「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年1月号
新春メッセージ
障害者権利条約の完全実施に向けて
日本障害フォーラム(JDF)代表 嵐谷安雄(あらしだにやすお)
国会における障害者権利条約の批准承認の第一報は、2013年12月4日、JDF全国フォーラムの開催中に届けられました。JDFは、設立当初から権利条約の推進に一貫して取り組んでおり、毎年の活動を総括する全国フォーラムの場でこの朗報を受け取ることは感慨深いものがあります。
JDFは、2002年から2006年まで8回にわたってニューヨークの国連本部で開かれた権利条約特別委員会に、延べ200人にわたる関係者を派遣し、ロビー活動やサイドイベントの開催を行うとともに、日本政府代表団にも顧問を派遣し、条約交渉に積極的に参画しました。2006年に国連総会で条約が採択されて以降は、日本が高いレベルでこの条約に批准できるよう、超党派による「国連障害者の権利条約推進議員連盟」とも連携しつつ、政府との意見交換や、障害者制度改革の推進に、民間の立場から取り組みました。そうしたなかで、2009年に、政府で条約批准への動きがありましたが、JDFは、条約のレベルに見合うよう国内法制度をまず整備すべきであるとの立場から、早すぎる批准を取りやめるよう要請しました。これらの活動は、「私たち抜きに私たちのことを決めてはならない」という条約の精神に基づいたものです。
なお、これまでの活動を支えていただいた企業財団からの継続的なご支援に、この場をお借りして心からの感謝を申しあげます。
障害者権利条約は、障害に関するとらえ方を根本から転換し、人権尊重および差別の禁止と、障害者の権利を確保するための国際的な基準です。この条約に批准することで、日本の障害者施策は新たなステージに入ったと言え、まずはこのことを歓迎したいと思います。
しかしながら、日本におけるこの条約は、完全実施に向けた取り組みという観点からは、いまだ産声を上げたばかりです。障害者総合支援法の検討規定、障害者差別解消法の施行などをはじめとする、国内の法制度の課題は多く残されています。また締約国として、批准2年後には国連への1回目の報告が義務づけられており、日本での取り組みは国際的にも問われることとなります。障害者権利委員会への日本人委員の推薦も求められます。市民への啓発も重要です。
条約という物差しを基に、障害によって分け隔てられることのない、誰もが住みやすい社会の実現に向けた活動を、今後とも進めていく決意です。