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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年3月号

平成30年度障害保健福祉関係予算(案)について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

平成30年度障害保健福祉関係予算案については、対前年度6.6%増の1兆8,648億円を計上している。予算案の主な内容は、次のとおりである。

1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 1兆8,419億円(1兆7,260億円)

○障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等

(1)良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保

1.障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保1兆3,317億円(1兆2,168億円)
うち障害児支援関係 2,320億円(1,778億円)

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。

2.障害福祉サービス等報酬改定

(改定率) +0.47% (平成27年度 ±0%)

報酬改定については、障害者の重度化・高齢化への対応、医療的ケア児への支援や就労支援サービスの質の向上などの課題に対応し、また、「自立生活援助」など法改正により創設された新サービスの報酬を設定することなどを総合的に勘案。

なお、食事提供体制加算(経過措置)については、食事の提供に関する実態等について調査・研究を十分に行なった上で、今後の報酬改定において対応を検討することとし、今回の改定では継続する。

(2)地域生活支援事業等の拡充【一部新規】 493億円(488億円)

意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。また、地域生活支援事業に含まれる事業やその他の補助事業のうち、国として促進すべき事業について、「地域生活支援促進事業」として位置付け、質の高い事業実施を図る。

(3)障害福祉サービス提供体制の整備(社会福祉施設等施設整備費) 72億円(71億円)

障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進するとともに、防災体制等の強化を推進する。

さらに、長期入院精神障害者の地域移行を進める観点からも、グループホームの設置を一層推進する。

(参考)【平成29年度補正予算案】

○社会福祉施設の耐震化・防災対策等 80億円

障害者支援施設等の耐震化やスプリンクラーの設置、グループホームの整備等に必要な経費を補助する。

(4)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2,452億円(2,467億円)

自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)や障害児入所施設等を利用する者に対する医療を提供する。また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。

(5)特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,637億円(1,619億円)

(6)障害児・障害者虐待防止、権利擁護などに関する総合的な施策の推進

1.障害者虐待防止の推進 地域生活支援事業等(493億円)の内数

虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、地域の関係機関の協力体制の整備、家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施するとともに、虐待の通報義務等の制度の周知を図り、支援体制の強化を図る。

2.障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 14百万円(14百万円)

国において、各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。

3.成年後見制度の利用促進のための体制整備 地域生活支援事業等(493億円)の内数

成年後見制度の利用に要する費用の補助や法人後見に対する支援等を行うことにより、成年後見制度の利用促進を図る。

(7)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 10億円(11億円)

重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行うとともに、従前額保障の廃止に伴う超過負担の増加に対して、経過措置として財政支援を行う。

(8)強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成 地域生活支援事業等(493億円)の内数

都道府県による強度行動障害支援者養成研修(基礎研修及び実践研修)を実施する。

(9)医療的ケア児に対する支援【一部新規】 1.8億円(24百万円)

保育所等の利用を促進するモデル事業を実施するとともに、外出先でも適切な医療を受けられる体制の整備を図る。

このほか、障害福祉サービス等報酬改定において、医療的ケア児の受入れを促進するため、障害児通所支援事業所等における看護職員を加配している場合の加算の創設等を行う。

(10)共生社会の実現に向けた取組の推進

1.「心のバリアフリー」を広める取組の推進 地域生活支援事業等(493億円)の内数

さまざまな心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合う「心のバリアフリー」を広めるための取組を推進する。

2.障害福祉従事者等に対する共生社会の基本理念の普及啓発【新規】9百万円

改めて共生社会の基本理念等を学び、それを実践につなげていくことを目的とした研修を実施する。

(11)主任相談支援専門員(仮称)の養成等【新規】 14百万円

主任相談支援専門員(仮称)を養成するための研修を実施するとともに、主な配置先となる基幹相談支援センターの設置促進を図るための方策の検討等を行う。

(12)重度訪問介護利用者の大学等の修学支援【新規】 地域生活支援事業等(493億円)の内数

大学等に修学するに当たって必要な身体介護等を、大学等における支援体制が構築されるまでの間において提供する。

(13)障害者施策に関する調査・研究の推進 4億円(55百万円)

○障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等

(1)芸術文化活動の支援の推進 2.8億円(2.5億円)(うち地域生活支援事業等71百万円(45百万円)ほか)

芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加を一層推進するため、芸術文化活動を支援(相談、研修、ネットワークづくり等)する仕組みを全国に展開するとともに、全国障害者芸術・文化祭開催県にコーディネーターを配置し、各地域でのサテライト開催との連携促進を図る。

(2)障害者自立支援機器の開発の促進【一部新規】 1.5億円(1.6億円)

