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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年11月号

列島縦断ネットワーキング【京都】

きららでトライ、発見、分かち合い!

石川佳子

きららでつながろう きららでつなげよう

きららの会は、20代から40代の見えない・見えにくい仲間のネットワークです。京阪神を中心に近畿地方在住の仲間で活動しています。2001年11月、20~30代のRP(網膜色素変性症)患者により発足し、現在では、RP患者だけでなく、さまざまな眼の病気をもつ弱視・全盲の仲間と晴眼サポーター約100人が登録しています(2014年10月現在)。

見えない・見えにくいから悩んでいること、自分の見え方を周りの人に上手く伝えられなくて困っていること。晴眼者と見え方が違うことで、苦しんでいる人はたくさんいます。自分たちの問題について話し合える場所、それがきららの会です。仲間とつながることで仲間の一人ひとりが前向きに元気に生きていけるように…そんな思いをつないでいくこと、それがきららの会の目指すことです。

見えない・見えにくいからこそ顔の見える関わりが必要です。声掛けや手を取り合い、状況を説明する中で発見や理解が生まれます。リアルこそきらららしいつながりとし、年間10回程度の交流会やイベントを企画しています。

仲間と一緒にトライ!

学校生活、就労、恋愛、結婚、家事、子育て、スポーツ、レジャーなど視覚障害をもった若い世代が多様な場面でぶつかるハンディについて、仲間と一緒に話し合いながら、前向きに考え、「きららでならできるかも!」という企画にトライしています。

企画は、自分事がキーワード、きららはメンバーにとってのチャレンジフィールドでもあります。視覚障害ゆえの移動障害はつきものです。車でないと行けないところにこそ、きららで行ってみようという発想からバス企画が生まれ、山や湖での野外調理も楽しんでいます。

個性あふれる「見えない・見えにくい」からの発見

見えない・見えにくい、同世代という共通する条件の下でも、先天、中途、全盲、弱視と、個々の状況は多様です。また、弱視でも生活視力を有する人、白杖歩行する人、暗いところが苦手な人、視界が白濁している人、文字は読めるが物にぶつかりやすい人、歩くのは得意だけど、目の前の人がまったく見えない人、見えにくい状況もバラバラです。先天盲で、ものにぶつかる前に何かがあることを察知できる人もあれば、中途失明された方の中には、見えない事実に慣れることすら困難な方もおられ、見えない環境も多様です。

視覚以外の感覚、手や耳で判断できることにも個人差があります。進行性の疾患の場合には、見え方の変化に伴った障害受容が必要となり、白杖やガイドヘルパーの活用、音声ソフトの利用など、その受容時期には個人差があります。きららの交流を通して、周りに自分の困ることをどのように伝えればよいかを考えたり、自分より見えない人がどんな工夫をしているかを発見でき、自己受容へのヒントを得る機会にもなっています。

同世代ならではの分かち合いを拡げて

視覚障害の8割が50歳以上であることから、「本音で悩みを話せる同世代の仲間と、なかなか出会うことができなかった」という声をよく聞きます。病名告知後、将来に不安を抱えているなか、大学病院の視能訓練士さんからきららを紹介され、同世代の仲間と出会えたことで、新たな道を歩く今の自分につながったという人もいます。

また、ロービジョンケアや相談支援員からの連携できららにつながったという方も多くおられます。他団体や支援機関と連携し、情報だけでなく人と人をつなぐ活動に積極的に取り組んでいます。2011年より年1回、公益社団法人京都府視覚障害者協会青年部とのコラボ企画にて放送劇やピザ作り、陶芸、恋話企画など同世代ならではの交流の輪を拡げています。

カラーコーディネート講座は定番企画!

鏡で自分の姿が見えないと似合っているかどうか判断できないから、おしゃれに自信がない…でも、やっぱり自分らしいおしゃれをしたい!そんな熱き思いを持った参加者とカラーイメージアナリストの講師がサークルのように集う、サロン感覚のカラーコーディネート講座はきららの定番企画です。これまでに、基本講座、パーソナルカラー診断、顔立ち別襟元の形、アクセサリー、スカーフの巻き方講座、帽子選び講座、ヘアカラーとサングラス講座を実施しました。自分に似合う色や形を知ることで、買い物の際に自分からほしいものを提示できる、見えなくても自分で判断できるスキルが得られるのが魅力です。メイクや色彩心理、アイテム別講座、ファッション誌からのトレンド情報など、おしゃれに欲張りなきららメンバーから、続々と企画が生まれています。

仕事サロンへの参画

発足当初から、三療(あんま・はり・マッサージ)の仕事をされている方が多く、資格取得のための情報から就職後の情報まで分かち合うことができました。

一方、一般職のメンバーは少なかったため、公務員や民間企業で働く人同士での思いを共有することは困難でした。同様の状況が京都においてもあり、公益社団法人京都府視覚障害者協会職業部主催の仕事サロンの立ち上げから、きららの会は参画しています。一般職の人が集える場を作りたいという思いがマッチングし、2012年より年4回の仕事サロンを実施しています。きららの会を含む5つの団体が共催する仕事サロンは、3年目を迎え、きららメンバーからの参加も増えています。

また、仕事サロンをとおしてきららの会の活動を周知できたことで、入会者も増えています。就活中の20代から視力低下の中で継続就労に努力する30、40代のきららメンバーは、先輩後輩のように語らい、見える人の中で働くためのノウハウを共有しています。参加者からは「仕事サロンに毎回参加し、元気をもらっています。コミュニケーション力、周囲への気配りが大切と改めて感じました。それぞれの職場環境での独自の工夫や支援機器の使い方など、具体的なスキル情報もゲットできるのが魅力です」という声が届いています。

20代ならではのつながりの大切さ

発足当初、20代中心であったメンバーは現在、30代が中心になっています。私は、先天弱視でありながら、一切の支援や情報に出合うことなく、30歳まで過ごしました。きららと出合うまでは、見えにくい自分はいつも一人ぼっちでした。初めて同世代の見えない・見えにくい仲間がたくさんいるきららの交流会に参加した時、大きな衝撃を受けました。自分は一人じゃなかったんだということを知り、それだけで心が温かくなりました。そして、自分が辛いと感じていた暮らしの中のあらゆる出来事、見えないゆえの悔しさを、関西人ならではの陽気さで笑い飛ばす仲間の輪に、すっと入っていくことができました。

その日得た光と、心に拡がった温かい気持ちを、私は忘れることはありません。一人ぼっちじゃないを感じる体験は、20代という社会への入り口にいる人にこそ必要だと考えています。20代ならではの孤独や不安や焦燥感は、30代、40代のそれとは異なります。

「もっと早くきららと出合っていたら、かつての自分も、今の自分も違っていたかもしれない」という声を聴くたびに、若さゆえの苦悩や迷いや葛藤の渦の中にこそ、きららという居場所、情報につながるためのアンテナが必要なのだと感じています。20代ならではの分かち合いができること、それが豊かな30、40代へと生きる土台を育てることでしょう。今後一人でも多く、きらきら輝く20代の仲間とつながり、きらら世代ならではの活動を元気につないでいきたいと思います。

(いしかわよしこ 視覚障害者ネットワーク きららの会 京都地区リーダー)


☆きららの会URL:http://kilala.ciao.jp