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中国と台湾のポーテージ活動を中心に

山口 薫(日本ポーテージ協会会長)

登録する文献の種類:
その他

情報の分野:
教育学、保健学

主題:
中国と台湾のポーテージ活動を中心に

著者名・研究者名:
山口 薫(日本ポーテージ協会会長)

掲載雑誌名:
JANNET NEWS LETTER

発行者・出版社:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数および頁数:
第12巻  2頁-3頁

発行年月:
1997年1月

キーワード:
1.国際協力
2.精神発達遅滞児
3.中国

要約:
 0歳からの発達遅滞乳幼児の早期教育プログラムとして開発されたポーテージプログラムは、現在までに34カ国語に翻訳され、世界90カ国で使用されている。
日本ポーテージ協会は、これまで、フィリピン、パキスタン、バングラデシュ、中国、台湾などアジアの各国でポーテージワークショップを開催して、発達遅滞乳幼児の早期教育の発展を援助してきた。

文献に関する問い合わせ先:
〒162 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone: 03-5273-0601
Fax: 03-5273-1523

中国と台湾のポーテージ活動を中心に

山口 薫(日本ポーテージ協会会長)

 0歳からの発達遅滞乳幼児の早期教育プログラムとして開発されたポーテージプログラムは、現在までに34カ国語に翻訳され、世界90カ国で使用されている。
チェックリスト、カリキュラムカード、手引書が収納されている小箱さえあれば、学校や福祉施設のない発展途上国の農村でも家庭を訪問して親の指導ができるので、アメリカ、イギリス、日本、北欧などの先進国のみならず、アジア、アフリカ、中南米などの発展途上国でも多く使われており、日本ポーテージ協会は、これまで、フィリピン、パキスタン、バングラデシュ、中国、台湾などアジアの各国でポーテージワークショップを開催して、発達遅滞乳幼児の早期教育の発展を援助してきた。
幸い、今年度三菱財団からこのプロジェクトに対し720万円の研究助成金が与えられ、去る11月に実施したバングラデシュ・ダッカにおける中級ワークショップに続いて、今後1年間にフィリピン・ダバオ、中国・大連、台湾・台北、パキスタン・カラチでワークショップを開催する予定である。
この一連のワーショップでは、既に初級ワークショップを開催したところは中級で技術向上を図る他、もう一つの特色として、単に大きな都市だけでなく、農村地帯へもCBRの一つの機能として普及させることを目的としている点を挙げることができる。
既に開催したバングラデシュでは50名の参加者の3分の2はダッカ以外の全国各地から集まった人たちであったし、2月中旬に予定しているフィリピンのワークショップも、ミンダナオ島各地から参加してもらうよう準備を進めている。
これらの一連の活動の中から、中国と台湾に焦点をあてて報告してみたい。
中国ではこれまで南京、北京、大連でワークショップを開催してきた。中国には 小平氏の息子 僕方氏を会長とする強力な中国障害者連合会という組織があり、今年の5月大連で盛大な全国障害者運動会を開催したりしている。また、北京には主として日本の援助によって立派な中国リハビリテーション研究センターがあるが、ポーテージプログラムのような、地域で家庭を中心に行われる指導はこれらとほとんど関係がない。立派なリハビリテーションセンターもこれまでのところ患者はもっぱら政府高官や共産党の幹部によって占められ、遠隔地の庶民とは無縁の存在でしかない。
4月に予定しているポーテージワークショップでは、遼寧省各地からできるだけ参加者を集めることによって、CBRとして早期教育を発展させ、それによって国レベルと地域の療育の間にかけ橋を作りたいと願っている。
台湾は中国に較べると小さな島に過ぎないが、交通網も整備され、最近の経済的発展に伴って、障害者の福祉教育もめざましい勢いで発展している。先頃訪問した台湾師範大学の特殊教育研究所は早期教育部門を含めて施設、設備、スタッフ共充実しており、既にある面では日本を追い越しつつあるという印象を受けた。
5月に予定しているポーテージワークショップではCBRという観点においても十分な成果が期待できそうである。
なお、これらの活動に関連して、中国、台湾のみならず、アジアの多数の中国系の人たちのために、私と明治大学金子健教授共著「特殊教育の展望-21世紀にむけて-」が遼寧師範大学のスタッフによって翻訳され、中国語版として出版されたことも付記しておきたい。
中国と台湾は政治的には微妙な関係を抱えている。アジアには、私が名誉理事をしているアジア精神遅滞者福祉連盟があるが、台湾が正会員であるために、中国は加盟を渋っている。一国一代表という規約があるため、中国を正会員とすれば台湾を外さなくてはならない。1997年7月の香港・中国返還後同様な問題が生じることになる。
私たちは、ポーテージ活動のような地域に根ざした具体的活動を広げることによって、このような異なる政治、体制の壁を打破できるものと信じている。