音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第20回総合リハビリテーション研究大会

国際分科会「各国間のリハビリテーションにおける国際協力」
にシンポジストとして参加して

秋田大学医療技術短期大学部 工藤俊輔

11月10日から12日まで東京国際フォーラムで開催された第20回総合リハビリテーション研究大会国際分科会にシンポジストとして参加した。シンポジウムのテーマは「各国間のリハビリテーションにおける国際協力」で、討論は筆者と国立身体障害者リハビリテーションセンターの田沢英二氏の二人の報告を中心に世界保健機関(WHO)セミナー参加者、国際協力事業団(JICA)研修参加者、国際分科会Ⅰの発言者によって行われた。まず、田沢氏が関係しているNGO希みの会・HOPEのカンボジアでの活動を中心に地雷による下肢切断者の状況や現地での義足の生産支援活動の報告があった。その中で田沢氏は義肢装具の定期的な点検や常に起こる体の形状の変化に対応する調整等長期的なケアが必要であるのに対し、発展途上国や戦時国では義肢装具の供給やケアまで手が回らないのが現状であると述べ、日本や諸外国のNGOによる支援の様子を100枚近いスライドで紹介した。そのスライドには、走ることや跳ねることも可能な最新式の義足の紹介もあり、参加者の関心をよんだ。フロアーからの質問は、やはり自分の国でこの様な義足の技術をどのようにして取り入れていったら良いかといったことに集中した。そして、今後この様な情報交換のリンクをお互いに積極的に広げていくことが確認された。

筆者は、1972年より、日本理学療法士協会が国際医療技術交流財団の協力を得て行ったCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)の5カ年のプロジェクトの報告を中心にインドネシア共和国ソロ市CBR開発訓練センター(以下CBRDTCと略)での取り組みを紹介した。CBRDTCではその取り組みとして地域社会の発展という視点から、ここでのCBRは「障害」を医療の問題ではなく、社会の問題とする考え方に立っているが、その理念がどの程度現地の活動に反映されているか明らかではない。そこで、現地で行った理学療法士を対象としたCBRの意識調査に触れ、インドネシアの専門家である理学療法士にはCBRについての捉え方に地域差が見られ、今後、検討しなければならない課題であることを示した。しかし、CBRの中心となるべき障害者がどの様に参加しているかということが問題だという指摘があり、活発な意見交換がなされた。フィリピンのビーナス女史は障害者がCBRの活動の中心になれば問題の50%は解決するとし、インドネシアのエンセプ氏はインドネシアでのCBRの取り組みはまだ始まったばかりであり、障害者が十分参加しきれていないCBRについての率直な批判が示された。マレーシアの視覚障害の参加者からは視覚障害者のCBRの取り組みはどうなっているかという質問もだされ、筆者が不明だったためESCAPの高嶺豊氏からのCBRに関係しているアジアの聴覚障害者団体の紹介があった。

同じくソロ市CBRDTCに今年派遣され、10月に帰国したばかりの大澤諭樹彦氏からマレーシアの聴覚障害者の「聴覚障害者のCBRはどうなっているのか」という質問にハッとしたことや、やはり、CBRは全ての障害者が関わっている問題なのにまだ狭い範囲でしかCBRを見てなかったのではという反省がだされ、筆者も同感の思いを強くした。

最後に活発な分科会での論議を踏まえ、韓国脳性まひ協会の金教授から、今後のアジアの障害者運動の連帯が強調されていた。司会の国際民衆保健協議会の池住義憲氏は流暢な英語でしばしばジョークも交えながら全体の流れを手際よく指揮してくれた。司会者が意図していた全員参加型の実りある分科会になったと思う。今後の方向としては、継続して、この様な会合や討議を行いながら連携の輪を大きくすることが大切だということが示された。アジアの障害者運動の連帯と継続!これがキーワードであった。


出典
”JANNET NEWS LETTER” Vol.4 No.4 (通巻16号)

発行者
障害分野NGO連絡会(JANNET)

発行年月
1998年1月

文献に関する問合せ先
(財)日本障害者リハビリテーション協会
162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel 03-5273-0601  Fax 03-5273-1523