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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年5月号

家族5人の笑顔で元気な旅

德田愛香

初めての家族3人での沖縄旅行

長女の莉子は1歳の時、初めての旅行中に突発性発疹による急性脳症になり生死をさまよいました。病気の後遺症で軽度発達遅滞と高次脳機能障害が残り、しばらくは旅行に行ける状態ではありませんでした。莉子が3歳になったとき、家族3人で沖縄へ。莉子にとっては、初めての飛行機、初めての広くて青い海。すべてが初めてづくしの旅でした。薬を用意したり、使い慣れたベビーカーやぬいぐるみを持参したり、ホテルで安心できるように毎日使っている枕を持参したりと自分なりに用意万端で出発した旅行でした。

しかし、空港を離陸直後、耳抜きができずパニックというまさかの事態に…。飛行機から降りたら治ること、大きく口をあけてみたり、ツバを飲み込むとよくなること、などを言い聞かせましたが、本人は不安でいっぱいで「痛い!痛い!」と泣き叫んでいました。

CAさんがたくさんの飴を持ってきて「これ舐(な)めるとよくなるから舐めてごらん?」と親切に対応してくださったおかげで、落ち着きを取り戻しました。初めての沖縄では、街にも海にも出かけましたが、このころの莉子は触覚過敏があり、砂浜を裸足で歩くことも、手に砂をのせることも苦手で、海に入るのもパパの抱っこ、いろいろな経験ができたのに、笑顔も涙も多い旅となりました。

島巡りの沖縄旅行

翌年の旅行では沖縄到着後すぐに、パパと莉子で出かけたホテル近くのビーチで地元のお兄さんたちに声をかけられ、初対面の人たちとBBQを満喫。翌日からは、地元のお兄さんたちに教えてもらったお勧めスポットを巡ることになりました。北部からフェリーで15分ほどの島に行き、本島とはまた違った白い砂が広がる海で遊びました。海では楽しみましたが、砂だけは克服できず、白い砂がついては泣いていました。

島での時間が魅力で、翌年の沖縄旅行は1週間の長旅にチャレンジ。毎日あちこちの島を巡ることにしました。無人島にはフェリーで近づき、途中からはゴムボートに乗り換えジェットスキーで引っ張ってもらい上陸。水も砂も苦手だった莉子は大分成長して、砂浜で遊び、浮き輪で浮けるようになりました。

弟、参戦!!!

次の沖縄旅行は、1歳半になる弟が初参戦!4人での家族旅行となりました。莉子も小学生になり、いろいろなことがだいぶ理解できるようになっていました。飛行機で耳が痛くなることに対しては、「降りてしばらく経つと治る」ということを、私に何度も確認することで自分なりに納得しようとしているようでした。海にもだいぶ慣れ、浮き輪を使えば一人でも海に浮いて楽しめるようになりました。

しかしこの頃になると、毎日数回、帰る日を確認するようになりました。どこに行っても楽しめるようになってきた反面、この非日常的な生活がいつまで続くのかが不安で、「明日帰る?」と何度も確認してきます。そこで簡易カレンダーを作成して家に帰る日を記し、終わった予定は線で消していくことで安心できたようです。

ホテルでは小学生向けのシーサー作りや、貝殻を使った置き物作りなど、夏休みの宿題に最適なプログラムがたくさんありました。モノづくりが苦手で普段はイライラしてしまう莉子も、ビーチにあるワークショップにテンションも急上昇!ガラス細工でできた海の生物や砂を並べ完成させました。好奇心旺盛な弟につられ、莉子なりにいつもよりいろいろなことに挑戦した旅行になりました。

しっかりお姉ちゃんをしてくれた5人での家族旅行

その次の旅行はなんともう1人!1歳になった妹を連れての家族5人での旅行です。弟も4歳になり、莉子も遊び仲間がいるようでとても楽しそうでした。この頃には砂も水も克服しましたが、小さな虫も苦手な莉子は、弟がシュノーケルやヤドカリを探している中、その様子を少し離れた所からうかがうだけで近づこうとはしませんでした。ただこの時期は、お姉ちゃんとしての意識が高まってきて、砂を嫌がる1歳の妹と優しく砂浜で遊んであげる姿も見られ成長を感じました。この年は、世界遺産の斎場御嶽(せーふぁうたき)でハイキングをしたり、神の島と言われる久高島(くだかじま)にも行き、たくさんの自然に触れることができました。

みんな大好き宮古島

ここ数年は、わが家のターゲットは沖縄より少し遠い宮古島へ!ひたすら海巡りをし、年々好奇心旺盛になる5歳の弟をみて、莉子も「自分もやってみよう!」といろいろなことにチャレンジするようになりました。

「また行きたいな!」と笑顔で言うようになり、そしてついに、翌年の宮古島では、水中バケツでニモを見るまでに成長しました!帰宅後お友達に「ニモ見つけたの!」と嬉(うれ)しそうに話す莉子をみて、幸せな気持ちになったのを覚えています。

旅は私たち家族を笑顔で元気にしてくれる1年に1回のご褒美です。これからも、普段見ることのできない景色や生物、たくさんの自然に触れ、楽しい思い出を作っていきたいです。

(とくだあいか ハイリハキッズ会員)