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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年1月号

1000字提言

スキーへの誘い

巴雅人

新年あけましておめでとうございます。

震災以来、3度目の正月を迎え、ここ仙台市若林区でも多くの方がまだ仮設住宅での冬を過ごしています。今年こそは、復興に弾みがつくことを願っています。

さて、今年はロシアのソチで冬季オリンピック(2月7日~23日)、パラリンピック(3月7日~16日)が開催されるのでとても楽しみにしています。

というのは、私の趣味がスキーだからですが、車いすで生活していますので“チェアスキー”でゲレンデを楽しんでいます。

チェアスキーは1本のスキー板の上に、ひざ代わりに衝撃を吸収するサスペンションを付け、その上にシートを取り付けた用具で、ストック代わりに先端に小さなスキー板が付いた“アウトリガー”を両手に持ち、座った状態で雪上を滑れる道具です。

私が初めてチェアスキーに出合ったのは1980年で、まだ“ソリ”に近いものでしたが、開発スタッフの「車いすでもスキーはできる!」という強い意志に共感し、「雪の多い東北地方にこそ普及させたい」と願い、1986年に“東北チェアスキークラブ”を設立し、以来仲間を募って練習し、講習会開催や大会参加の活動を行なってきました。

私はチェアスキーの普及活動を行なっていましたが、意外にも雪の降らない地方の障害者の方は、「面白そうだ」と積極的なのに対し、ここ東北の仲間は「雪上での移動は?駐車場からゲレンデは?トイレは?」など、雪の大変さを経験してるが故の、引っ込み思案に気づかされました。

また、修学旅行にスキー体験を取り入れている学校もあり、障害者が在籍している場合、チェアスキー講習やサポートで同行しました。その中でも横浜市のある高校生のことが思い出されます。対象の方は手や体幹の障害もあり、主に介助で利用する「バイスキー」という機種を使用しました。それでも、ゲレンデ上部から風を切って滑走してくる醍醐味は、他の生徒と同等に味わえたと思いますし、なにより最後に、リフト乗車中につぶやいた言葉が印象的でした。

「これで僕が家族で最初のスキーヤーになった!」

4人家族で今まで誰もスキーをしたことがないとのことでした。障害がある故に、家族内でも彼が率先してできるアクティビティはなかったと思うので、リフトに乗ってゲレンデを滑走した彼の経験は、家族の中で大きな自慢となったのに違いないし、生活の自信にもつながってくれたと信じています。

オリンピック開催の今年、皆さんもぜひゲレンデを疾走する爽快感を堪能してみてはいかがでしょうか。


【プロフィール】

ともえまさと。1954年生まれ。福祉用具関係の(有)車座社長。20歳で交通事故により脊髄損傷となり、以来、車いすを味方にする。チェアスキー普及や地域活性化のボランティアや、バリアフリー啓蒙のため講演なども行なっている。