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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年3月号

アジア太平洋地域独自のニーズに着目した活動の必要性

寺島彰

アジア太平洋障害者の十年も第3次になり、第1次と比べるとアジア太平洋地域を取り巻く国際的な状況もアジア太平洋地域内自体の状況も大きく変化した。

国際的な状況では、障害者権利条約が発効し、批准した国々は障害者権利委員会による審査を受けるようになることで、加盟各国の関心が高まり、障害者の権利実現の取り組みが世界的規模で展開されるようになった。

また、持続可能な開発目標(SDGs)に障害関連の内容が組み込まれたことにより、障害者問題は、開発という大きな枠組みの中で、しかも世界規模で取り上げられるようになった。

その結果、アジア太平洋障害者の十年はかなり存在感をなくしており、アジア太平洋の国々でも、インチョン戦略よりもSDGsの方に関心が向いているようである。わが国も同様で、日本政府は、ピコ太郎まで使ってSDGsをアピールしたが、インチョン戦略を取り上げることはない。アジア太平洋障害者の十年を宣言している国連経済社会委員会(ESCAP)でさえ、インチョン戦略はSDGsを補完するという見解を示している。

しかし、これではアジア太平洋地域での取り組みとしては、残念である。アジア太平洋地域内に着目した独自の視点による活動が求められている。

アジア太平洋地域での一般的な国際交流は、非常に盛んに行われている。たとえば、わが国を訪問する外国人観光客は毎年増えているが、特にアジア太平洋地域からの観光客が増加している。

また、わが国の少子高齢化による労働力不足を補うため、労働市場は外国人労働者なしには成り立たないようになっている。日本製品の生産を外国で行うことはかなり前から行われていることは周知のことである。わが国を含むアジア太平洋地域の経済交流や人的交流は積極的に行われているのである。一方で、北朝鮮の問題や慰安婦問題、領土問題など、マイナスの交流も増えている。

このような一般の状況を踏まえ、新たな視点から地域のニーズをとらえ、第3次アジア太平洋障害者の十年の後半の活動を展開する必要があると考える。

(てらしまあきら JDF国際委員長、日本障害者リハビリテーション協会参与)