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“障害”が“障害”か?
-インドネシアでのCBR参加型国際研修から学んで-

池住義憲(アジア保健研修所)

登録する文献の種類:
その他

情報の分野:
その他

主題:
“障害”が“障害”か?
-インドネシアでのCBR参加型国際研修から学んで-

著者名・研究者名:
池住義憲(アジア保健研修所)

掲載雑誌名:
JANNET NEWS LETTER

発行者・出版社:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数および頁数:
第13巻  3頁

発行年月:
1997年4月

キーワード:
1.国際協力
2.参加型研修
3.CBR

要約:
 「障害(Disability)って何ですか?」。「身体の障害(Physical Impairment)が“障害(Disability)”なんですか?」。
この問いをめぐって熱心な議論が続いた。昨年(1996年)10月21日~11月9日、インドネシアのジャワ島中部ソロ市で開催された、地域住民によるリハビリテーション(CBR)に関する参加型国際研修コース(以下CBR参加型研修)で。

文献に関する問い合わせ先:
〒162 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone: 03-5273-0601
Fax: 03-5273-1523

“障害”が“障害”か?
-インドネシアでのCBR参加型国際研修から学んで-

池住義憲(アジア保健研修所)

 「障害(Disability)って何ですか?」。「身体の障害(Physical Impairment)が“障害(Disability)”なんですか?」。

この問いをめぐって熱心な議論が続いた。昨年(1996年)10月21日~11月9日、インドネシアのジャワ島中部ソロ市で開催された、地域住民によるリハビリテーション(CBR)に関する参加型国際研修コース(以下CBR参加型研修)で。
CBR参加型研修は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の協力により、インドネシアの非政府組織(NGO)であるCBR・開発研修センター(CBR-DTC)が主催したものである。参加者は、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ネパール、インドネシア、日本の6ヶ国から計13名。CBRを地域社会発展(コミュニティ・ディベロップメント)の大切なプロセスおよび働きとしてとらえ、CBRワーカーとして必要な知識と技術と指導性を高めることが研修の目的であった。私はこのCBR参加型研修にファシリテーターとしてかかわったが、そこで感じ、学んだ大切なことを報告をかねて共有したい。
久野研二さん(理学療法士、ファシリテーターの一人)が一枚の絵(A図)をみせて参加者に「この人は、Disability(障害)がありますか?」と尋ねる。すると、答えは二つに分かれる。確かに車いすの人は立って歩き走ることはできないが、しかし、車いすで動き移動することはできる。動き方、移動の仕方が違うだけだ。それは、音楽やスポーツなどと同様にその人それぞれが持っている個性であり、パワーであり、能力(Ability)である。依然として異論を唱える研修生はいたが、話し合いの末、なんとかこれに落ち着いた。
次に久野さんはもう一枚の絵(図B)をみせる。そして同じ質問をする。ハッと驚き、何かに気がついたような表情を示す研修員が数人。今度は異口同音に、「そう、この人は障害(Disability)がある。いや障害(Barrier)に直面している!」と…。「そうか、身体の障害(Physical Impairment)そのものが、“障害”(Disabilitiy)ではなく、社会が(Disabilitiy)をつくりだしているんだ!」と何人かの研修員が大きくうなづいた。
このことは、とても大切なことだ。「障害(Disability)」をどう理解するかによってリハビリテーションの内容と対象、そして範囲が著しく変わってくる。世界保健機関(WHO)では、簡単に言うとPhysical Impairment→Disability→Handicapと図式化し、定型化(パターン化)しているように私には思える。その結果、リハビリテーションという時、その人の身体の障害(Impairment)の内容・度合いにばかり注目が集まり、家づくり、道づくり、学校づくり、街づくり、人と人の関係づくり等々は視野に入らない。
CBRは、地域に根ざした、地域の人たちによる適正なリハビリテーションという技術的なことだけでは全くない。それだけでなくCBRは、第一に、Impairmentをもつ人との「対等」な関係づくり(相互に尊重・受認し合うことをベースにして)、第二に、Impairmentをもつ人をDisabilityに直面させている私たちの地域社会の中の“障害”(Barrier)を取り除くこと、である。言い換えれば、CBRは地域社会づくりそのものであると言うことができる。今回のCBR参加型研修では、こうした理解と視点を皆で創り上げた。その上で、では何ができるのか、「私」はこれからどういう役割を担うべきなのか、その役割を担うためには私はどう成長・変化・発展していく必要があるのか、等々をみんなで助け合いながら探り合ったのである。私にとっても大きな学びとなった。

注1)日本語ではImpairmentもDisabilityもBarrierまたはObstacleもみな「障害」と表現するので、文中では、読みにくいとは思うがあえて英語を意図して付記した。

 2)このCBR参加型研修は今年もインドネシア、ソロ市内で開催予定。期間は1997年10月20日~11月8日。

詳細についてのお問い合わせは、

池住義憲(〒470-01 愛知県日進市米野木町南山987
アジア保健研修所内 TEL:05617-3-1950 FAX:05617-3-3423)