「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年3月号
平成24年度障害保健福祉部関係予算案
厚生労働省障害保健福祉部企画課
平成24年度障害保健福祉部関係予算については、障害があっても当たり前に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる社会を実現するため、良質な障害福祉サービスの確保や地域生活支援事業の着実な実施、精神障害者や発達障害者等への支援施策の推進等を図ることとしており、対前年度1,230億円、10.4%の増となる、1兆3,045億円を計上しています。
また、平成22年12月10日に公布された障害者自立支援法・児童福祉法等の一部改正法について、平成24年4月の施行に適切に対応するとともに、平成23年8月に提出された総合福祉部会の骨格提言を踏まえた支援策を推進することとしています。
平成24年度障害保健福祉関係予算(案)の主な内容は、次のとおりです。
1 障害保健福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害児・者支援の推進
1兆2,756億円(1兆1,543億円)
(1)良質な障害福祉サービス等の確保
7,434億円
障害者等が地域で暮らすために必要なホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づき、各市町村において着実な推進を図ります。
また、平成24年4月に障害福祉サービス費用(報酬)の改定を行い、これまで「障害者自立支援対策臨時特例基金」で実施していた「福祉・介護職員の処遇改善事業」や「通所サービス等利用促進事業」については報酬へ組み込み、事業の継続的な実施を確保し、障害者の地域生活の支援、障害福祉サービスの質の向上等の推進を図ります。
平成24年度障害保健福祉関係予算案の主要施策
【障害福祉サービスの確保及び報酬改定】 【7,434億円】
○障害者等が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスを計画的に確保する
○平成24年4月に+2.0%の障害福祉サービス費用(報酬)の改定を行い、福祉・介護職員の処遇改善、通所サービス等の送迎を含む障害者の地域生活の支援、障害福祉サービスの質の向上等を推進
【地域生活支援事業の着実な実施】 【450億円】
○移動支援やコミュニケーション支援等の着実な実施を図るとともに、相談支援体制の整備及び障害児支援の充実を図る
・移動支援やコミュニケーション支援等の着実な実施を図るとともに、地域での相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターの機能強化などの相談支援体制の整備や児童発達支援センターの地域支援機能の強化など障害児支援の充実を図る。
【障害児・者への福祉サービス提供体制の基盤整備】 【117億円】
○生活介護や就労継続支援等の「日中活動の場」の基盤整備や、グループホーム等の「住まいの場」の整備を推進
○基幹相談支援センターの設置促進や、児童発達支援センターの地域支援機能の強化・障害児入所施設の小規模グループによる療育などの障害児支援の充実を図るための整備を推進
○災害時に、障害福祉サービス事業所や障害児施設等に障害児・者の緊急受入が可能となる防災拠点等の整備を推進
(参考)障害福祉サービス費用(報酬)の改定について
障害福祉サービス等に係る報酬については、平成24年改定に向けて、客観性・透明性の向上を図りつつ検討を行うため、厚生労働省内に、平成23年11月、津田厚生労働大臣政務官を主査とする「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」(以下「検討チーム」という。)を設け、有識者の方にアドバイザーとして参画していただきながら、平成23年11月11日から平成24年1月13日までの計9回、公開の場で検討を重ね、その中で27の関係団体からヒアリングを実施しました。
平成24年度障害福祉サービス等報酬改定の改定率については、年末の予算編成において、介護報酬改定の考え方と整合を取り、福祉・介護職員の処遇改善の確保、物価の下落傾向等を踏まえ、+2.0%としたものであり、平成23年12月21日付けの厚生労働大臣と財務大臣間の合意文書に、こうした考え方に沿って、具体的な改定率が盛り込まれるとともに、「改定に当たっては、経営実態等も踏まえた効率化・重点化を進めつつ、障害者の地域移行や地域生活の支援を推進する方向で対応する」こととされました。
前記の合意等に沿って、「福祉・介護職員の処遇改善の確保と物価の動向等の反映」及び「障害児・者の地域移行・地域生活の支援と経営実態等を踏まえた効率化・重点化」の2つの基本的考え方の下で、第8回検討チーム(平成24年1月13日)において、改定の基本方針を取りまとめ、第9回検討チーム(平成24年1月31日)においては、個別報酬改定事項を取りまとめました。
障害福祉サービス予算推移
(拡大図・テキスト)
(注1) 平成18年度については、自立支援法施行前後の障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス関係予算(支援費、自立支援給付、地域生活支援事業等)を積み上げたものである。(自立支援法は平成18年一部施行、同年10月に完全施行)
(注2) 平成19年度~24年度については、自立支援法に基づく現行のサービス体系における予算(平成20年度補正後)である。
(2)地域生活支援事業の着実な実施
450億円
