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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年11月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●マジックテープでおしゃれに、他●

提案者:松井恵子 イラスト:はんだみちこ

松井恵子(まついけいこ)さん

脳性マヒ、アテトーゼ型。大学時留学を経験。卒業後、自立生活を始める。CIL下関の立ち上げから関わり、運営委員・当事者スタッフとしてさまざまな活動を行う。現在は自立生活センター宇部で、バリアフリー化運動に力を入れ、また、ピアカウンセラーの立場から相談支援専門員として関わっている。宇部市在住。


マジックテープでおしゃれに

私はおしゃれに敏感。買い物に行くことも趣味で、動きやすく、着やすいものより、可愛くて、自分に合った服を選びます。しかし、実際には自分で脱ぎ着するのが難しいことがよくあります。特にトイレに行く時、ジーンズなどボタンを留めたりファスナーの上げ下げができません。介助者がいる時はいいのですが、一人の時は困ります。

そこで思いついたのが、マジックテープ。ジーンズのボタンを切り外し、重なる部分にマジックテープを張り合わせます。マジックテープと分からないように、ボタン穴の部分に飾りボタンを縫い付けたら出来上がり。後は、持ち手(スライダー)の先に細い紐を取り付け、ファスナーを引っ張りやすくします。ちょっと食べすぎたり、太ったりすると、お腹の辺りから「ベリベリ~」と怪しい音がするのがよいのやら悪いのやら…要注意です!


失敗しても自分で決めることを優先する

私は日常生活に介助が必要なため、一日の大半を介助者と過ごしています。自立してから何十人もの介助者と出会い・別れがあり、共に生活を送ってきた感じです。最初の頃は人間関係に悩み、お願いしたいことも言えず、顔色ばかり窺(うかが)って、一日が過ぎていくこともしばしばでした。時間と失敗を重ねながら少しずつ慣れてきましたが、介助者も十人十色でいろんな人がいます。

時に母親世代の人から「こうした方が絶対いいよ」「これ食べなさい」などと言われることも。“その方が楽かな”と思うこともありますが、自分の生活は自分で決めていきたい。だから、基本的な自分のスタンス・こだわりは持っておこうと思っています。

たとえば、毎日欠かせない料理。料理はやっぱり自分が食べたいものはもちろん、自分で作って失敗して上手になりたい。私は重度の障害をもっているので、包丁や火を使うのはもってのほか。そこで私は、介助者に細かな指示を出して調理することを徹底しています。材料選び・切り方・味付け・火加減…すべてを介助者に伝えて、作ります。それでできたものがたとえおいしくなくても私自身の失敗として、次につなげていきます。それが私にとっての生活の工夫です。


ドラム演奏の楽しみも工夫次第で

私の趣味の一つは、ドラム演奏。ドラムといえば、両手・両足を激しく動かし、リズムを刻みます。脳性マヒで体幹も安定してなく、不随意運動があるのにどうやって?とよく聞かれます。でも、やってみないと気が済まない私の性格。

体幹が安定してない私は丸椅子に座る時点で落ちそうになり、両手に持ったスティックはあちこちに飛んで行ったり、自分に当たったりしました。それでもあきらめられない私は、どうにかできる方法をいろいろ考えました。

丸椅子の代わりに、学生時代に使っていた座位保持椅子に座り、胸にベルトをして体幹を固定しました。不随意運動が強く常に動いてしまう左手は、左足腿に紐で縛り付け、手首だけ動かせるようにしました。紐でくい込んでしまわないように、長いリストバンドを装着。指先のない補装具をし、スティックを固定。そんな訳で、自由に動かせない左手はスネア(一番手前のよく叩く太鼓)担当。比較的、不随意運動が落ち着いている右手は、シンバル系や正面やサイドの太鼓を叩く。汗をかきながら思いっきり叩くドラムは、最高のストレス発散です。