「ご恩返しの気持ちで」はちょっと古いですか？

寺山久美子（社団法人 日本作業療法士協会会長)

登録する文献の種類：
その他

情報の分野：
医療

主題：
「ご恩返しの気持ちで」はちょっと古いですか？

著者名・研究者名：
寺山　久美子　（社団法人 日本作業療法士協会会長)

掲載雑誌名：
JANNET NEWS LETTER

発行者・出版社：
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数および頁数：
第１２巻　　１頁

発行年月：
１９９７年１月

キーワード：
１．作業療法
２．国際協力
３．人材養成

要約：
　日本作業療法士協会の創設は昭和42年９月25日で、今年30周年の節目の年を迎えた。日本に初の理学療法士・作業療法士の養成校が誕生したのが、昭和38年４月であり、それから３年後に「理学療法士・作業療法士」に則り、22名の有資格作業療法士が誕生した。「特別措置による受験資格者制度」により、それまでに臨床経験のあった者も加えて行われた国家試験は極めて厳しく、合格率は13％という弁護士並みの難しさであった。それは、「新しい医療専門職であるＰＴ・ＯＴはレベルの高いものにしたい」という、外国人教師達の燃えるような熱意を反映したものであった。

文献に関する問い合わせ先：
〒162　東京都新宿区戸山１－２２－１
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
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「ご恩返しの気持ちで」はちょっと古いですか？

寺山久美子（社団法人 日本作業療法士協会会長)

　日本作業療法士協会の創設は昭和42年９月25日で、今年30周年の節目の年を迎えた。日本に初の理学療法士・作業療法士の養成校が誕生したのが、昭和38年４月であり、それから３年後に「理学療法士・作業療法士」に則り、22名の有資格作業療法士が誕生した。「特別措置による受験資格者制度」により、それまでに臨床経験のあった者も加えて行われた国家試験は極めて厳しく、合格率は13％という弁護士並みの難しさであった。それは、「新しい医療専門職であるＰＴ・ＯＴはレベルの高いものにしたい」という、外国人教師達の燃えるような熱意を反映したものであった。当時、日本人の作業療法士はアメリカで資格を取得した２名のみであり、ＷＨＯを通して世界作業療法士連盟（ＷＦＯＴ）の指導を仰ぐことになった。彼ら欧米人の作業療法士達は、皆実力・指導力に優れ、さらに教育に極めて熱心であった。英語で行われた授業に、当時の学生たちは必死についていき、懸命に欧米の作業療法を学びとった。「リハビリテーション版蘭学事始め」ともいうべき状況であった。こうして教えられた学生たちが、30年たった今日、リハビリテーションの必要性に迫られて急増し、10校の大学と１校の 大学院を含む72校にまでなった作業療法養成校の指導者に成長を遂げてきた。

　そんな折、国立身体障害者リハビリテーションセンターを通して中国リハビリテーション研究センターの作業療法士養成への援助依頼がまず申しこまれた。まだまだ、自分の国のことで手一杯の事情であったにもかかわらず、できるかぎりの援助を惜しまなかったのは、「30年前、日本のために粉骨砕身努力された外国人教師のあとに続け」という気持ちが働いたからだと思う。そして、今年はインドネシア作業療法養成校からの依頼に初めて応えることができた。２年前、インドネシアのソロ市に初の作業療法養成校が誕生した。４人の理学療法教員がカナダのアルバータ大学に留学して作業療法士の資格を取り開校したが、教員としての臨床経験がない。そこで国際医療技術交流財団に援助をお願いして、作業療法士協会として１名の留学生を受け入れることが実現化した。この企画は来年度も継続し、できれば今度は、現地での指導にも出かけていきたいし、他の途上国の養成校への指導援助も実現したいと考えている。　「30年前、欧米人からいただいたご恩を、まずはこんな形で返したい」との思いが、私たち作業療法のパイオニア達にはことのほか強いと思う。作業療法を同じ水準で彼らと語れる 日が一日も早からんことを祈念する。