キンズメン・リハビリテーション財団3大サービス事業

キンズメン・リハビリテーション財団3大サービス事業

インフォメーション・システムとエレクトロニック・エイド

INFORMATION SYSTEMS AND ELECTRONIC AIDS FOR THE PHYSICALLY DISABLED

Simon E.Cox

はじめに

 キンズメン財団は、1952年来、ブリティッシュ・コロンビア州の身体障害の各個人や各団体にサービスを供給し続けている。以下の資料の記述は、財団の3大サービス事業、情報(information)と福祉機器(electronic aids)とシステム(systems)にアクセスすることを強調している。これは、障害者のためのものである。

 35年が過ぎても、障害者各個人に寄与しようというキンズメン財団の考え方は生きている。その方針は、「障害者各個人は、自らの意志をもって、最大限に自立を成し遂げるかもしれない。そして財団の手助けがそれを与えることができるのである。」というものである。この考え方は未だ存在し、身をもって、財団のサービスとプログラムを通して表われている。事実、財団の規約には、こううたわれている。「一般社会で、通用する自立と広く機会均等を成し遂げるために、身体に障害のある人々の手助けをすること。」

 財団は、バンクーバー市に所在し、ブリティッシュ・コロンビア州全域のサービス・センターとなっている。ブリティッシュ・コロンビア州は、カナダの最西部にあり、面積40万km、人口およそ290万である。ここの身障者達にとって、財団は情報と直接のサービスの源である。

 ボランティアの支援は、州内70以上の各青年団体から構成され、「キンズメン・クラブス」と呼ばれている。これらのクラブは、地域サービスに貢献している。

 キンズメン・リハ財団の3大事業サービスには、「障害者生活資源センター」、「リハビリテーション・アシスタンス/機器ローン事業」や「技術エイド事業」がある。

障害者生活資源センター

 1980年、障害者生活資源センター(DLRC)の開設以前には、障害者達は、数ある問題に対処する解決手段を見つけるために、他の身障者と協力してきたが、アクセスできる情報はわずかなものだった。

 情報の集積化、包括的な情報サービスの必要性は明らかなことであった。キンズメン財団は、障害者生活資源センターを確立するように位置づけられたのである。カナダ初の試みであった。

1.福祉機器展示センター

 展示場は、約655mで、400品目以上のエイド品(訳者注①)と福祉機器が混在している。エイド品のタイプの範囲は、単純な機械的アクセス・ディバイス(訳者注②)から、よりハイ・レベルな電子的アシスタンス・ディバイス(訳者注③)まである。

 特殊な台所用家庭用品、食事用具や料理用具の補装具、ベッド・ルームやリビングの自助具、バス・ルーム機器、さまざまな障害のためにデザインされた衣服、アクセスかつ移動のためのエイド品、そして声のでない人(訳者注④)のための幅の広いコミュニケーション装置。これらは、センターの各セクションごとで目にする。

2.図書館と情報源

 図書館には、身体障害者の自立生活に焦点を合わせた資料や資源がある。トピックスとして挙げられるのは、実用的な衣服の工夫に関する提案、旅行アクセス・ガイド、建築基準と家屋改造、レジャー活動その他の情報である。

 ハード・コピー的(訳者注⑤)な情報には、パンフレットや小冊子、機器のカタログ、書籍、定期刊行物や会報誌、フィルム、ビデオ・テープ、視聴覚マルチ・メディア・キットがある。

3.情報の集積化

 キンズメンのリハビリ情報システム(KRIS)は、集積された情報の蓄積と検索システムである。このシステムの開発は、資源センターの図書館員とコンピューター・コンサルタントによる。

 KRISの構成は、Subject Descriptor Classification Scheme and Index(目的物描写による分類設計と検索)から成立ち、およそ2,000検索語を有す。データー・バンクそのものには、およそ5,000の記録を有し、サービス関係、発行物、介助者、団体そして機器に類するものがある。

4.情報サービス

 障害者や家族、ヘルス産業(health professionals)の人々からの質問は、資源センターへ向けられる。情報の公開は、個々に(個人、グループ・ツアーどちらでも)センターの来訪を通じて、あるいは電話や手紙での質問、情報パッケージ、別団体への委託、データーべースの検索、発行物の貸付で行われる。

 情報の提示は、定期的にセット・アップされる。これはセンターの手により、ショッピング通りや身体障害者のためのサービスに焦点を合わせた会議やイベントにおいて、そしてあるいは一般の出版物で行われる。

リハビリテーション・アシスタンス/機器ローン事業

 リハビリテーション・アシスタンス事業は、身体障害者に助成をするために企画された。これは、ブリティッシュ・コロンビア州における医療リハ・サービスの現状を補足しているのである。

 一人ひとりは、所得の限り自分を支えるのが常識的なマナーである。しかし、特殊な装置の費用や通院費を見い出すことは、多大すぎる。財源上、無理なのである。この事業は、そのようなサービスを供給するための資金の助成である。

