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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●デジタル化によって改善された生活の工夫●

提案者:黒岩堅 イラスト:はんだみちこ

黒岩堅(くろいわけん)さん

1970年生まれ。アスペルガ―障害。システムエンジニア。処理速度の遅さとワーキングメモリが小さいことによる苦労がある。発達障害者向けのWRAP(Wellness Recovery Action Plan:元気回復行動プラン)の制作と普及によって発達障害者のリカバリを目指す「トキオ(http://tokyo.asdj.org/)」代表。発達障害者の持つ特徴に適した就労方法や就労環境について模索中。


デジタル化によって改善された生活の工夫
物の管理の工夫

私には、他のことに気が向いた途端に、手に持っていた物を放してしまう傾向があります。物を放置したまま生活するうちに、1週間で新聞・雑誌、コンビニ袋、ゴミなどが床を覆い、それが何週分も積み重なっていきます。そのため図書館で借りた本が見つからず、買って返した数か月後に出てきました。未視聴のレンタルDVDも見つからず、5000円の延滞料金を支払ってからは怖くて借りられなくなりました。障害者手帳や運転免許証などが見つからなくて更新手続の期限が過ぎてしまうこともありました。

そこで電子書籍にしたところ本の管理がとても楽になりました。新聞・雑誌も解約し、自分の興味に合わせてカテゴリ登録できる「SmartNews」というWEBアプリを活用して、必要な情報を得ています。レンタルDVDも止めてネットの動画配信サイトを視聴しています。重要書類はデジタルスキャンしたものをネット上に保存することで探す手間がなくなり、必要に応じて印刷して使用しています。


デジタル化によって改善された生活の工夫
お金の管理の工夫

お金の管理も苦手です。毎月の使用金額を把握しないままクレジットカードで次々に購入し、後で驚くことが重なり、必要なものであっても高額商品は怖くて、クレジットカードでは買えなくなりました。また、銀行から現金を下ろし忘れて困ることもあれば、逆に多めに下ろした時に限って財布ごと落とし、悔しい思いをすることもありました。店で買い物をする際には値札を見間違えることが多く、支払う際に金額が違うので混乱し、イラついていました。また、店員に勧められるまま、必要ない物を購入してしまうこともありました。

そこで、なるべくSuicaのような電子マネーで支払うようにしたところ、銀行でお金を下ろす機会も減り、現金の管理からも解放されました。さらに、クラウド家計簿のWEBアプリを活用し、Suicaの他、連携しているネットショップでの買い物による利用履歴、銀行口座の残高、月収、証券会社の取引などをひとまとめにし、月々の収支がすべて自動で記録されるようにしました。導入当初は赤字が続くこともありましたが、最近は黒字を意識できています。買い物もネットショップであれば、値札の見間違えや店員の言いなりになる危険もなく、必要最低限のものを落ち着いて入手できるようになりました。


デジタル化によって改善された生活の工夫
外出移動の工夫

私には道に迷うととても不安になってしまう傾向もあります。以前は、迷った場合の対策として地図と多めのお金を用意し、1時間ほどの余裕をみて出かけていました。でも迷わず無事に着けば、自分が1時間待つことになるし、逆に2時間迷ってしまい、相手を1時間待たせたこともあります。迷っている間は、「本当に約束していたのか?」「嘘をつかれている?」とまで考えてしまいます。ようやく目的地に着いて人に会えても、落ち込んで疲れ果てて不機嫌になり、楽しめないことが多かったです。

また買い物の際も、うろ覚えの情報で店を探すために見つからず、何も買えずに帰ることもありました。今はGoogleMAPであらかじめ乗るべき電車や目的地までの移動時間を見積もり、「Googleストリートビュー」を使って目的地までの街の景色を写真で確認しておくことで、迷う回数は激減し、待ち合わせの10分前頃に現地に到着できるようになりました。


以上のような工夫をすることで、私は人よりも苦労している部分の負担を減らし、なんとか日常生活をやりくりしています。