、依存症対策等の精神保健的な取組を進めることにより自殺対策の向上を図ります。

また、自殺未遂者や自死遺族等へのケアに当たる人材を育成するための研修を行います。

さらに、先進的かつ効果的な自殺対策を行っている民間団体に支援を行うとともに、自殺との関連が強いとされるうつ病等の精神疾患について、ホームページ等を通じ広く国民各層への普及啓発を行います。

○地域自殺予防情報センターの充実・強化 1.3億円

「地域自殺予防情報センター」において、職域を含む関係機関のネットワークの強化を図るとともに、専門相談員による自殺未遂者・自殺者親族等に対する相談等を引き続き推進します。

○自殺対策に取組む民間団体への支援 1.1億円

先進的かつ効果的な自殺の防止等に関する活動を行っている民間団体に対し、支援を行います。

(4)自殺予防に向けた相談体制の充実と人材育成 91百万円

うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医、小児科医、ケースワーカーなどの地域で活動する方へのうつ病の基礎知識、診断、治療等に関する研修を行い、地域における各種相談機関と精神保健医療体制の連携強化を図ります。

(5)自殺予防総合対策センターにおける情報提供・調査研究等の推進

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター運営費交付金の内数

総合的な自殺対策を実施するため、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターに設置されている「自殺予防総合対策センター」において、自殺の実態を解明するための調査を行うとともに、国内外の情報収集・情報提供、関係団体等との連絡調整を行う。また、医療現場でパーソナリティー障害に対応する医師や地域におけるメンタルヘルスを担う心理職等への専門的な研修をはじめ自殺予防のための研修を実施します。

(参考)平成22年度補正予算

○うつ病に対する医療等の支援体制の強化 7.6億円

地域におけるうつ病に対する医療等の支援体制の充実のため、地域自殺対策緊急強化基金への積み増し等により、精神科医療に携わる医師、看護師、薬剤師等に対する研修や、かかりつけ医と精神科医の連携体制を強化する等の取組を促進します。