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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年6月号

私のコミュニケーション保障

盲ろう者と手話について

村岡美和

皆さんは、「あぁ、ソフトクリームを食べたいな~!」と思ったらどうしますか?すぐに、コンビニやスーパーへ買いに行くのではないでしょうか。そこにはさまざまな種類のアイスクリームが並び、どれにしようか、目で商品を確認しながら迷い、選ぶ楽しさがあると思います。

しかし、私は視覚に障害が生じてから、人の手を借りなければ自由に買い物に行けない不便さ、商品に関する情報が得られなければ商品を選べないというもどかしさがあります。時には、苛立ちや諦めざるを得ない現状が目の前に立ちはだかります。また、コミュニケーション面にも影響が及びました。

盲ろう者について

盲ろう者とは、目と耳の両方に障害のある人のことを言います。

日常生活においては、家族をはじめとする周囲の人とのコミュニケーションの難しさはもちろんのこと、新聞やテレビ、ラジオからの情報を自力では得られません。また、単独での外出が極めて困難です。そのため、外出や移動時の歩行支援とコミュニケーション支援の両方を得られる「通訳・介助員」の派遣という公的制度を受けて生活しています。

盲ろう者には、生まれつき目と耳の両方に障害のある人のほか、はじめは視覚障害で点字の読み書きにも習熟していたが、のちに何らかの原因(突発性難聴など)で耳も聞こえなくなった盲ろう者、手話を使ってコミュニケーションをしていたが、のちに視覚障害も併せもつことになった盲ろう者、事故や薬の影響などにより盲ろう者になった人などさまざまです。全国には約2万2千人の盲ろう者がいると推測されています。

通訳・介助員は、その場にいる人たちの会話の内容を盲ろう者に伝えるだけではなく、盲ろう者の言いたいことを相手に伝えたり、話し手や周囲の状況など言葉以外の情報も含めた総合的な情報保障を行うことが求められます。この通訳・介助員の存在があることで、盲ろう者のコミュニケーションの自由と移動外出時の自由が保障されます。

全国盲ろう者協会では、平成3年の創設時より、盲ろう者の社会参加を促進するために、通訳・介助員派遣制度を国などから補助金を受けることにより実施しました。平成18年障害者自立支援法の施行に伴い、全都道府県で派遣制度が設置できるように事業を移行しました。

盲ろう者と手話

盲ろう者には多様なコミュニケーション方法があります。その中の手話についてご紹介します。

盲ろう者の視力や視野が残されている場合は、「接近手話」や「弱視手話」を用いています。ただし、視野狭窄がある場合は、通訳・介助員は手話を顔の近くで小さく表すなど工夫が必要です。盲ろう者の見える範囲をはみ出しては、動いても気付くことができません。また、通訳・介助員の服装について、暗色系の無地にするなど配慮する場合があります。

もうひとつのコミュニケーション方法として「触手話(しょくしゅわ)」があります。盲ろう者の手を通訳・介助員の両手の上に置き、通訳・介助員の表す手話を盲ろう者が手のひらや指を触れることで内容を読み取ります。基本は、ろう者に向けて表現する「手話」の表し方と変わりません。

また、通訳・介助員は人の話している内容を伝えるだけではなく、盲ろう者からの発信(手話)をよくつかみ、日本語に置き換えてきちんと相手に伝えるという役割があります。周囲の様子などの状況説明も欠かせません。場に応じた通訳技術をしっかり身につけることが非常に重要です。その技術により、我々盲ろう者の生活の質が大きく左右されます。相手の様子(しぐさや動作)をそのままジェスチャーなどで伝えられると、相手のことをすべて知り得た面白さを味わうことができます。

通訳・介助員は耳の聞こえる人だけに限りません。ろう者や難聴者など障害のある方にも、ぜひ通訳・介助員として、盲ろう者と関わっていただきたいと願っています。

これからの願いは

盲ろう者が、いつでも制限なく通訳・介助のサポートを受けられるように、派遣制度がより一層充実したものになる必要があります。意思疎通ができ、安心して移動でき、好きな時にどこにでも外出できるようにしたいです。熟練した通訳・介助員は、いまだに多くはありません。これから人材育成に力を注ぎ、通訳・介助員を増やしていくことが大きな課題のひとつです。

(むらおかみわ 社会福祉法人全国盲ろう者協会)