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障害者による、障害者のためのSARPV融資制度の効果測定(抄訳)

モーシン・アラム著
星野 侃司訳

登録する文献の種類:
その他

情報の分野:
社会福祉、雇用、就労

主題:
障害者による、障害者のためのSARPV融資制度の効果測定(抄訳)

著者名・研究者名:
モーシン・アラム著、星野 侃司訳

掲載雑誌名:
JANNET NEWS LETTER

発行者・出版社:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数および頁数:
第14巻

発行年月:
1997年7月

キーワード:
1.融資
2.所得創出
3.バングラデシュ

要約:
 障害者への社会的援助・更生組織(SARPV)は、1989年に平等の権利と機会および社会への完全参加のための障害者の声をあげるために、一人のポリオによる身体障害をもつシャヒダル氏によって設立された。同氏はSARPVの専務理事として自分の資産を投じ、組織全体を把握、運営している。

文献に関する問い合わせ先:
〒162 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone: 03-5273-0601
Fax: 03-5273-1523

障害者による、障害者のためのSARPV融資制度の効果測定(抄訳)

モーシン・アラム著
星野 侃司訳

I.背景
障害者への社会的援助・更生組織(SARPV)は、1989年に平等の権利と機会および社会への完全参加のための障害者の声をあげるために、一人のポリオによる身体障害をもつシャヒダル氏によって設立された。同氏はSARPVの専務理事として自分の資産を投じ、組織全体を把握、運営している。
職業訓練の実施は、障害者の能力アップのためのSARPVの不可欠な使命である。SARPVは研修目的の達成を第一とし、資金融資の実施はその後とする。このやり方はチャコリア(バングラデシュのコックス・バサール地方の町)の障害者間に普及し、立派な成果をあげている。融資は個々人に力を与え、社会における信用とこれに対する責任を生み出す。現在の一般融資制度は貧しい人々を益々融資づけにする以外何ものでもない。障害者には高嶺の花だった融資も今ではより身近なものになっている。

II.序章
SAPRVは障害者がなぜ社会的活動の主流から遠ざけられているかに関心を持ち、このような状況を障害者自身がどのように自信を持って克服するかについて検討した。1992年のチッタゴンの破壊的なサイクロンの後で、SARPVは災害を受けた障害者の組織化を開始した。
専務理事は、身体障害を持つ人々の隠された能力を見いだして、障害者に対する社会の消極的な態度を改善させること目的とした委員会を設立した。
チャコリアにおける活動は以下の段階を踏んで行われた。

(1)障害者の組織化
(2)障害者の自立と自信の確保
(3)自営のための小規模融資援助付き職業訓練の付与。

 それまで障害者援助の組織はなかったが、シャヒダル氏は身体障害者に対しては多くの経験を持っていたので、障害者を類別し、組織、訓練して、消極的な社会の認識と限られた経済的な機会から彼らを救うには不可欠な資金融資を目的とする組織を設立した。チャコリアでは、身体障害者の各グループは社会的な援助を受ける権利を獲得し、毎週会合を持ち、貯金をし、所得を得るための職業訓練に参加し、会員となってSARPVからの融資で生活のやりくりができるようになった。

III.融資活動の成果
チャコリアの「小規模融資援助付き職業訓練」の効果の判定には「草の根的」な農業融資の専門家が当たり、1996年中にこの仕事を完了した。著者自身、チャコリアの障害者が健常者と共に働き、季節的な農産物を作り、家畜を養い、ファースト・フード加工に携わり、食料雑貨店を営み、ローソク作りを手がけていることを確認し、彼らに自信を持たせ、経済的活動に参加させ、自立にしむけていくことが、障害者やその家庭および社会全体の消極的な態度をとく鍵だと悟った。これは社会の障害者に対する理解を深めることにより可能で、SARPVのそれ以後の使命となっている。

IV.融資の基本方針
訓練先の現場の指針が決定された。訓練とは、村の池とか、放置されている政府の土地とかそのまま使用できる資源を見いだすことを始めとして、家庭菜園やちょっとした農園づくりなど新しい工夫や、ヨード添加塩や鶏肉加工など手近の農村家内工業を実施する技術のことで、この基金はオランダ・カリタスやESCAPから仰いでいる。

V.融資の現状
会員に対する融資には担保は不要だが、この返済には会員全体の連帯保証が必要である。返済期限は1年で、一週間毎の分割返済であり、季節栽培などの時期以外には、貸与件数は1件限りとする。貸与手数料は、10%で、強制貯蓄は、会への寄付を含め5%である。

VI.貸与資金の利用方法
小商い、畜産、養鶏、食品加工などであるが、野菜や薪、土器などの商取引は家族内の健常者の助けをかりる。スナック・ショップ、レストラン、路上の食料雑貨店の経理・管理は障害者の分野である。SARPVは少額融資だけでは限界があるので、「自前の小規模事業の設立(BOSEP)」の計画に取りかかっている。それは、障害者か組織の援助を受けて自己の事業(製造業も)を設立できるようにすることを意図としたものである。SARPVはチャコリアで障害者自身によるローソク製造の仕事を始めた。労働集約的であり、小資本で障害者の経営に適するからである。このほかに、繊維や衣料で月に500タカを稼ぐ経営者も珍しくなく、子供の教育や、家族と共に資産形成の余裕も生まれつつある。

VII.返還率
16万6,000タカの全貸付に対し99%で、今のところ申し分ないが(個人への貸付限度額6,000タカに対し、期間内平均貸付額2,087タカ)、今後貸付規模が拡大すれば、会員による連帯保証が困難になる可能性もある。

VIII.結論
設立当初の目標を達成しつつあり、一歩進んだB0SEP活動により、障害者の農業および農業以外の雇用の創出、自立のための経営管理面の訓練まで手がけている。良好な融資結果からもこの少額融資制度を発展拡大すべき十分な理由である。 2