1.機器ローン

 機器ローン事業は、障害者の個々のニーズに合わせ、スタンダードの機器でも、生活を取り戻せるような品々を貸し与えている。

 機器には、スタンダードあるいは電動の車いす、入浴用具、歩行用補装具、患者抱え上げ器(リフター)やseating systemなどがあり、ローンが利用できる。

2.サービスの委託

 種々のサービスが、政府または別の代理業者により供給されているが、このリハビリテーション・アシスタンス(更正のための助成)が、重複することはない。しかしこれとは別のサービスは、委託される。どれもクライアントのために供給されている。代理業者や事業団がコンタクトを取り、フォロー・アップ(訳者注⑥)が供給されるのである。

技術エイド事業

 1972年のはじめ、キンズメン財団(ブリティッシュ・コロンビア州)は、新しい事業を始めた。これは、「使いたい時に使える」という技術的な装置を研究するためのものである。その装置は、身体的に苛酷な障害者に、自立のいくばくかの目安をもたらすよう企画されている。

 またこれらには、会話の機能を失ってしまった人々も含まれる。身体機能損失者と同様である。

 最初の装置は、POSSUMという環境制御装置で、1973年に造られた。16年後までに、技術エイド事業は、2,000件以上のサービスと機器を供給している。

 最近の動向では、1988年までトータルで、352人のクライアントがリストに載っている。クライアントのうち、190人が環境制御装置を、132人がコミュニケーション装置を使い、30人はこの両方をコンビネーションで使っている。

 この事業で助成する身体障害者は、高位頸髄損傷、脳性麻痺、多発性硬化症、アミトロ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー、リウマチ関節炎、ポリオの後遺症、頭部外傷その他である。

 技術エイド・システムの巡回先は、クライアントの自宅、ナーシング・ホーム、グループ・ホーム、学校、リハビリテーション・ユニット、エクステンディッド・ケア アンド アキュート・ケア・センターである。

 技術エイド・サービスの要望は、ブリティッシュ・コロンビア州のさまざまな地域からでている。スタッフは、差し迫った問題として、これらの地域を巡回する。

 典型的なツアー走行は、バンクーバーからブリティッシュ・コロンビア州の全域にわたる。この出張サービスは、4日越しの日程で、1,600kmを走行し、5件から10件を回る。技術エイド号は、パーツや補給品を満載し、メンテナンスや設置の要求にも答えてくれる。

1.サービスの特徴

 事業は、2つの部門に集中する。環境制御サービスとコミュニケーション・サービスである。

これらのサービスで共に準備するものは、

1)対応と委託

 個々にケースが研究され、会議においては、依頼に対して可能なかぎりのサービスの用意がされる。これは、実績ある利用者状況に基づくものである。もし、依頼者が技術エイド・サービスを要求しなければ、別の代理業者や事業団への委託や事業が供給される。

2)評価

 会議は、技術エイドのスタッフを中心に、依頼者、家族、時には臨床者をも含めてなされる。

3)装置の準備

 慣れ親しむこと、説明、組立と機器の設置。

4)当座のロ一ン

 機器ローンの供給は、評価という目的のためにある。クライアントは、自分に適したシステムを見つけるまで、さまざまなエイド品を用いて、苦労しなければならないかも知れない。

5)フォロー・アップ

 適当な機種の決定、理解すること、装置のグレード・アップや交換ができるように目を向けておくこと。

6)メンテナンスと修理

 クライアントヘの助成は、機器の機能に不良がおこった場合になされる。

2.環境制御サービス

 最初の取り決めで、身体的に苛酷な障害者が、自分の身の回りのスタンダードの機器にアクセスする方法が準備される。

 普通、スタンダード機器といえる家電製品は、インターコム(内部通話装置)とドア・ロック、電話、テレビ、エンターテイメント・システム(来客応待装置)、ベッド・コントロール、照明、テープ・レコーダー、コール エンド アラーム・システム(呼び出し警報装置)である。

 身体に障害を負ったクライアントに、効果的な環境制御サービスを供給するには、ハードウェア機器の規格化が必要になる。これは、多岐にわたる組み立てが楽になるばかりでなく、機器に不具合が生じた場合でも、簡単に返還させられる。

 環境制御装置は1つのユニットにすべての機能やあるいは周辺機器を内蔵したものを利用するよりは、むしろ我々が勧めるのはコンポ・タイプの装置である。我々の手で企画した(KINCONTROL)ユニットはコントローラーとしてだけ作動し、周辺機器群へのアクセスはユニットの後面にあるアウトプットを通してなされる。このように、すべての周辺機器(例えば、電話操作)は、メイン・コントローラーやKINCONTROLから、簡単につなげたり、はずしたりできる。

 この傾向は、設置がより簡単で、グレード・アップのためだけでなく、もし破損が起こっても、迅速な交換がしやすいからである。また周辺ユニットやコントロール機能は、KINCONTROLの使用でなくとも、個々に操作できる。但し、その場合自分用のコントロール・スイッチが使われる。

