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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年3月号

行政の障害者支援

福島県における障がい者支援の現状と今後の対策

福島県保健福祉部障がい福祉課

被災状況

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに引き続く大津波は、1,933人の死者、56人の行方不明者、84,047棟の家屋の全・半壊(平成24年2月12日現在)や産業・交通・生活基盤の壊滅的被害など、浜通り地方を中心に県内全域に甚大な被害をもたらした。

本県をさらに困難な状況に追い込んだのは、その後発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故であり、自主的に避難している方も含めて15万人に及ぶ県民が県内外に避難し、そのうち福島県外に避難している方は6万人を超えた(平成23年12月25日現在)。

9町村については、全住民が県内外の地域に避難せざるを得なくなっており、うち、障がいの手帳を持っている人は、4,500人以上となっている。

また、障がい者施設については、原発事故当初、11施設が県外に避難し、現在も、2施設が県内に戻れない状況にある。

このような状況の中、福島県では、相談支援体制の充実強化や心のケアをはじめ各種事業の実施により被災した障がい者の支援に努めてきた。

相談支援

今回の震災の影響により、双葉郡内の町村においては、相談支援を委託していた指定相談支援事業所が避難を余儀なくされ、障がい者に対する支援体制が機能しなくなったことにより、家族等への負担が大きくなったり、相談先が無くなり困惑する障がい者が生じた。

このため、県では、双葉郡内に住んでいた障がい者を対象とした相談窓口を郡山市に設置し、避難先での家庭訪問や相談会等も実施することにより、障がい者、家族等に対する支援の充実・強化を図っている。

心のケア

精神科医、保健師、看護師、精神保健福祉士などの多職種で構成されている心のケアチームは、震災直後の3月19日より、県内全地域の避難所を巡回し、県立医科大学、県内各地域の医師会、精神保健福祉センター、県外から派遣された医療チームなどがJMAT(日本医師会災害医療支援チーム)などの医療チームと連携し、心のケアが必要な避難者に対し、医療や薬剤の提供および相談活動を行ってきた。

仮設住宅や借上げ住宅での生活が続く避難者は、将来への不安、健康不安、孤独感等さまざまなストレスを抱えることが予想される。

このため、仮設住宅を巡回している生活支援相談員や各市町村、健康支援チーム等とも連携し、効率的な訪問に努めるとともに心の健康教室等も取り入れ、効果的な心のケアに取り組んでいく。

また、国の3次補正で創設した心のケア人材確保ネットワークを活用し、他県から中長期的に専門職を受け入れ、心のケアに当たる「ふくしま心のケアセンター」を2月1日に開所した。

アウトリーチ推進

震災直後、相双地域においては、精神科病院5病院すべてが休止したため、入院できる精神科医療機関がなく、入院の必要な患者を県北および県中地域まで移送しなければならない状況にあった。

このような状況のなか、医師、看護師、精神保健福祉士、相談支援事業者、ピアサポータ―等によって構成される多職種支援チームにより訪問型支援を行う、いわゆるアウトリーチ推進事業を実施してきた。

今後は、県内外の医療機関に転院されている被災前の入院患者の帰還などを考慮し、医師等医療スタッフの確保など、医療体制の整備が必要であることから、医療機関や関係機関と協議しながら、その整備に努めていく。

子どもの発達支援

児童デイサービスについては、震災によりサービス提供を休止した事業所があり、障がい児に対するサービス提供が困難となる一方、避難先の市町村においては、定員超過により、適切なサービスを提供できない状況となった。

このため、相談から療育に至る一連のサービスを提供できるよう、障がい児の支援を専門に扱う県外の団体に業務を委託している。
また、被災した障がい児に対する医療支援では、早期に専門医による診察を受けられるよう、県外の専門団体等に専門医の派遣を要請し、被災地等において診察を行うことにより、家族等の負担軽減を図っている。

今後の対策

今回の災害は、これまでに経験したことのない未曽有のものであり、特に、放射線の影響による避難は長期間にわたる可能性が高い。避難している障がい者に対する支援が滞ることのないよう、きめ細かい支援体制を継続していくことが必要である。

そのため、今後とも、国、市町村、関係団体との連携を密にしながら、相談支援、心のケアやアウトリーチ推進など障がい者支援の事業を実施していく。

また、県内の拠点法人にコーディネーターを配置し、被災した障害福祉サービス事業所にアドバイザーを派遣することにより、1日でも早く適正な事業運営が図られるよう事業所を支援していく。