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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

1000字提言

重症患者の実態調査にご協力を!

篠原三恵子

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の国際学会は、患者の4人に1人は、寝たきりに近いか、ほとんど家から出ることのできない重症患者であると発表している。日本においても同様の状況が危惧されるが、今まで重症患者の調査が行われたことはない。この病気の患者の中には、体力がなくて月1回の通院さえできない患者や、何年も経管栄養に頼り、家族との接触によってさえ体力を奪われ衰弱するため、ほとんどの時間を全く一人で過ごさざるをえないほど重症な患者もいる。もちろん外出には耐えられない。専門医の前には決して現れないので、彼らはその存在を知らない。

一般的に病気が重症になれば、入院して治療を受ければいいと思うだろう。だが、この病気には治療法もなく、病院でできることはほとんど何もない上に、患者は環境の変化により衰弱する可能性が大きい。ごく稀(まれ)にではあるが、誰にも知られることなく静かに息を引き取る患者もいる。

私は9年前から座位が保てなくなり、横になったまま移動できる車いすがなければ、外出できなくなった。その時点で身体障害者手帳を所持していたが、この病気の深刻さが認知されていなかったため、行政との交渉を粘り強く2年間続け、やっと必要な車いすが認められた。もしあの時、途中であきらめていれば、私は外に出ることもできずに、存在すら忘れられていただろう。もちろん、4年前に患者会を発足させることもなかった。

今年5月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が成立した。対象疾患には客観的な指標を含む診断基準が求められるが、この病気の診断基準は未(いま)だ作成中だ。それにもかかわらず、障害者総合支援法の対象疾患になることを求めて通常国会に請願をあげ、参議院で全会一致で採択された。4年前には病気としてさえ認められていなかったことを考えると、感無量である。

やっと要望が認められ、日本で初めての重症患者の実態調査が開始されようとしている。怠けていると思われてきたこの病気が、どんなに深刻なものであるかを明らかにすることができる。

問題は、通院もできない重症患者に、どうやって実態調査が行われることを知らせ、調査に参加してもらうかだ。今後ありとあらゆる手段を使って、このことを知らせていく必要がある。

今まで社会から孤立させられ、私たちの声は闇に葬られようとしてきた。深刻な実態を明らかにし、地域で尊厳を持って生きるために必要な福祉サービスを求めよう。人間らしさを取り戻すために。

一人でも多くの重症患者の方に名乗り出ていただき、実態調査に協力してほしい。


【プロフィール】

しのはらみえこ。1990年に発症。2010年に「慢性疲労症候群をともに考える会」を発足させ、2012年よりNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」理事長。NPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」 E-mail:cfsnon@gmail.com  TEL:03-6915-9281