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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年3月号

霞ヶ関BOX

障害者総合支援法について

厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室

地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成24年法律第51号。以下「平成24年整備法」という。)は、平成24年6月20日に成立し、同月27日に公布され、平成25年4月1日(サービスの見直しなど、施行に準備を要するものは、平成26年4月1日)から施行されることとなっています。

この法律によって、障害者自立支援法は、平成25年4月から障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)になります。

また、平成24年整備法では、このほか、地域社会での共生の実現に向けて、障害者や障害児に関する、身体障害者福祉法や児童福祉法などの法律の整備も行なっています。

なお、障害者総合支援法を含めた、障害福祉施策のこれまでの経緯については、表のとおりです。

平成18年4月 障害者自立支援法の施行(同年10月に完全施行)
12月 法の円滑な運営のための特別対策
(1.利用者負担の更なる軽減、2.事業者に対する激変緩和措置、3.新法移行のための経過措置)
平成19年12月 障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置
(1.利用者負担の見直し、2.事業者の経営基盤の強化、3.グループホーム等の整備促進)
平成20年12月 社会保障審議会障害者部会報告のとりまとめ
平成21年3月 「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」国会提出
→同年7月、衆議院の解散に伴い廃案
平成22年1月 障がい者制度改革推進会議において議論開始
4月 低所得者の障害福祉サービス及び補装具に係る利用者負担を無料化
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において議論開始
6月 「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(閣議決定)
12月 「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(議員立法)が成立
平成23年6月 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(議員立法)が成立
7月 「障害者基本法の一部を改正する法律」が成立
平成24年3月 「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」が閣議決定・国会提出
6月 同法律及び「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」(議員立法)が成立、公布

○障害者総合支援法の内容について

障害者自立支援法については、平成22年12月の「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」の成立により抜本的な見直しが行われたことや、平成24年整備法により法律の根幹となる基本理念が創設されたことなどにより、障害者総合支援法という新しい法律になっています。

この障害者総合支援法では、障害者自立支援法で定められていたサービスの利用手続、事業者の指定制度など、骨格について大きな変更が無い部分もあることから、障害者総合支援法で変わった部分および追加された主な部分について、以下で説明します。

図 題名・目的・理念拡大図・テキスト

(1)法律の目的・基本理念

障害者総合支援法の目的に、障害福祉サービスによる支援に限らず、地域生活支援事業その他の必要な支援を総合的に行うことを明記しました。また、新たに基本理念を創設し、障害者基本法に盛り込まれた、地域における共生社会の実現や障害者の社会参加の機会の確保、社会的障壁の除去などといった重要な考え方を、障害者総合支援法の理念としても規定しました。

(2)障害者の範囲

「制度の谷間」を埋めるべく、これまで三障害(身体障害、知的障害、精神障害)に限定されていた支援の対象に、新たに難病等の者(治療方法が確立していない疾病その他の特殊であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者)を加えることにしました。これにより、難病患者等で、症状の変動などにより身体障害者手帳の取得ができないが一定の障害がある方々が、新たに障害福祉サービス等を受けることが可能となります。

なお、「難病等」の具体的な範囲については、当面の措置として、「難病患者等居宅支援事業」の対象疾病と同じ範囲(難治性疾患克服研究事業〔臨床調査研究分野〕の対象疾患(130疾患)及び関節リウマチ)として施行することとしています。

(3)障害支援区分への見直し

「障害程度区分」については、知的障害、発達障害、精神障害の状態を適切に反映することができるよう、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示すこととし、「障害支援区分」と名称を変更しました。(平成26年4月施行)

(4)障害福祉サービスの見直し

重度の肢体不自由者に限定されていた重度訪問介護の対象を拡大することとしました。重度の知的障害者や精神障害者に拡大することを予定しています。また、障害者の高齢化・重度化が進むことを背景として、障害者の地域移行を進め、地域生活の基盤となる住まいの場の確保を促進する等の観点から、共同生活介護(ケアホーム)を共同生活援助(グループホーム)に一元化し、グループホームにおいて、日常生活上の相談に加えて、入浴、排せつまたは食事の介護その他の日常生活上の援助を提供できるようにしました。(平成26年4月施行)

(5)地域生活支援事業の追加と役割分担の見直し

地域生活支援事業は、地域における共生社会の実現に向けて、障害者等が自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、地域の特性や利用者の状況に応じ、実施主体である市町村等が柔軟な形態により事業を効果的・効率的に実施できる事業です。

今回、市町村の行う地域生活支援事業に、障害者に対する理解を深めるための研修・啓発、障害者やその家族、地域住民等が自発的に行う活動に対する支援、市民後見人等の人材の育成・活用を図るための研修、意思疎通支援(手話通訳、要約筆記等)を行う者の養成などを新たに追加しました。

また、市町村と都道府県の地域生活支援事業の役割分担を明確にするための見直しも行いました。

(6)基本指針・障害福祉計画の強化・見直し

サービス基盤の計画的整備をより実効あるものとするため、国は基本指針を策定または変更する際には、当事者やその家族などの関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるようにするとともに、いわゆるPDCAサイクルを導入し、障害者等の生活の実態等に応じた適切な見直しを行うことにしました。

また、障害福祉計画については、障害福祉サービスの提供体制の確保に係る目標とともに、地域生活支援事業の実施に関する事項を必ず定めることとしました。また、国の基本指針と同様の観点から、PDCAサイクルを導入し、定期的に計画について分析や評価を行い、必要に応じた計画の見直しを行うことにしました。

(7)検討規定

地域における共生社会の実現に向けて施策を段階的に講ずるため、法律の施行後3年(平成28年4月)を目途として、以下について検討することにしています。

1.常時介護を要する障害者等に関する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方

2.障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方

3.障害者の意思決定支援のあり方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方

4.手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方

5.精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方

※なお、前記の検討に当たっては、障害者やその家族その他の関係者の意見を反映させる措置を講ずるものとしています。