音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年3月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

「基本合意締結3年 これからのたたかい! 1・7集会」
―「落ちたところが登り口」みんなでつながって再出発!

秋保喜美子

2013年1月7日、参議院議員会館講堂で、障害者自立支援法違憲訴訟団(元原告、弁護団、勝利をめざす会)の主催による「基本合意締結3年 これからのたたかい! 1・7集会」が開催され、全国各地から750人がつどいました。

1月7日と言えば、厚生労働省講堂で自立支援法違憲訴訟団は国(厚労省)と基本合意文書を交わし、調印式が行われた記念すべき日です。

あれから3年の月日が経ちました。基本合意の実現を願い、新しく作る新法は「骨格提言」に沿った内容にしてほしい!と必死で訴え続けてきました。

しかし、その願いは叶わないまま、いつの間にか「障害者自立支援法の改正法」が出現。そして「障害者総合支援法」が新法として成立し、今年4月からスタートします。

「障害者総合支援法」は「自立支援法」の仕組みのままちょっと付け加えられただけで、「骨格提言」も取り入れられず「基本合意」もまだ何も実現していません。この厳しい現状をなかなか受け止めることができません。迷路で行き止まりにはめられたような辛さが続き、心も落ち込み気味で「これからどうしたらいいのか?」「基本合意はいつ実現するのか?」「みんなどんな思いでいるのだろう?」「また政権が変わったけど…」とさまざまな声が上がってきました。

1月7日は歴史に刻まれた記念日、「基本合意」をこれから実らせていくために、「みんなで思いや目標を確認しあい、前向きになれるようにパワーをつけよう!」と全国各地から意を決して参加した集会でした。

心にビンビン響くメッセージ

●主催者代表あいさつ…違憲訴訟の全国弁護団長竹下義樹弁護士

この集会で再確認しあいたいこと。3年前の1月7日に交わした「基本合意」は長妻大臣個人と交わしたのではなく、国家機関である国を代表した厚生労働大臣と結んだ! どんな政党になってもこのことは変わらない! 私たちはあくまでも「基本合意」に基づいて日本の障害者福祉が一歩でも二歩でも良くなることを願って裁判を終わらせた。「基本合意」に込められた願いは変わらない! どんな政党になっても「基本合意」は生きている。この「基本合意」に基づく運動は続く!

●連帯代表あいさつ…石野富志三郎聴覚障害者制度改革推進中央本部長

・この3年間、私たちはそれぞれのところで「基本合意を守るべきだ!」「自立支援法を廃止して新しい法律をつくろう!」と同じ考えで運動をやってきました。みなさん、力を合わせ、汗を流し、社会に向けて訴えがんばってきました。本当にそれは財産だと思います。この財産を生かして、今後も闘っていかなければならない。

・政権が代わって福祉が後退するのではないか!という声が聞かれます。そうではなく、この運動のパワーで乗り越えていける。大きな山を登る。一人では登れないがみんなで一歩一歩上がれば登れる。がんばろう!

●情勢報告1…藤井克徳勝利をめざす会世話人

「制度改革の到達点とこれからの運動のあり方について」

・10年前の1月7日、障害者のホームヘルパーの利用制限が公表されたことに抗議し、厚労省ロビーで1,000人集会が行われた。この頃から政策悪化がはじまった。

・2010年1月7日、訴訟原告、弁護団、めざす会の人たちが集まり、基本合意案を受け入れるか否か熱い議論を交わし、最後は一致し、その日の午後7時「基本合意」締結。「基本合意文書」はこの国の障害福祉の歴史を変える宝物。

・国連障害者権利条約と「基本合意」が新しい福祉スタイルを作るものになった。政府は国連障害者権利条約を批准しようとしたが、JDFは批准する前に国内法制を見直してほしいと要望し批准を見送った。そして、政権交代が起こり制度改革がスタート。

・障害者制度改革は5つの項目を進めてきた。

1.2010年6月、障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)

2.2010年12月、(障害者制度改革の推進のための第二次意見(障害者基本法の改正案への提言))

3.2011年8月、障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言

4.2012年9月、「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見

5.2012年12月、「障害者基本計画」に関する障害者政策委員会の意見(「基本合意」と「国連障害者権利条約」があったから日本で初めてできた)

・政治情勢はますます厳しい。制度改革の見通しも見えづらくなっている。今だからこそ高く掲げよう。☆国連障害者権利条約 ☆基本合意文書(運動によって輝きつづける)☆5つの意見書 ☆インチョン戦略。この8つの宝物を抱きしめて明日に向かっていこう。

・これからの運動のスローガンは「ぶれない こびない あきらめない」

・特に「ひとかたまりにまとまる」ことが一番大事。私たちの運動の真価が問われる。運動の培われた中にある言葉「落ちたところが登り口」。まとまる力を大きくしていく。そして伝える力をつけて、全国規模で、地域・地元で運動を拡げていこう。

●情勢報告2「違憲訴訟の到達点と課題」…藤岡毅弁護団事務局長

・障害のとらえ方…医学モデル→障害は治療と訓練で克服する(これまでの古い考え方)。障害者自立支援法の応益負担は障害への自己責任。これは憲法に反しているとし2008年10月31日、全国一斉提訴。2010年1月7日、基本合意締結。市町村民税非課税世帯は障害福祉施策(自立支援給付・補装具)が利用負担ゼロになった。違憲訴訟がなかったらできなかった。無償になった人数は福祉サービス41万人、補装具16万件。40万以上の人を救済した「基本合意」。制度改革の推進力になった。2012年6月、基本合意文書も骨格提言も取り入れず「障害者総合支援法」成立。課題山積している今、やるべきことはたくさんある。

●「弁護団意見書」解説…谷口太規弁護団弁護士

・国は自立支援法を廃止して「基本合意」と「骨格提言」に沿った障害者総合福祉法を作らなければならない。

・国は私たちと「基本合意文書」を取り交わし、全国14地裁で和解をし裁判を終わらせた。このことは法的な約束。障害者総合支援法という名前に変わっても自立支援法を廃止したことにはならない。

集会終了後、厚労省に「意見書」と「要請書」を提出に行き、定期協議をもってほしいと要望しました。

1・7集会では、各地裁の元原告からの発言が時間いっぱいまで続きました。参加者全員がこれからの運動をみんなで拡げて、障害者の人権が守られる「総合福祉法」をつくっていくんだという熱気があふれていました。

この集会で読み上げられた「アピール文」は、「基本合意」や「骨格提言」に沿った総合福祉法を実現するため、決してあきらめない! 「再提訴の決意も…」と障害者の生きる権利を守りたい願いが込められています。

最近のニュースから生活保護費の基準引き下げや消費税の引き上げ、憲法9条を変える動きなど、生活が脅かされることばかりが次々と出てくる中での私たちの運動の大変さは増すと思いますが、とっても大切な大仕事だと確信します。

とにかく、みんなでつながって、苦しみも楽しさも分かち合いながら、一歩一歩進んでいきましょう。

(あきやすきみこ 障害者自立支援法違憲訴訟元原告)