多様な障害者のニーズを的確にとらえた障害者自立支援機器などの開発(実用的製品化)の促進を図るとともに、導入好事例の展開による実用的製品の普及促進を行う。

(3)障害児・障害者の社会参加の促進 28億円(26億円)

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、盲ろう者向け通訳・介助員養成の支援や電話リレーサービスの実施等により、社会参加の促進を図る。

(4)失語症者向け意思疎通支援者の養成【新規】 地域生活支援事業等(493億円)の内数

「失語症者向け意思疎通支援者養成研修」を創設し、全国での失語症者向け意思疎通支援者の養成を図る。

障害福祉サービス等予算の推移
図 障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 212億円(203億円)(※地域生活支援事業計上分を除く)

(1)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】 5.6億円(2.3億円)(うち地域生活支援事業等5.2億円ほか)

障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、都道府県等と精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する精神障害者を医療へつなげるための支援等を行うアウトリーチ活動や仲間の立場で支援しあうピアサポート活動等の取組を推進する。

(2)精神科救急医療体制の整備 17億円(16億円)

(3)災害時心のケア支援体制の整備 62百万円(53百万円)及び地域生活支援事業等(493億円)の内数

災害時の危機管理体制を整備するとともに、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動能力を高める専門家人材の育成を行う。

また、災害などを通じて生ずるPTSD(心的外傷後ストレス障害)などに対する精神保健活動の充実に資する取組を推進する。

(4)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 180億円(177億円)

指定入院医療機関の地域偏在の解消など医療提供体制を引き続き整備するとともに、入院対象者の安全確保のために、スプリンクラーの整備を行う。

また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や技術交流等により更なる医療の質の向上を図る。

(5)てんかんの地域診療連携体制の整備 7百万円(8百万円)

(6)摂食障害治療体制の整備 10百万円(11百万円)

(7)相談支援事業所等(地域援助事業者)における退院支援体制確保 地域生活支援事業等(493億円)の内数

(8)意思決定支援等を行う者に対する研修の実施【新規】 5百万円

相談支援事業所に所属する相談支援専門員(アドボケーター)が、非同意入院患者のいる病院を訪問し、退院に向けた意思決定支援などの援助等を行うための人材養成を行う。

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 4.1億円(2.1億円)(※地域生活支援事業計上分を除く)

(1)発達障害児・発達障害者とその家族に対する支援【新規】 地域生活支援事業等(493億円)のうち1.3億円

発達障害児者の家族同士の支援を推進するため、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポート等の支援を充実させ、家族だけでなく本人の生活の質の向上を図るとともに、身近な支援を実施するため対象自治体を市区町村まで拡大する。

(2)発達障害の診療を行う医師等の養成【新規】 地域生活支援事業等(493億円)のうち1億円

発達障害の医療ネットワークを構築し、発達障害の診療・支援ができる医師の養成を行うための研修等を実施し、専門的医療機関の確保を図る。

(3)発達障害に関する理解促進及び支援手法の開発 1.4億円(1.6億円)

国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信し、支援手法の普及や国民の理解の促進を図る。さらに、発達障害者支援センター等が抱える困難事例の支援に係るブロック研修等を行う。

また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日) などを通じて発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発等を行う。

4 障害者に対する就労支援の推進 12億円(11億円)(※地域生活支援事業計上分を一部除く)

(1)工賃向上等のための取組の推進 地域生活支援事業等(493億円)のうち90百万円(1.1億円)

就労継続支援B型事業所などに対し、経営改善や商品開発、市場開拓等に対する支援を行うとともに、ICTを活用した就業支援体制の構築に向けたモデル事業を実施する。

また、共同受注窓口関係者による協議体を設置し、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進し、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図る。

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 地域生活支援事業等(493億円)のうち8.2億円(8.2億円)

就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。

また、障害者の能力に応じた就労の場に移行できるようにするための支援を行う。

(3)農福連携による障害者の就農促進 地域生活支援事業等(493億円)のうち2.7億円(2.0億円)

障害者就労施設への農業の専門家の派遣による農業技術に係る指導・助言や6次産業化支援、農業に取り組む障害者就労施設によるマルシェの開催等の支援を実施する 。

(4)工賃等向上に向けた全国的支援体制の構築【新規】 12百万円

全国の工賃・賃金向上の実事例を収集し周知するとともに、工賃・賃金の一層の向上を目指す就労継続支援事業所を支援するモデル事業を実施する。

5 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策の推進 6.3億円(5.4億円)

6 東日本大震災及び熊本地震からの復旧・復興への支援 22億円(22億円)

図 平成30年度障害保健福祉関係予算案の概要拡大図・テキスト