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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年1月号

誰もが暮らしやすいまちづくりをすすめる条例の会仙台から見た“仙台市差別禁止条例(仮称)”の顛末報告

杉山裕信

誰もが暮らしやすいまちづくりをすすめる仙台連絡協議会(以下、条例の会仙台)は、2009年10月21日に活動を始め、7周年を迎えました。この間に東日本大震災があり、半年ほどの活動休止はありましたが、すぐ活動を再開しました。でも、活動を始めて4年ほどは、条例の会仙台は市民活動として、市民への啓発ということでセミナーやシンポジウム等を開催していました。

2013年7月29日に、条例の会仙台として奥山市長との懇話会が実現して、市長に「条例をつくります」と発言をしていただき、行政を巻き込んだ条例づくりが始まりました。

書きたいことは山ほどあります。正直ここには書ききれません。そこで私は考えました。仙台市では、条例を仙台市障害者施策推進協議会で議論しているのですが、その第1回(2014年6月25日)の協議の様子から、仙台市行政の当時の考え方や協議会委員の思いを知ってもらって、最後に今後について書きたいと思います。

第1回の会議の冒頭、奥山市長から仙台市障害者施策推進協議会に向けて諮問がありました。

奥山市長は、「ここ仙台市で、差別を解消し共生社会を実現させたい。障害者差別解消法に合わせて、仙台市としても自立と社会参加が大きく前進していくためにも、差別禁止条例をつくっていきたい。制定までの進め方は、いろいろな方法があるが、この差別禁止条例は、ただ制定されればよいというものではない。一般の方々を巻き込んで、より多くの市民や当事者の方々と共につくっていく“プロセス”が大切だと思っている。時間がかかっても、じっくり議論して、生活に活かせる条例をつくっていきたい。ぜひ、この協議会で皆さんのご意見を聞きたいので、どうか活発なご意見をお願い申し上げます」との発言があり、これを受けて、平成26年度の第1回仙台市障害者施策推進協議会がスタートしました。

議題内容は、下記の2つです。

(1)「(仮称)障害者の自立と社会参加を支援する条例」の制定について

(2)「第4期仙台市障害福祉計画」の策定について

事務局(仙台市)からは、添付資料に沿いながら説明がありました。条例制定に向けては、およそ1時間にわたり話し合われ、次のような活発な議論がなされました。

委員:「仙台市は、2016年4月制定の障害者差別解消法に合わせて、障害者差別禁止条例を制定したいと考えているようだが、なぜそのタイミングにこだわるのか。たとえば千葉県などの条例は、障害者差別解消法制定の前に制定されている。具体的な内容で、解消法制定後と制定前では条例のあり方は何か変わるのか。市長からも、条例制定までのプロセスが大切だという話があったが、制定はいつ頃と考えているのか。また、その時期は流動的に考えてよいのか、それとも決定なのか」

事務局:「ぜひ、差別解消法の施行の、2016年4月に合わせて、条例を制定したい」

委員:「仮称の“障害者の自立と社会参加を支援する条例”について、この委員会として、この名称では仮称でも中身がみえない。以前の会議でも意見が出たが、仮称自体が、このまま使われたら、これでは意味合いが違うと思っている。そもそも、私たち委員で仮称から検討できるものなのか」

事務局:「あくまで仮称名称についても、どういう名前にしたらよいか、検討していきたい。“(仮称)障害者の差別を解消する条例”でも、よいのではないかと考えている」

委員:「仮称の“障害者の自立と社会参加を支援する条例”について“支援”という言葉はおかしいと思う、せめて“推進”などにしてほしい。差別は障害当事者だけの問題ではなく、市民や社会の問題である。その他、このような抽象的な仮称では、差別事例収集やパブリックコメントを募集する際に、回答する側が条例の本質や目的がよく理解できないと思う」

事務局:「障害者は決して支援されるだけの立場ではない。ただ、現状を調査し把握することが大前提だと考えている。綺麗(きれい)な条例を形だけつくればよいとは、私たちは考えていない。現実をしっかりみて、そこから現実に即した条例をつくりたいと考えている。どういう名称がよいかも、皆さんにご意見を聞くが、現在の仮称ではなく“障害者の差別をなくす条例”という仮称でよいと思う」

このように第1回の協議の様子を書きましたが、この時に比べて委員の一人ひとり、条例の会仙台のメンバー一人ひとりが頑張って発言してくれたおかげで、障害者差別解消法を上回る条例ができそうです。2016年2月の仙台市議会に条例案が上程され、審議・可決・成立すれば、2016年4月から条例は施行されます。条例は使ってこそ意味があるのです。施行された暁にはどんどん使って、不備があればその都度行政に指摘して、条例の内容を充実させて“使える条例”にしていきたいと思います。

これからも障害者運動は続きます。いや、これからが本番です。詳しい活動を知りたい方は、ぜひ、事務局までご連絡ください。お待ちしております。

(すぎやまひろのぶ 条例の会仙台代表)