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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年3月号

災害と障害者
~「アジア太平洋障害者の十年」後半の課題と展望

野際紗綾子

「アジア太平洋地域における災害時の障害者の死亡率は全体の死亡率の2~4倍」。2017年11月27日(月)~12月1日(金)の期間、中国・北京で開催された国連ESCAPのハイレベル政府間会合(以下、北京会議)で報告された数字だ。

2011年3月の東日本大震災で問題視された障害者の死亡率が、日本だけの課題ではなくアジア太平洋地域の課題として捉えられたのは一定の成果であろう。同時に、インチョン戦略の7番目の目標である災害対策が、5年経った今、果たしてどこまで履行されたのか。残念ながら課題は山積しているのが現状だ。

高い死亡率が報告されている中で、たとえ助かったとしてもその後の避難生活が困難であったのも、大きく改善されていない課題だ。2016年5月の熊本地震や2017年7月の北九州豪雨災害においても、仮設住宅はバリアフリーでなく、避難所には福祉スペースがなかった。インチョン戦略の目標7「災害の準備および対応に障害の視点のインクルージョンを保障すること」やターゲット7-1「避難から生活再建、さらに被災後のカウンセリングまでの過程全体を網羅し、障害をインクルーシブにする災害準備および対応の計画を設定する。」はどこにいったのか。こうした状況に鑑(かんが)み、北京会議のサイドイベントにおいて、災害と障害者の観点から発言する機会をいただいた。アジア太平洋における政策やガイドラインを実施し、すべてのプロセスが障害インクルーシブであることを、各国政府と市民組織に強く要請した。発言内容の全文(日本語・英語)は当会のホームページを参照されたい。

当会では、2017年度は、平時からの活動として、防災関連イベントの企画・参加や勉強会における講演や執筆を行なってきたが、会内では災害時の緊急支援活動や障害分野の活動の質の向上と標準化を進めていきつつ、政府機関への政策提言に加え、国内外における啓発活動も欠かすことができないと考えている。

これから私たちにできることは何か。2019年には第4回アジア太平洋CBR会議がモンゴルで開催され、さまざまな観点から障害についての議論が進むだろう。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、人々の大きな注目を浴びるだろう。これらの機会を国内外で活かしながら、平時からの活動に邁進していくことが求められる。障害の有無にかかわらず、すべての人にとってやさしい、災害に強靭な世界を創ることを目指して。

(のぎわさやこ AAR Japanプログラム・マネージャー)