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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号

哀悼

編集委員花田春兆氏、ご逝去

長年、本誌編集委員として多大なご貢献をいただいた花田春兆氏が、5月13日、91歳でお亡くなりになられた。ご逝去の知らせは朝日新聞、毎日新聞等に、掲載され、5月19日のお通夜、20日の告別式には、2日間で約250人の会葬者があり、車椅子に乗った障害のある方々も大勢つめかけて最後の別れを惜しんだ。

私たちは春兆先生といつもお呼びしていたので、ここからは春兆先生と書かせていただく。

春兆先生は本誌にはなくてはならない存在だった。1995年10月号から以前の「障害者の福祉」という月刊誌から、名称を新たに「ノーマライゼーション」として内容の刷新を行い、リニューアルの1995年10月号から「うたの森」(1ページ)が連載で始まった。カラーグラビアの隣で、本誌の顔を務めた。全国の障害のある方の、「詩」「短歌」「俳句」「エッセイ」などを毎月紹介し、その解説を書き続けられた。

有名な俳人、著作家としての他に、春兆先生は優れた名編集者であったことを伺わせるのが、「うたの森」をはじめとする次の定番コーナーである。春兆先生があったからこその企画であり、他誌にはない、名物?コーナーであったと自負している。執筆者は有名人から無名の新人まで、どこからどうしたらこんな執筆者を捜し、手配できるのか、アンテナを高く掲げ感度よくキャッチした春兆先生の奥深い知見には驚くばかりであった。まさに春兆先生無くしてこのいずれのコーナーも存続できなかったことは、担当していてわかるが事実である。

「うたの森」は、その後『鬼が笑う 月が泣く』(角川学芸出版、2010年)として1冊にまとめられた。「文学に見る障害者像」は1995年10月号から2012年6月号まで連載された。そして、2012年9月号から2016年12月号までは「文学に見る障害者像」に代わる定番の連載として、「文学やアートにおける日本の文化史」が始まった。どちらも途中休載月はあっても、春兆先生は長く二つの連載を実行されていた。誠に感謝の念に堪えない。勿論、本誌以外でも連載を抱えていたことは付け加えておかねばならない。

いずれも春兆先生の名編集者としての冴え渡る技量がなければできなかったコーナーだった。編集委員会でも、特集に関して、独自の意見をしっかりと述べられ、特に昨今の社会の空気を感じとられ、戦争と障害者の問題、介護保険と障害者の問題、を取り上げる提案をされたり、アートや春兆先生の大好きな「食について」は施設内で提供される食事と関連づけて提案されるなど、いつも現場目線で意見を述べられていた。

常に教わることが多く、もう春兆先生からこういうお話を聞くことができない寂しさは、じんわりこれからやってくるのだろう。

これまでのご恩に深く感謝を申し上げ、謹んで心より哀悼の意を表します。

春兆先生、ゆっくりゆっくりお休みください。ありがとうございました。

ノーマライゼーション「編集部」