障害者等が地域で暮らすために必要な移動支援やコミュニケーション支援など地域生活を支援する事業の着実な実施や定着を図るとともに、地域生活へ移行するための支援や安心して地域で暮らすことができるよう児童発達支援センターの地域相談支援体制等の整備や成年後見制度の利用促進などの地域支援機能の充実を図るため、450億円を計上しています。
(3)障害者への良質かつ適切な医療の提供
2,057億円
心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供するため、2,057億円を計上しています。
(4)障害児・者への福祉サービス提供体制の基盤整備
117億円
障害児・者の地域移行・地域定着支援や就労支援の充実を図るため、生活介護や就労継続支援等の「日中活動の場」やグループホーム等の「住まいの場」の整備の推進を図るとともに、災害時に備え、事業所や施設に障害児・者の緊急受入が可能となる設備等を備えた防災拠点等の整備を推進します。
また、これまで社会福祉施設等施設整備費補助金で対象としてきた大規模修繕等、保護施設等の整備については、平成24年度からは地域自主戦略交付金(一括交付金)により対応することとしました。
これらの取組を推進するため、117億円を計上しています。
平成24年度予算(案)における社会福祉施設整備費の概要
平成23年度予算10,800,000千円 → 平成24年度予算(案)11,733,800千円
【要求枠:39億円】
障害児・者の地域移行・地域定着支援や就労支援の充実を図るため、生活介護や就労継続支援等の「日中活動の場」の基盤整備を推進するとともに、グループホーム等の「住まいの場」の整備を推進する。
【要望枠(「日本再生重点化措置」):22億円】
基幹相談支援センターの設置を促進するとともに、児童発達支援センターの地域支援機能の強化や障害児入所施設の小規模グループによる療育など障害児支援の充実を図るための整備を推進する。
【復興事業(仮称)特別会計 復旧・復興枠:45億円】
災害時に、障害福祉サービス事業所や障害児施設等に障害児・者の緊急受入が可能となる設備等を備えた防災拠点等の整備を推進するとともに、障害福祉サービス事業所(通所)の耐震化を図る。
【地域自主戦略交付金(内閣府に計上:11.3億円)】
これまで社会福祉施設等施設整備費補助金の整備対象としてきた大規模修繕等及び保護施設等の整備については、平成24年度から地域自主戦略交付金(一括交付金)により対応する。
※ 大規模修繕等:既存施設の1部改修や介護用リフト等の建物に固定して一体的に整備する工事。
(参考)【平成23年度第4次補正予算案】
○社会福祉施設整備等の追加財政措置 30億円
社会福祉施設等施設整備費補助金に係る各自治体からの整備計画に対応するための所要額を計上し、障害福祉サービス提供体制の基盤整備を促進する。
(5)障害者に係る手当の給付
1,511億円
特別児童扶養手当、特別障害者手当等について、直近の受給者を勘案し、必要な経費を確保します。
(6)障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進
4.2億円
平成24年10月の障害者虐待防止法の施行に向けて、都道府県や市町村で障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、4.2億円を計上し、地域の関係機関の協力体制の整備、家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施します。
また、新たに障害者虐待防止法における通報義務等の制度の周知を図り、支援体制を強化します。
(7)障害者程度区分の調査・検証(新規)
1億円
実態に即した公平・透明な支給決定が行われるよう、障害程度区分に関する調査・検証を行います。
(8)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業(新規)
22億円
重度障害者の訪問系サービス給付額が国庫負担基準を超えている財政力の弱い市町村に対し財政支援を行います。(従前は「障害者自立支援対策臨時特例基金」事業であったものを事業の継続性を確保するため、新たに補助金化し、22億円を計上しています。)
(9)障害児の発達支援に係る給付費等の確保
566億円
障害のある児童に対して、できるだけ身近な地域において、障害の特性に応じた療育等の支援を受けられるよう、それに係る経費を確保します。
(10)重症心身障害児者の地域生活モデル事業の実施(新規)
24百万円
重症心身障害児者やその家族への総合的な地域支援体制を整備するため、コーディネーターを配置し、障害の状況や個々のニーズ等を踏まえた効果的なサービス利用や関係機関等との連携のあり方等の総合的なモデル事業を実施します。
(11)障害者の社会参加の促進
27億円
視覚障害者に対する点字情報等の提供、現任研修の充実などの手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、芸術文化活動の振興等を支援し、障害者の社会参加の促進を図ります。
(12)障害者スポーツに対する総合的な推進
8.5億円
平成23年6月に成立したスポーツ基本法を踏まえ、ロンドンパラリンピック等の世界大会への日本選手団の派遣や強化合宿の実施などを推進することにより、障害者スポーツの振興を図るため、8.5億円を計上しています
2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進
273億円(245億円)
