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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

知的障害のある人たちのスポーツ活動推進の取り組み
~全日本IDバレーボール選手権大会~

平塚雄二

1 知的障害者のバレーボール

東京都で、知的障害のある人たちのバレーボールが競技としてスタートしたのは、昭和61年からである。今年度で29年目を迎える。

ルールについては、ネットの高さが、男子が2メートル30センチ、女子が2メートル15センチ(中学生男女の高さ)以外は、(公財)日本バレーボール協会の公式ルール(全国障害者スポーツ大会競技規則集)に基づいて実施している。

2 知的障害者のバレーボール大会の歴史

〈知的障害者に関係するバレーボール大会〉

1.東京都障害者スポーツ大会(旧ゆうあいピック)…現在延べ31回(新東京都障害者スポーツ大会は15回)

バレーボールが、東京ゆうあいピックの種目としてスタートしたのは、1986年(昭和61年)からで、今年で29年目である。

最初は、男子:3チーム(うち1チームは、この大会のために作ったチームでその後消滅した)、女子:4チーム(2校4チーム)でスタートした(東京と埼玉のみ)。26年度男子:7チーム、女子:7チームで大会を開催。

2.東京ゆうあいバレーボール大会(旧:種目別関東ゆうあいバレーボール大会、現在16回)

第1回大会は、平成11年8月に東京のチームのみ(男子:2チーム、女子:6チーム)の大会であった。第2回大会は、平成12年8月に他県チーム(横浜、茨城)を迎え(男子:4チーム、女子:10チーム)開催した。そして今年度、第16回大会を7月に男子:9チーム、女子:8チームで開催予定である。

3.全国障害者スポーツ大会(平成13年度から身体障害と知的障害が合体した大会)…現在14回

第1回大会(宮城)、第2回大会(高知)、第3回大会(静岡)、第4回大会(埼玉)、第5回大会(岡山)⇒平成26年度第14回大会(長崎)

4.全日本IDバレーボール選手権大会(旧FIDジャパンチャンピオンシップ大会)第1回~2回大会(横浜が事務局)、第3回~17回大会(東京が事務局)

育成会より委嘱を受け、担当して今年で18回目を迎える。

第3回大会:男子3チーム、女子5チームの参加(東京担当年度から)

第4回大会:男子5チーム、女子8チームの参加

第5回大会:男子11チーム、女子9チームの参加(232人)

第18回大会:男子15チーム、女子9チームの参加(234人)

*全日本IDバレーボール選手権大会もスタートし、バレーボールも他の競技と肩を並べる競技へと発展してきている。

5.その他の地区大会:九州地区や関東・関西地区で交流試合等が開催されている。

3 新しい大会を始めるために連盟を設立

〈日本IDバレーボール連盟の設立:平成14年8月〉

ここ数年、ID(知的障害者)競技スポーツの興隆は目覚ましく、行われている競技の幅も拡大の一途をたどり、スポーツに関わろうとする彼らにとって選択肢が広がり、豊かな余暇活動・活躍の場を広げていくことが可能となりつつある。今後は、さらに関わるスポーツの幅を広げるとともに、徐々に活発になってきたスポーツにおける国際交流に対応すべく競技の質を高める活動も展開されることが求められている。

そこで、より高いレベルでの競技を望む選手たちに応えるとともに、国際試合に対応することができるような選手の育成を図り、知的障害者スポーツのさらなる振興・発展を目指して、本大会を開催するものである。という趣旨のもと、日本IDバレーボール連盟が設立された。

今年度で18回目の大会を実施するが、本大会を経て、参加チームやバレーボールの競技人口は増えたものの、その競技団体の組織化や底辺の拡大・各団体が大会に参加するための条件(交通費・宿泊費等資金面)等は、まだ十分ではない。

また、平成13年度から全国障害者スポーツ大会は、身体障害者・知的障害者合同で開催されるようになった。出場を決める各ブロック予選会で優勝しても出場枠がすぐに与えられる状況になく、団体競技は、順番を決めての出場となる自治体も多い。

4 元全日本の選手を迎えての技術指導を実施

大会初日、準備運動を兼ねた元全日本選手による技術指導を実施している。

平成25年度は、元日立の古川千代子氏、26年度からは、古川千代子氏に加えて、元日本鋼管(現JFE)井上謙氏を迎える予定となっている。

参加した選手は、熱心に指導をしてくださる講師の期待に応えようと一つ一つ指導された内容を覚えようと努力しており、技術向上につながっている。監督やコーチも持ち帰り、練習時の指導に役立てている。

〈技術指導の内容〉

1.準備運動を兼ねた動き(トレーニング的動きも含む)

2.パス(基本となるオーバー・アンダーパス)

3.レシーブ(今後の練習につながるいくつかのパターンの指導)

4.アタック(レベルの差・男女差で2・3グループに分け指導)

5.サーブ(選手のレベルに応じた打ち方、手や足、体の使い方を指導)

大会開催だけではなく、全日本レベルの指導者を迎えての技術指導も併せて実施することで、高い技術をもっている選手の育成はもとより、バレーボールが好きで大会に出たいと思っている選手たちの希望もかなえられるように、生涯スポーツの観点をも含め、さらなる発展を考えていかなければならない状況にある。

5 今後の知的障害者のバレーボール

東京都の女子チームは、26年度全国障害者スポーツ大会で、11連覇を目指して長崎大会に臨む。また、男子チームは、この大会での優勝はまだない。今年度から新しいメンバーを加えて初優勝を目指すと張り切っている。

今後は、知的障害者のバレーボールも国内大会にとどまらず、アジア大会、ヨーロッパでの大会、パラリンピック等につながる可能性を秘めている。

また、国際交流に対応すべく競技の質を高める活動、意識の向上が求められている。そこで、より高いレベルでの競技を望む選手たちに応えるとともに、国際試合に対応することができるような選手の育成を図り、知的障害者スポーツのさらなる振興・発展を目指していきたい。

(ひらつかゆうじ 東京都立練馬特別支援学校校長)