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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号

17の目標のうち障害関連のターゲット

ゴール11:持続可能な都市と地域社会

髙橋儀平

はじめに

ゴール11は包括的かつ持続的な都市、まちのインフラ整備が課題である。バリアフリー、ユニバーサルデザイン先進国といわれる日本であるが、法制度の改正を含めて2030年に向けた課題は山積している。以下、主な論点整理と若干の展望を述べる。

1 すべての人にとっての低廉な住宅確保と安全安心な住生活

障害者世帯にとって低廉で良質な公的住宅確保は、いま日本で最も遅れている住政策の一つといえる。高齢化の波は急激であり、自立しようとする障害者の住まい問題が後手後手に回っている。障害者の住宅改修制度もこの10年ほとんど進展していない。10数年後には、公的住宅の過半をアクセシビリティ化し、安全安心の住生活が実現していなければならない。

2 総合的なまちと個別ニーズに対応した公共交通機関

2000年に制度化されたバリアフリー基本構想は、法制化から16年間で17%の自治体しか策定していない。バリアフリー基本構想制度のメリットは、当事者参加と日常生活圏域での一体的なバリアフリー化にある。今後の10年で、少なくとも50%を超える自治体の制度化を期待したい。

3 世界遺産とアクセシビリティ

誰もが公平に観光地を移動し、自然、文化遺産をしっかりと保全し継承する責務がある。東京2020オリパラには世界中から多くの観光客が押し寄せる。年齢、国籍、障害を越えて世界遺産の価値を共有することは人類共通の義務であり、世界遺産のバリアフリー化は、豊かさの選択、移動の自由、多様な共生社会づくりに直結する。

4 安全安心なまちづくりと総合的な防災

強靭な都市、まちの構築は私たちの使命である。2030年までには緊急時の避難誘導の仕組みが完成され、良質で多様な家族構成、アクセシブルなニーズに対応する仮設住宅が確保され、精神障害者をはじめ誰もが安心して一時避難できるコミュニティの仕組みが形成されていなければならない。加えて住宅のサスティナビリティの視点では、仮設から恒設住宅に段階的に移行できる多様な地域居住が実現していることを期待したい。

(たかはしぎへい 東洋大学教授)