精神障害者の地域生活への移行を推進するため、273億円を計上しており、精神障害者やその家族が住み慣れた身近な地域で、医療や介護、社会復帰等の総合的な支援を受けることが出来るよう、アウトリーチ(訪問支援)や精神科救急医療体制等のさらなる充実・強化を図ります。
(1)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(訪問支援)体制の整備
7.9億円
障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療の人、治療を中断している重症患者などへ、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、他職種チームによる訪問活動やこれらに従事する人への研修等を実施します。
(2)精神科救急医療体制の充実・強化
20億円
精神疾患をもった救急患者が地域で適切に救急医療を受けられるよう、精神科救急医療施設における空床を確保する等、精神科救急医療体制の整備を推進するとともに、平成22年の精神保健福祉法の1部改正により、都道府県に法律上位置付けられた精神科救急医療体制整備の努力義務の下で、近年増加している自殺未遂者や身体疾患を合併する精神疾患患者にも対応できる精神科救急医療体制のさらなる充実・強化を図ります。
(3)精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進
3.3億円
「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づき、都道府県等において、精神科病院の入院患者に対する退院促進に向けた啓発活動や対象者が退院に向けて行う準備への支援などを行うことにより、精神障害者の退院促進及び地域定着へ向けた事業を実施します。
(4)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制整備の推進
235億円
心神喪失者等医療観察法を適切に施行するため、引き続き、指定入院医療機関の確保を図るとともに、医療従事者等の研修を行うなど、医療の提供体制の整備を推進します。
3 発達障害者等支援施策の推進
8.7億円(7.8億円)
発達障害者支援施策については、平成17年4月に施行された発達障害者支援法を踏まえ、発達障害者の支援手法の開発や発達障害支援に携わる人材の育成、地域支援体制の確立を推進するため、8.7億円を計上しています。
(1)発達障害者の支援手法の開発や支援に携わる人材の育成等
3.5億円
発達障害者一人ひとりのニーズに対応する一貫した支援を行うことが出来るよう先駆的な取組を通じて、発達障害者への有効な支援手法を開発・確立します。
また、国立障害者リハビリテーションセンター等で実施したこれまでのモデル事業の成果を踏まえ、家族短期入所及び訪問支援等を通じた発達障害児とその家族に対する支援プログラムの開発や発達障害支援に携わる人に対する研修を行います。
(2)発達障害者の地域支援体制の確立
2億円
都道府県・指定都市に置かれている発達障害者支援センターにおいて、発達障害のある人やその家族などに対して、相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供などを行います。
(3)発達障害の早期支援
2.7億円
発達障害等に関する知識を有する専門員が、保育所等を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言などの支援を行います。
4 障害者に対する就労支援の推進
15億円(15億円)
障害者に対する就労支援については、「工賃向上計画」の着実な推進や障害者就業・生活支援センター事業の推進を図るため、15億円を計上しています。
(1)「工賃向上計画」の着実な推進
4億円
工賃向上計画については、各都道府県におけるこれまでの「工賃倍増5か年計画」による取組を踏まえて見直しを行い、経営改善や商品開発、市場開拓などを中心とする新たな「工賃向上計画の策定(3年間)」を支援することで、就労継続支援B型事業所における安定的・継続的な作業を確保するなど、工賃引き上げに向けた取組の支援を行います。
(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進
11億円
「障害者就業・生活支援センター」において、就業に伴う日常生活面を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問などによる生活面の支援など実施します。
5 自殺・うつ病対策の推進
12億円(13億円)
自殺・うつ病施策については、平成19年6月に制定された「自殺総合対策大綱」を踏まえ、自殺予防に向けた人材養成や地域における先進的な取組などを推進するため、12億円を計上しています。
(1)認知行動療法の普及の推進
98百万円
うつ病の治療において有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を実施します。
(2)地域での効果的な自殺対策の推進と民間団体の取組支援、普及啓発の推進
3.2億円
都道府県・指定都市に設置されている「地域自殺予防情報センター」において、専門相談を実施するほか、関係機関のネットワーク化等によるうつ病対策、依存症対策等の精神保健的な取組を推進します。
また、地域における先進的かつ効果的な自殺の防止等に関する活動を実施している民間団体に対し支援を行います。
(3)自殺予防に向けた相談体制の整備と人材育成
40百万円
うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医やケースワーカーなど地域で活動する方に対して実践的な研修を実施します。