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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年8月号

インタビュー ロンドンパラリンピック・注目の選手、競技サポーター

陸上競技
土田和歌子(つちだわかこ)選手

1974年生まれ。高校2年の時事故に遭い、車いす生活に。1998年の長野パラリンピックのアイススレッジ競技で金2、銀2のメダルを獲得。2000年のシドニーパラリンピックからは陸上競技に絞り、日本人初の夏・冬パラリンピックで金メダリストとなった。サノフィ・アベンティス(株)所属。

1.陸上競技をはじめたきっかけは?

陸上競技は、1995年からアイススレッジの夏場のトレーニングのために取り入れました。陸上競技は世界で活躍する選手が多く、レベルの高いところで勝ちたいという気持ちが自然と湧き出てきました。それにアイススレッジは長野の大会の後、競技する選手が少ないということで次はないということでしたので、2年後のシドニーでは陸上へとスムーズにシフトすることができました。

2.普段の練習は?

週6日、トレーニングの時間にあてています。1日2部構成で午前と午後、それぞれ2時間半から3時間くらいです。内容はロードトレーニングと競技場でのトレーニング、それとウエイトトレーニングの3部構成です。1年間の中でマラソンを強化する期間、スピードを強化する期間というようにパズルのように組み合わせて計画的に行っています。

3.車椅子マラソンの魅力は?

スピード感にすごく魅力を感じますね。マラソンの場合、42.195キロを走る中にドラマがあって、それがゴールした時の爽快感につながってくると思います。それからトレーニングをしていく中で自分が変われる要素がたくさんあるんです。どのスポーツにもいえると思うのですが、私の場合は、自分を一番上手に表現できるものが陸上競技だと感じています。

4.競技の中で一番専門性を高めている種目は?

シドニーの時は4種目に出場したのですが、結果は最高が銅メダルでした。その時、金メダルを取るには専門性を高めていく必要があると感じました。それでアテネでは、5000メートルとフルマラソンに絞ったんですね。結果は、5000メートルで金メダル、フルマラソンでは銀メダルでした。それから北京で金メダルを取ることを目指していたのですが、5000メートルでクラッシュに巻き込まれて大けがをして、2種目とも棄権しました。それ以降、選手としてこのまま続けていくかどうか非常に悩んだ時期もありましたが、周りの人たちの理解と自分のやりたいという思いが一番強かったのですが、環境が整ってきたので次のロンドンに向けて体制を整えてやっているところです。

専門性というところでは、マラソンを一番に考えて取り組んでいます。マラソンに関しては、5000メートルのトレーニングはとても重要で、スピードの強化という点で相通じるところがあります。ただ、コンディショニングの面で両方をフルパフォーマンスで力を出せるかどうかというと難しいですね。そこをしっかり見極めてマラソンに結びつけていきたいと感じています。

5.車椅子マラソンの見どころは?

映像で見るのと生で見るのとでは、全くスピード感が違うと思うんですね。上り坂では止まっているように見えるだろうし、下り坂では一瞬のうちに過ぎ去ってしまいます。もちろん映像でもしっかり捉えて放映していただいている場合も多いのですが、実際に見てもらったほうが、より魅力を伝えられるのではないかと思いますね。

6.パラリンピックは土田さんにとってどんな存在ですか。

パラリンピックは、4年に一度の最高峰の大会で、オリンピックと同じように位置づけられている大会です。そこで金メダルを取りたいという気持ちが非常にあります。

最大限に努力するからだと思うのですが、次の目標が見つかる貴重な大会でもあると思います。4年間は一つのことをやろうと思うと長いですが、私はシドニーが終わって次の4年後の目標を設定しプランを考えて実行していくことがものすごく楽しくなりました。4年を使って自分を変えられるチャンスなのかなと思います。

7.モチベーションを維持し続ける秘訣は?

大会で勝つこともあるし、負けることもありますが、負けるというのが一つのモチベーションになったりするんです。やはり自分が勝ち続けたいとか、次はこの選手に勝ちたいという気持ちがあって、はじめて次のステップにいけると思うので、そういう気持ちを大事にしています。それから自分と同じように取り組んでいる選手や活躍している選手に勝ちたいと思うし、そういう選手たちの存在も自分を興奮させてくれる存在です。

8.ロンドンではどんな走りをしたいと考えていますか。

今までやってきたことの集大成として完成度の高いものが出せるのではないかという期待もあるので、(もし決まったら)そこをしっかりパフォーマンスとして出したいですね。

年齢的、体力的に大丈夫?と言われることもありますが、車椅子マラソンに関しては、選手の年齢層も高いんですよ。レースは自転車競技に近いものがあって、位置取りや牽制するうえでどんなレース運びをするかなど、経験もものをいう競技です。長く経験させていただいたものをいい形に変えて、しっかり出せるようにやっていきたいと思います。

9.特集テーマが「スポーツを楽しもう」です。土田さんから読者に伝えたいことは?

私は障害をもってから競技スポーツを知りました。医師の勧めがあり、また良い指導者の方とも知り合うことができて、競技のおもしろさを知ることができました。何がきっかけでステップアップできるかは人によってそれぞれ違うと思うのですが、人との出会いやつながりを大事にしていただきたいと思いますし、スポーツに限らず興味のあることは、まず始めてほしいと思います。

(取材:6月26日多摩障害者スポーツセンター 文責・編集部)