3 コミュニケーション・サービス

 声の出ない身体障害者には、コミュニケーションを拡大するシステムを用意するように取り決められている。これらのサービスには、以下のものがある。

1)ポータブルのコミュニケーション・エイド(コミュニケーター)と持ち運びはできないコミュニケーション装置を準備すること。

2)供給すること。さらに、コミュニケーターにアクセスするためにハードウェアとコントロール・スイッチを据え付けること。

3)委託。相談受付と公の教育には、研究団体とワークショップがある。

3―1 ポータブル・コミュニケーション・エイド

 ポータブル・コミュニケーション・エイド(ポータブルという言葉は、持ち運びができ、持ち運びに関しては、メカ的な据え付けは必要ないということである。)

 これは、原則的に、半永久的に、クライアントにローンされる。これは、コミュニティーや病院のセラピストの評価に基づく。

 大半のコミュニケーターは、ダイレクト・アクセス・ディバイス(訳者注⑦)に分類され、ボキャブラリーの低いものもあれば、テキスト・ボキャブラリーに限界のないディバイスもある。

 コミニュケーション・エイドには、メモリー・ロケーション(記憶領域)が設けられているものもあり、一般的に使う慣用句をいれておく。出力形式にはビジュアル・ディスプレイ(訳者注⑧)、そして/またプリンター・ディスプレーあるいは/またシンセサイザーやデジタルによる合成音がある。

 個々のニーズの幅は広いが、ポータブル・コミュニケーション・エイドには、いろいろとあるので、すぐに利用ができ、財団の在庫の中から選ばれる。セラピストは、クライアントのために、初期からずっとフォロー・アップをする。これは、評価をもとにしている。

3―2 ポータブルでないコミュニケーション・システム

 ダイレクト・アクセス(キーボード操作など)ではないコミュニケーション・エイドは、身体障害者にとって簡単には持ち運べない。これをノンポータブル・コミュニケーション・システムと言う。

 技術エイド事業の開始当初、装置は電動タイプライターに接続したスキャニング・システム(訳者注⑨)に頼ったものであった。マイクロ・プロセッサー技術の出現は、徹底的にこれらのシステムを変え、さまざまなアクセスの仕方でシステムを起動し、テキスト・プロセッシング(訳者注⑩)ができる。

 技術エイド事業は、次に述べるようなさまざまなタイプのシステムを活用して運用されている。

○コミュニケーション・ソフトウェアを利用しているシステム、パソコンと入力可能スイッチ。

○キーボード・エミュレータを利用しているシステム(例えば、ファームウェア・カードを付加したもの、テトラ・スキャン)、パソコンとさまざまなソフトウェア

○完全にコミュニケーションエイドとして専念したハードウェアとソフトウェアを利用しているシステム。(例えば、スキャン・ライター、ライト・トーカー)

資金繰りと支援

 すべての事業には、資金が調達される。これは“マザース・マーチ”と呼ばれる恒例の資金起こしのキャンペーンによるもので、35,000人以上のボランティアが協力している。

 ちなみに財団自体は、完全に自己資金でまかなわれている。また重要なのは、事業サービスは、プロの集団、委託業者、ボランティアからの助成にかなり依存しているということである。

 セラピスト、教師、臨床者と健康専門家らは、評価や依頼者の訓練にかなりの寄与をしている。

 キンズメン・クラブのメンバー、ブリティッシュ・コロンビア・テレホン・パイオニアとボランティアのTechnologistは、機器を設置したり、修理をするのを助けている。

 この助成をキッカケに、事業は成功へとつながっていく。州のすみずみまで…。


参考文献 略

訳者注釈

① エイド:総称的な言葉で、介助用具、自助具、補装具、装置、機器、助成、基金、いわゆる福祉的な物や制度を言う。ここでは介助用具、自助具、補装具を指す。

② アクセス・ディバイス:マウス・スティックやスプーン・ホルダー、ペン・ホルダー、座薬挿入器などの自助具、補装具を言う。

③ アシスタンス・ディバイス:ECSやパソコンのようなハイテクを駆使した装置、狭義の福祉機器のこと。

④ スピーチ・インペアド:喉頭癌などにより声帯を摘出すると声が出せなくなる。気管切開も同様である。

⑤ ハード・コピー:型にはまった量産品のこと。印刷物や磁気テープ類を指す。

⑥ フォロー・アップ:在宅ケア・システムの基本で、給付後も続けて何かとフォローしてくれるシステム。後に、よりよい機器、装置ができたら交換したりする。修理等もやってくれる。日本ではまだ十分に完備されていない。

⑦ ダイレクト・アクセス・ディバィス:人の指やマウススティックなどで直接、操作ができる入力装置のこと。パソコンなどのキーボード、電話のプッシュ・ボタンがそうである。

⑧ ビジュアル・ディスプレイ:ポーブタルなコミュニケーション・エイドでは液晶ディスプレイなどが利用される。

⑨ スキャニング・システム:1ケのスイッチだけで操作を行うためのシステムである。例えば行と列の組み合せで文字盤の文字を選択することができる。

⑩ テキスト・プロセッシング:ワード・プロセッシングとほとんど同意語。テキストとは、文章のこと。

*Kinsmen Rehabilitation Foundation of British Columbia, Canada


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1989年3月(第60号)10頁~14頁

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