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国境を越える障害者援助デンマーク/ネパールの障害開発援助

フィン・コンラッドセン(デンマーク聴覚障害者協会会長)

登録する文献の種類:
その他

情報の分野:
社会福祉

主題:
国境を越える障害者援助デンマーク/ネパールの障害開発援助

著者名・研究者名:
フィン・コンラッドセン(デンマーク聴覚障害者協会会長)

掲載雑誌名:
JANNET NEWS LETTER

発行者・出版社:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数および頁数:
第11号  5頁

発行年月:
1996年10月

キーワード:
1.国際協力
2.聴覚障害
3.デンマーク/ネパール間協力

要約:
 デンマーク聴覚障害者協会の会員数は、人口500万のうち13,500人である。デンマークには、幸いにも開発途上国に対する援助に積極的な政治家が大勢いる。最初に、デンマークの開発援助に対する姿勢について簡単に説明する。

文献に関する問い合わせ先:
〒162 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone: 03-5273-0601
Fax: 03-5273-1523

国境を越える障害者援助デンマーク/ネパールの障害開発援助

フィン・コンラッドセン(デンマーク聴覚障害者協会会長)

デンマークの開発援助に対する姿勢
デンマーク聴覚障害者協会の会員数は、人口500万のうち13,500人である。デンマークには、幸いにも開発途上国に対する援助に積極的な政治家が大勢いる。最初に、デンマークの開発援助に対する姿勢について簡単に説明する。
1980年代の終わりに、障害者のための北欧の上部団体がフィンランドで会合をもち、参加国のこの分野の勢力に火をつけることとなった。その結果、1990年の北欧各国の援助計画を所管する大臣の会合が開かれた。大臣達は、北欧の援助計画の策定に同意し、今日では、ノルウェー、スウェーデンおよびデンマークは、開発途上国に対する最大の援助国として、北欧の国民総生産額の1%を支出するまでになっている。
実際は、金銭的援助額の半分は多角的援助で、残り半分が2国間援助である。デンマーク外務省の部局の一つであるDANIDAがこの計画を所管し、世界の最貧国20カ国を、援助対象国として選んだ。これら対象国の政府は、民主主義であるか、あるいは民主化の途上にある国に限られている。
デンマーク政府は、非政府団体(NGO)による援助計画の増加を望んでいる。NGOは人道的援助団体でも、障害者団体であってもよい。財政的には、デンマーク外務省が計画のコストの全額と、他に管理情報の経費として7%を支出する。障害者団体は、最近まではこの分野であまり積極的ではなかった。しかし、約2年半前に、デンマーク障害者団体会議は、会員26団体のうち多数を援助計画およびその戦略に巻き込み、今日では会員のほぼ半数が程度の差こそあれ、特にアフリカ、中南米およびアルバニアでの援助事業に関与しており、南アジアの国々でも計画進行中である。
DANIDAの関わる全ての事業に一貫している主張は、できるだけデンマークの産業を包含することである。デンマークの補聴器の生産が世界のシェアー率の20~25%を占めることを考えると、この産業を援助事業にとりこむことは当然の成り行きであった。

ネパール事業
我々はまず、2名の職員を、ネパールに3週間おくることから始め、ネパールの5つのNGOと協力して、事業計画と予算を策定した。補聴器事業から始めて、その全国組織の設立、手話の講習および補聴器交付などの幅広い事業へと発展した。この結果、特にネパールの聴覚障害者を対象とした、4年間、1,400万デンマーク・クローネ(約2億7千万円)にもおよぶ援助事業に結実したのである。
この事業は、デンマークとネパールのNGOとの密接な協力が重要である。この密接な協力こそ事業の成功に欠くことができず、さらにはこの事業を大変興味深いものにしている。なぜなら、この事業は、ネパールの諸条件の下で行い、ネパール文化を考慮しながら進めなければならない。一方でデンマーク側では、補聴器の半分は女子用に利用すること、また事業の成果を首都や都市部だけでなく全地域に及ばすことについてネパール側に理解を求めているからである。
NGO間の直接の接触は、開発途上国で広がっている官僚主義の弊害をさける意味において、大きな成果をもたらした。我々は、基金を直接ネパールのNGOに払い込む。ネパール側では、我々またはデンマーク人のプロジェクトマネージャーに直接連絡できる仕組みになっている。人件費の問題から、このプロジェクトマネージャーがデンマークからの唯一の長期駐在員である。1名のデンマーク人の給料と滞在費で30名のネパール人職員が雇えるため、職員雇用の問題は、相互交流制で対応している。つまり、ネパールにデンマーク人の講師をおくり、デンマークにはネパール人の医師や技術者がおくられる仕組みである。また、若い会員に重点をおいた交流制度も始めている。
我々はもちろん、一夜にしてネパールや世界を変革できるとは思っていないし、貧しさ故に生きるため物乞いをしたり、売春婦になったりしがちな多くの障害者に、近い将来快適な生活をもたらすことができるとも思っていない。
しかし、大洋も一滴一滴からなっており、我々の努力がいかに小さいものでも(とはいえネパール援助計画は、その全部を障害者向けに集中しているものとしては、世界最大級とはいわれているが)根に肥料を与えることによって樹木が繁茂し、かくして政治家や政策に携わる人々に今後新たな姿勢で障害者援助に対処してもらえるようになることを信じている。