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アジアの草の根の努力に連なって

アジア保険研究所(AHI) 山崎眞由美

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項目 内容
掲載雑誌名: JANNET NEWS LETTER
発行者・出版社: 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Japanese Society for Rehabilitation of Disabled Persons
巻数および頁数: 第4巻3号 1頁
Vol.4 No.3 P.1
発行年月: 1997年10月
October 1997
文献に関する問い合わせ先: 〒162 東京都新宿区戸山1-22-1
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
Phone: 03-5273-0601
Fax: 03-5273-1523

アジアの草の根の努力に連なって

アジア保険研究所(AHI) 山崎眞由美

 AHIが発足した1980年頃、見近な弱者を放っておいてアジアの弱者もないだろうという反応が返ってきたものである。JANNETなどの活動を通して世界の広域レベルで障害者がネットワークし、お互いを強め合おうとするようになった今、その言葉の歴史的限界とこれまでの障害分野に関わる人達の努力を思う。当時、意識の上でアジアはまだ遠い存在で、アジアに眼を向けようという主張に先駆性があった。アジアの貧困や苦しみと無関係ではない私たち日本人がアジアの草の根の努力に連なる意義に、賛同する方々に支えられ活動をすすめてきた。アジアの草の根レベルで働く地域保健・地域開発ワーカーに研修の機会を備えて強め、彼らを通して草の根のひとびとの力の形成と自立に向けた動きを側面支援していこうというもの。まだ先人の経験も少なく開発理論や国際協力論など彼方のことで、持っていたのはアジアへの思いと願いであった。確信があったのは、草の根の力と可能性を信じる思いである。何も持っていなかったが故に人から人への運動となって支えられ、何も知らないという自覚からアジアに学ぶ姿勢が得られ、これがやがてAHIの参加型研修を確立していくことにつながっていった。

さてAHI研修に参加した保健・開発ワーカーを通して見えてきた草の根の人々とは、貧農、農村女性、先住民や少数民族、不可触民、工場労働者や日雇い労働者、スラムの住民、漁民など、皆一様に貧しく生産手段を持たず、教育や保健のサービスを受ける機会や自由がなく社会から周縁化された人たちだ。障害者を対象とした活動をするワーカーがみえてくるようになるのは、1990年代にはいってからのことで、これはアジアの草の根での障害分野の現実を反映しているともいえるが、AHIの視点に障害分野が含まれていたとは言え、積極的にフォーカスされていなかったことへの自己反省となっている。

AHIが推進するCBAHD(草の根の住民による草の根の健康づくり・むらづくりを通して地域社会を変える草の根の力を形成する考え方とアプローチ)は、基本的にコミュニティー・ベースド・リハビリテーション(CBR)と同じく地域に根差した当事者主体の包括的な取り組みである。個の問題を社会的な問題としてとらえる時、個へのアプローチと社会的な取り組みが可能となる組織化のアプローチの両面が必要だが、CBRが個の生活自立をより強調するのに対してCBAHDは組織化を強調するといえようか。住民概念で両者をくくる統合的取り組みが必要だと思っている。